中国面面観

「中国面面観」は中国の様子をお届けするコンテンツです。弊社発行のメールマガジンで連載している内容を、お客様のご要望によりホームページでもお届けします。

上海ディズニーランドは今こそ行くべきか

2016.11.16

 中国におけるサービス産業は、栄枯盛衰がとにかく速い。例えばマカオのカジノ産業だが、以前は退屈なスロットマシーンにさえ行列ができるほど活況だったが、習近平・国家主席が「腐敗取締強化」に踏み切ると一変し、今では閑古鳥が鳴くような有様だ。最近の明るいニュースは「今年8月のカジノ産業収益が27カ月ぶりに前年同月比でプラス1%に転じた」というほど無残なもので、低迷が長期化した。

 台湾では対中強硬派と言われる蔡英文・総統が今年5月に就任し、 中国本土からの観光客が急減した。中国本土からの通行証の発給制限など「いやがらせ」もあり、中国本土からの観光客が今年8月は前年同月比で約40%も落ち込んでいる。そのおかげで、台湾では日本人観光客が大歓迎されているという。

 一方、日本では様相が若干異なるようだ。東京の銀座や日本橋で目についた高級品の爆買いはなりをひそめたが、7月に日本を訪れた中国本土からの旅行者は、過去最高の73.1万人を記録している。来訪者の多くが20-30歳代の女性だったことからすると、楽しみ方が変わったということなのかもしれない。

 最近の中国では映画産業が急減速している。15年は興行収入が前年比で49%増(14年は36%増)となり、米国の約6割の規模に達した。これを受けて「米国を抜き去るのも時間の問題」と業界関係者は豪語していたが、今年4月から対前年割れの水準で低迷している。

 映画ファンドが収益を水増しした事件やヒット作不足などが原因として挙げられているが、どうもそれだけではなさそうだ。「実態はよく分からない」「飽きられた」など、意見が分かれている。

 レジャーで面白いのが、今年6月に開業した上海ディズニーランドだ。それなりに人気で、そこそこ混んでいると聞く。ただ、米ウォルト・ディズニー社のCEOは、「上海の入場者数は、計画よりも下振れしている」とコメント。また、従業員用のパスポート(入場券)が流出し、ダフ屋が昼過ぎに割引価格で販売しているという報道も流れた。これまでのところ、あまり良い評価は聞かない。

 それなのに「面白い」と指摘したのは、意外なところから高評価が聞こえてきたためだ。日本の女性アイドルグループの乃木坂46に所属する斉藤優里さんが、ラジオ番組でベタ褒めしていたのである。トーク自体はほんの1~2分で、内容は以下のようなものだったという。

「夏休みをもらえたが、舞台の稽古も始まって、弾丸になってしまったが、一泊二日で行ってきた。」
「すごいイメージがちょっと悪いかと思うんですけど、言われているものが……。でも、ぜんぜん行ってみたら、ゴミもまったく落ちていないし、本当にきれいだし、キャストさんもすごいみんな優しいし、みんなぜひ行った方がいいと思う。ゼッタイに。」
「乗り物は上海しかないものの方が多くて、パイレーツ・オブ・カリビアンの船の乗り物とか、東京ディズニーランドと違って、上海だと白雪姫の七人の小人がジェットコースターになっている。それに感動しちゃって……」
「最後の夜のショーがめちゃくちゃステキです。日本のよりすごいクオリティが高かったです。感動して鳥肌立ちまくりでした。」
「エッグタルトがおいしい。」

 ショービジネスに詳しいと思われる人気アイドルグループのメンバーがそこまで褒めるのだから、信頼性は高い(と思われる)。また、斉藤優里さんがディズニーランド関係について詳しいのは本当のようで、別の日のテレビの音楽番組でタモリさんとディズニーランドについてトークを交わしていたほどだ。

 話を本題に戻そう。中国人は一方向に流れやすく、その時に付和雷同的に実態以上に高く評価したり、あるいはその逆の現象がたやすく起こったりしがち。その流れが変わるタイミングを推し量るのも大変だ。それでも、株式投資と同じように、本当に価値があるものはいずれ評価される時期が来るのだとすれば、上海ディズニーランドのブームがいずれやって来るのかもしれない。「激混み」になる前に、家族を連れて行ってみるとしようか。

