中国面面観

「中国面面観」は中国の様子をお届けするコンテンツです。弊社発行のメールマガジンで連載している内容を、お客様のご要望によりホームページでもお届けします。

酉年を迎え、16年の問題点を振り返る

2017.03.13

 2017年1月28日に春節(旧正月)を迎えた。テンセント(00700.HK)が運営する中国最大の人気サイト「騰訊網」は、毎年この日にトップページで「時代の言葉」を特集する。「騰訊網」では「今日の話題」というコーナーで、重要トピックを紹介しながら毎日評論しているが、「時代の言葉」ではそれらの中でも旧暦の前年に話題になったテーマがまとめられている。「過去の問題が今年は改善されますように」という希望を込めたものだ。われわれの中国理解にも役に立つと思うので、この場を借りて紹介してみよう。

 やはりというべきか、インターネット絡みのものが多く見受けられた。例えば、このコラムでも以前紹介した偽の医療サービス検索広告事件。4月に発生したこの事件で検索大手の百度(バイドゥ)は「でたらめな広告を掲載した」として当局から処分を受け、ライバルのアリババやテンセントに大きく水をあけられる原因となった。

 また、配車サイトの「滴適出行」と「ウーバーチャイナ」の合併発表も取り上げられた。評価は前向きなものであったが、独占はサービス低下につながると注意喚起している。なお、最近の上海や北京などの大都市では、実際に配車サイトが独占サービスに変わったため、供給が「ややひっ迫気味」に転じており、出退勤時には車が以前より捕まえにくくなったとの不満が出始めていると聞く。

 一方で、わざわざ取り上げるほどのものだろうか、と思ったのが、「学校のいじめ問題」や「離婚後の元夫と元妻の債務負担問題」。元夫婦の債務問題というのは、湖南や江蘇、浙江などから集まった百数人の集団訴訟で、原告のほとんどが女性。結婚生活時の夫の放蕩などを原因とした借金が離婚後も共同負担となっている現在の法システムに対し、不満を表明したものだ。

 ただ、気になるのは、2016年の住宅ブームで非常に多くの人々が偽装離婚などを含めた多種多様な方法で資金調達し、先を争って物件を購入したことだ。仮にこれから住宅価格が大きく下落に転じるようなことがあれば、この手の訴訟件数は一気に膨れ上がることになるだろう。

 減税政策と人民元相場についての議論に一石を投じたのが、ある企業経営者が12月に発表した「米国への直接投資調査レポート」。中国で生産するより、米国で生産した方が安く、良いものが作れることが分かったという。

 中国で進められている「減税」には欠陥や行政の恣意性(胸先三寸)が大きく影響しており、実は増税となっている企業も少なくない。その点を考慮すると米国で生産する方がはるかに効率的との結論に達したというのだ。法体系や行政の整備が必要であることや、人民元の先安観につながりかねないことなどが暗示されている。

 最も気になったのが、当局が9月に発表した「妊婦死亡率が前年比3割増の10万人あたり18.3人」というニュースだ。「二人目出産」が完全解禁された2016年の出生者数は前年比8%増の1786万人となった。2016年初には「2000万人もあり得る」と威勢の良い観測があったのとは裏腹に、最終的に予想下限で着地した格好となった。

 理由は結局、二人目を育てるお金や時間の余裕がないということに尽きる。しかし、妊婦死亡率の急上昇は別の重要な問題点もあぶりだした。それは帝王切開が当たり前となっている中国都市部でも、高齢出産の増加に対応できるだけの医療設備が十分でないということだ。

 少子高齢化が中国の長期展望において最大のリスクの一つであることは周知の事実。昨年の出生者数が低い伸びにとどまったのは、中国の少子化トレンドの裏付けるものになってしまった。ただ、既存の産婦人科医療サービスがそのような低い伸びにすら十分対応できないとすれば、中国の状況が想像よりも厳しいことを露呈したことになってしまう。出生者数の動向は、2017年も注目すべきポイントだろう。

(吉永東峰株式会社ニーズキャピタルデザイン代表取締役)

【執筆者略歴】
1998年法政大学経済学部卒業。同年コカコーラに入社、資金財務、経営企画に従事。2001年ネットチャイナ(現、新華ファイナンス)入社、中国金融情報サービスの企画とマーケティングを統括。2003年青山学院大学MBA in Financeを取得。2006年EuromoneyグループISI Emerging Markets日本支社長。2007年11月スパークス・アセット・マネジメントの中国プロジェクトに参画、QFIIをはじめQDIIのマーケティング、中国ファンドの運用企画などに携わる。

