中国面面観

「中国面面観」は中国の様子をお届けするコンテンツです。弊社発行のメールマガジンで連載している内容を、お客様のご要望によりホームページでもお届けします。

企業主導で道路事情に変化を!

2017.02.15

悪名高い中国の道路交通事情が大きく改善するかもしれない。スマート自動車開発の動きが加速しているためだ。スマート自動車はカメラやレーダーを搭載したうえで、交通オンラインシステムと道路上で連携することが可能。これにより、自動的に車間距離をとったり、歩行者や障害物などを発見してブレーキを作動させたりと、ドライバーに様々なサポート提供できるようになる。

新しいもの好きの中国大手企業はこぞって飛びついており、ネット会社の御三家と呼ばれるテンセント、百度(バイドゥ)、アリババはいずれも、自動車メーカーと提携してこの新事業に参入している。

 最終進化形として自動運転車があるが、これはインターネット検索最大手のバイドゥが特に注力しており、すでに北京の環状線高架道路を時速100キロメートルで走行した実績を持つ。

 最新のニュースでは試験道路での走行で、障害物回避はもちろん、追い越しなどを楽々とこなすと伝えられた。記者のコメントによると「短所はパソコンを大量に積んでいるので、冷却用ファンの音がうるさかったくらい」だったそうだ。

中国の道路事情、特に自動車の運転の荒っぽさを知るものにとっては、条件反射的に「自動運転などとんでもない」と思うかもしれない。しかし、逆に考えれば、それだけにスマート化・自動化して安全確保や交通秩序を確立する価値があるということになる。

中国はスマートカーや自動運転の普及条件が整いつつあるといってよさそうだ。まず、世界最大の自動車大国となり、市場規模は十分となった。もちろん、国内における海外大手合弁企業の競争力はまだまだ高く、国産ブランドメーカーはエンジンやトランスミッションなど基幹パーツや自動車としての全体の作りこみは劣るとの指摘も多い。

 こうしたなか、中国は電気自動車(EV)の開発に注力。ガソリンエンジンや高度なトランスミッションが不要となる新たな産業構造に一足飛びに到達することで、質的にも先進国と肩を並べる自動車大国に脱皮しようとしている。スマート自動車は全体の構造が複雑なガソリンエンジンより、電気モーター駆動との親和性が高いのだ。

次に、自動車に搭載するカメラやレーダーといったハード面でのハイテク技術やソフト開発力が着実に進歩している。世界最速のスーパーコンピュータは中国製が1位を獲得したほか、世界最大規模のインターネット社会から収集される膨大な情報を処理分析するクラウド・コンピューティングやデータ・センターの整備なども日進月歩の勢い。

とは言え、万事が順風満帆というわけではない。まず、スマート化の一助となるはずの電気自動車については、2017年から政府補助金が大幅に削減されることになった。高額の補助金に目がくらんだ小規模の自動車メーカーが、低品質の電気自動車を大量に市場に投入したためだ。電気バスに至っては補助金が最大40%も打ち切られることになった。

 自動運転では国防・治安維持の問題が立ちふさがる。ポケモンGOが「非公表の軍事基地探査も可能」という理由で認可されないのと同じ構図だ。残念ながら、自動運転に関してはマーケットでも悲観的にみられているようで、米国市場でADR(米国預託証券)として上場するバイドゥの株価は、この話題が出るたびに逆に売られることもあるようだ。

それでも、電気自動車やスマート自動車、自動運転への期待を捨てがたいのは、やはり必要に迫れている感が強いからだと思う。華北や東北で蔓延するスモッグの原因の一つに自動車の排気ガスがあり、大都市で慢性化する交通渋滞がそれに更に拍車をかける。経済的損失はもちろん、健康問題が将来の大きなリスクに化ける恐れすらある。

 「そこに人々が期待する市場があれば、中国企業はとにもかくにも応えてきた」という実績に、あらためて期待したいと思う。

(吉永東峰株式会社ニーズキャピタルデザイン代表取締役)

    【執筆者略歴】
1998年法政大学経済学部卒業。同年コカコーラに入社、資金財務、経営企画に従事。2001年ネットチャイナ(現、新華ファイナンス)入社、中国金融情報サービスの企画とマーケティングを統括。2003年青山学院大学MBA in Financeを取得。2006年EuromoneyグループISI Emerging Markets日本支社長。2007年11月スパークス・アセット・マネジメントの中国プロジェクトに参画、QFIIをはじめQDIIのマーケティング、中国ファンドの運用企画などに携わる。

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