(吉永東峰株式会社ニーズキャピタルデザイン代表取締役)

【執筆者略歴】
1998年法政大学経済学部卒業。同年コカコーラに入社、資金財務、経営企画に従事。2001年ネットチャイナ(現、新華ファイナンス)入社、中国金融情報サービスの企画とマーケティングを統括。2003年青山学院大学MBA in Financeを取得。2006年EuromoneyグループISI Emerging Markets日本支社長。2007年11月スパークス・アセット・マネジメントの中国プロジェクトに参画、QFIIをはじめQDIIのマーケティング、中国ファンドの運用企画などに携わる。

中国面面観(バックナンバー)

2016.11.16
中国だけが極端か?
2016.08.22
個人情報のない国
2016.06.14
中国の医療不信
2016.04.27
中国の将来像はどこにあるのか
2015.12.30
中国式クリスマス
2015.11.27
寒い中国需要に映える熱い国慶節消費
2015.10.22
2015年最後の大型連休
2015.09.24
北戴河会議の今むかし
2015.07.31
五星紅旗はためくフランスのワイナリー
2015.07.31
青春御礼 --大学受験の日々--
2015.07.31
個人投資家5Gの参戦 --国運に賭ける若者たち--
2015.07.31
時勢造英雄 --話題の80後、90後CEOの顔ぶれ--
2015.04.07
老後の年金は大丈夫か --中国版年金制度崩壊問題--
2015.04.07
羊年春節の紅包合戦 --中国のモバイル決済市場の躍進になるか--
2015.02.13
大人気の家政婦「月嫂」「育児嫂」が急増中--中国の子育て事情--
2015.02.13
持ち家を買わない時代が来るか --「90後」世代の複雑な心理--
2014.12.19
急成長する中国の映画産業 --SNSが活躍--
2014.12.19
激励橙(げきれいオレンジ) --新型農業と“不屈の起業家精神”の邂逅--
2014.10.02
八〇後、九〇後も顔負け、「中国おば様」は新興勢力
2014.10.02
粉糸経済(Fans Economy)~不完全さを受け止めてくれるのは愛だけ~
2014.08.11
~中国に最初のゴルフ場ができて30年~
2014.07.17
~英語をめぐる受験論争~
2014.06.17
~変化を見せる清明節のお墓参り~
2014.05.22
~スタートラインで負けられない――中国の教育事情~
2014.04.08
~「中国転居マップ」とビッグデータ~
2014.03.12
~“吊絲”――台頭する中国の新しい消費パワー――~
2014.02.19
~「養老地産」--高齢化する中国の新しいビジネスモデル~
2013.12.30
~中国のコカ・コーラ、不思議な言葉が続々と~
2013.12.05
~中国のネット通販祭、日本最大の百貨店2年分を一日で稼ぐ~
2013.11.11
~「三中全会」と中国の試練~
2013.09.30
~“リコノミクス”はチャンスをもたらすか?~
2013.09.10
~烏龍指~
2013.08.06
~中南海「懐仁堂」での勉強会~
2013.07.05
~699万人~
2013.06.04
~中国銘茶『明前龍井茶』の異変~
2013.03.25
~中国は「くたばれGDP」の段階に突入するのか?~
2013.03.25
~全人代と新年度~
2013.02.19
~春運~
2013.01.23
~中国的酒席の作法~
2012.12.14
~「豪腕総理」の誕生で中国の都市化が加速するのか?~
2012.11.21
~「人民元の国際化、オフショア市場の流動性が焦点に」~
2012.10.16
~「大転換点に差し掛かっている中国」~
2012.10.16
~「30年の歳月」~
2012.09.21
~「盂蘭節」~
2012.08.06
~ロンドン五輪と「メイド・イン・チャイナ」~
2012.07.04
~人民元物語~
2012.06.05
~都市への人口流入と住宅問題~
2012.05.02
~ダブルスタンダード中国、悩みがまた一つ~
2012.05.02
~旧暦の話~
2012.03.28
~富裕層間の古くて新しいコレクション「茅台酒」~
2012.02.29
~中国の大学入試~春の陣~
2012.01.19
~漢字って面白い!~
2012.01.19
~世界を席巻する中国人の贅沢品消費~