中国面面観(バックナンバー)

2017.03.13
観光業よ、おまえもか
2017.02.15
企業主導で道路事情に変化を!
2016.12.28
日本人出張者の目から見た「中国あるある」
2016.11.16
上海ディズニーランドは今こそ行くべきか
2016.11.16
中国だけが極端か?
2016.08.22
個人情報のない国
2016.06.14
中国の医療不信
2016.04.27
中国の将来像はどこにあるのか
2015.12.30
中国式クリスマス
2015.11.27
寒い中国需要に映える熱い国慶節消費
2015.10.22
2015年最後の大型連休
2015.09.24
北戴河会議の今むかし
2015.07.31
五星紅旗はためくフランスのワイナリー
2015.07.31
青春御礼 --大学受験の日々--
2015.07.31
個人投資家5Gの参戦 --国運に賭ける若者たち--
2015.07.31
時勢造英雄 --話題の80後、90後CEOの顔ぶれ--
2015.04.07
老後の年金は大丈夫か --中国版年金制度崩壊問題--
2015.04.07
羊年春節の紅包合戦 --中国のモバイル決済市場の躍進になるか--
2015.02.13
大人気の家政婦「月嫂」「育児嫂」が急増中--中国の子育て事情--
2015.02.13
持ち家を買わない時代が来るか --「90後」世代の複雑な心理--
2014.12.19
急成長する中国の映画産業 --SNSが活躍--
2014.12.19
激励橙(げきれいオレンジ) --新型農業と“不屈の起業家精神”の邂逅--
2014.10.02
八〇後、九〇後も顔負け、「中国おば様」は新興勢力
2014.10.02
粉糸経済(Fans Economy)~不完全さを受け止めてくれるのは愛だけ~
2014.08.11
~中国に最初のゴルフ場ができて30年~
2014.07.17
~英語をめぐる受験論争~
2014.06.17
~変化を見せる清明節のお墓参り~
2014.05.22
~スタートラインで負けられない――中国の教育事情~
2014.04.08
~「中国転居マップ」とビッグデータ~
2014.03.12
~“吊絲”――台頭する中国の新しい消費パワー――~
2014.02.19
~「養老地産」--高齢化する中国の新しいビジネスモデル~
2013.12.30
~中国のコカ・コーラ、不思議な言葉が続々と~
2013.12.05
~中国のネット通販祭、日本最大の百貨店2年分を一日で稼ぐ~
2013.11.11
~「三中全会」と中国の試練~
2013.09.30
~“リコノミクス”はチャンスをもたらすか?~
2013.09.10
~烏龍指~
2013.08.06
~中南海「懐仁堂」での勉強会~
2013.07.05
~699万人~
2013.06.04
~中国銘茶『明前龍井茶』の異変~
2013.03.25
~中国は「くたばれGDP」の段階に突入するのか?~
2013.03.25
~全人代と新年度~
2013.02.19
~春運~
2013.01.23
~中国的酒席の作法~
2012.12.14
~「豪腕総理」の誕生で中国の都市化が加速するのか?~
2012.11.21
~「人民元の国際化、オフショア市場の流動性が焦点に」~
2012.10.16
~「大転換点に差し掛かっている中国」~
2012.10.16
~「30年の歳月」~
2012.09.21
~「盂蘭節」~
2012.08.06
~ロンドン五輪と「メイド・イン・チャイナ」~
2012.07.04
~人民元物語~
2012.06.05
~都市への人口流入と住宅問題~
2012.05.02
~ダブルスタンダード中国、悩みがまた一つ~
2012.05.02
~旧暦の話~
2012.03.28
~富裕層間の古くて新しいコレクション「茅台酒」~
2012.02.29
~中国の大学入試~春の陣~
2012.01.19
~漢字って面白い!~
2012.01.19
~世界を席巻する中国人の贅沢品消費~

以前のコンテンツ(中国街角ウォッチ)バックナンバー

中国街角ウォッチの連載は第58回を持ちまして終了とさせていただきました。

2011.12.28
第58回
2011.11.24
第57回
2011.10.26
第56回
2011.09.28
第55回
2011.09.01
第54回
2011.07.27
第53回
2011.06.29
第52回
2011.05.23
第51回
2011.04.26
第50回
2011.03.30
第49回
2011.03.02
第48回
2011.01.26
第47回
2010.12.27
第46回
2010.11.24
第45回
2010.10.27
第44回
2010.09.27
第43回
2010.08.24
第42回
2010.07.28
第41回
2010.06.25
第40回
2010.05.27
第39回
2010.04.23
第38回
2010.04.06
第37回
2010.02.24
第36回
2010.01.25
第35回
2009.12.29
第34回
2009.12.01
第33回
2009.10.26
第32回
2009.10.08
第31回
2009.08.26
第30回
2009.08.10
第29回
2009.06.30
第28回
2009.06.01
第27回
2009.04.22
第26回
2009.03.23
第25回

第24回以前については中国株メールマガジンのバックナンバーでご覧いただけます。

その他のコンテンツ

2014.08.11
人民元から目が離せない「―中国為替レート市場化への展望―」 インターンシップ生 曽悦心
2014.07.17
あのころ・そのとき「~アナがない?!~」 はらだおさむ氏
2014.05.22
あのころ・そのとき「~天保上知令のことなど~」 はらだおさむ氏
2014.02.19
あのころ・そのとき「~ネジをかむ~」 はらだおさむ氏
2013.12.30
あのころ・そのとき「~春の海~」 はらだおさむ氏
2013.12.05
あのころ・そのとき「~砲弾と包丁~」 はらだおさむ氏
2013.11.11
あのころ・そのとき「~セブンか、エイトか~」 はらだおさむ氏
2013.09.30
あのころ・そのとき「~ルビコンの川~」 はらだおさむ氏
2013.09.10
あのころ・そのとき「~鬼城~」 はらだおさむ氏
2013.07.05
あのころ・そのとき「~ならぬことは、ならぬ~」 はらだおさむ氏
2013.06.04
あのころ・そのとき「~虚(むな)しい?中国~」 はらだおさむ氏
2013.02.19
あのころ・そのとき「~青空がみえない街~」 はらだおさむ氏
2013.01.23
あのころ・そのとき「~冬来たりなば…~」 はらだおさむ氏
2012.12.14
あのころ・そのとき「~莫言効応(莫言効果)~」 はらだおさむ氏
2012.11.21
あのころ・そのとき「~傷ついた鳩~」 はらだおさむ氏
2012.09.21
あのころ・そのとき「~一夜漬けのおはなし~」 はらだおさむ氏
2012.08.06
あのころ・そのとき「~ニホンメシヤ・事始め ~」 はらだおさむ氏
2012.07.04
あのころ・そのとき「~風が招(よ)ぶ~」 はらだおさむ氏
2012.06.05
あのころ・そのとき「~“あのころ”のこと~」 はらだおさむ氏
2012.03.28
あのころ・そのとき「~みずのわ放送局~」 はらだおさむ氏
2012.02.29
あのころ・そのとき「~シャンハイ・・・~」 はらだおさむ氏
2011.12.28
あのころ・そのとき「~城市とシティと・・・~」 はらだおさむ氏
2011.11.24
あのころ・そのとき「~老百姓(ラオパイシン) 老朋友(ラオポンヨウ)~」 はらだおさむ氏
2011.10.26
あのころ・そのとき「~瀧が涸れて来ている!~」 はらだおさむ氏
2011.09.28
~中秋節の「月餅」商戦~今年はエコ化?~ 李粹蓉氏
2011.09.01
中国住宅ローン事情~借金嫌いの中国人が住宅ローンに走ったわけ~ 董氷氏
2011.07.27
あのころ・そのとき「~くにのかたち~」 はらだおさむ氏
2011.06.29
あのころ・そのとき「~後発の強み~」 はらだおさむ氏
2011.05.23
あのころ・そのとき「~危機常在~」 はらだおさむ氏
2011.03.30
あのころ・そのとき「~再会の食卓・・・~」 はらだおさむ氏
2011.03.02
あのころ・そのとき「~ケンカのあとで・・・~」 はらだおさむ氏
2011.01.26
あのころ・そのとき「~こよひ しぐれか~」 はらだおさむ氏
2010.12.27
あのころ・そのとき「~もうケンカはすみましたか~」 はらだおさむ氏
2010.11.24
あのころ・そのとき「~青い空と赤レンガの壁~」 はらだおさむ氏
2010.10.26
あのころ・そのとき「~「飛躍」のみちのかたわらで・・・~」 はらだおさむ氏
2010.07.28
あのころ・そのとき「~いつか来た道だろうか…~」 はらだおさむ氏
2010.06.25
あのころ・そのとき「~開幕で、金(きん)~」 はらだおさむ氏
2010.01.25
あのころ・そのとき「~序の舞の…~」 はらだおさむ氏
2009.12.29
あのころ・そのとき「上海万博のことなど」 はらだおさむ氏
中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。