以前のコンテンツ(中国街角ウォッチ)バックナンバー

中国街角ウォッチの連載は第58回を持ちまして終了とさせていただきました。

2011.12.28
第58回
2011.11.24
第57回
2011.10.26
第56回
2011.09.28
第55回
2011.09.01
第54回
2011.07.27
第53回
2011.06.29
第52回
2011.05.23
第51回
2011.04.26
第50回
2011.03.30
第49回
2011.03.02
第48回
2011.01.26
第47回
2010.12.27
第46回
2010.11.24
第45回
2010.10.27
第44回
2010.09.27
第43回
2010.08.24
第42回
2010.07.28
第41回
2010.06.25
第40回
2010.05.27
第39回
2010.04.23
第38回
2010.04.06
第37回
2010.02.24
第36回
2010.01.25
第35回
2009.12.29
第34回
2009.12.01
第33回
2009.10.26
第32回
2009.10.08
第31回
2009.08.26
第30回
2009.08.10
第29回
2009.06.30
第28回
2009.06.01
第27回
2009.04.22
第26回
2009.03.23
第25回

第24回以前については中国株メールマガジンのバックナンバーでご覧いただけます。

その他のコンテンツ

2014.08.11
人民元から目が離せない「―中国為替レート市場化への展望―」 インターンシップ生 曽悦心
2014.07.17
あのころ・そのとき「~アナがない?!~」 はらだおさむ氏
2014.05.22
あのころ・そのとき「~天保上知令のことなど~」 はらだおさむ氏
2014.02.19
あのころ・そのとき「~ネジをかむ~」 はらだおさむ氏
2013.12.30
あのころ・そのとき「~春の海~」 はらだおさむ氏
2013.12.05
あのころ・そのとき「~砲弾と包丁~」 はらだおさむ氏
2013.11.11
あのころ・そのとき「~セブンか、エイトか~」 はらだおさむ氏
2013.09.30
あのころ・そのとき「~ルビコンの川~」 はらだおさむ氏
2013.09.10
あのころ・そのとき「~鬼城~」 はらだおさむ氏
2013.07.05
あのころ・そのとき「~ならぬことは、ならぬ~」 はらだおさむ氏
2013.06.04
あのころ・そのとき「~虚(むな)しい?中国~」 はらだおさむ氏
2013.02.19
あのころ・そのとき「~青空がみえない街~」 はらだおさむ氏
2013.01.23
あのころ・そのとき「~冬来たりなば…~」 はらだおさむ氏
2012.12.14
あのころ・そのとき「~莫言効応(莫言効果)~」 はらだおさむ氏
2012.11.21
あのころ・そのとき「~傷ついた鳩~」 はらだおさむ氏
2012.09.21
あのころ・そのとき「~一夜漬けのおはなし~」 はらだおさむ氏
2012.08.06
あのころ・そのとき「~ニホンメシヤ・事始め ~」 はらだおさむ氏
2012.07.04
あのころ・そのとき「~風が招(よ)ぶ~」 はらだおさむ氏
2012.06.05
あのころ・そのとき「~“あのころ”のこと~」 はらだおさむ氏
2012.03.28
あのころ・そのとき「~みずのわ放送局~」 はらだおさむ氏
2012.02.29
あのころ・そのとき「~シャンハイ・・・~」 はらだおさむ氏
2011.12.28
あのころ・そのとき「~城市とシティと・・・~」 はらだおさむ氏
2011.11.24
あのころ・そのとき「~老百姓(ラオパイシン) 老朋友(ラオポンヨウ)~」 はらだおさむ氏
2011.10.26
あのころ・そのとき「~瀧が涸れて来ている!~」 はらだおさむ氏
2011.09.28
~中秋節の「月餅」商戦~今年はエコ化?~ 李粹蓉氏
2011.09.01
中国住宅ローン事情~借金嫌いの中国人が住宅ローンに走ったわけ~ 董氷氏
2011.07.27
あのころ・そのとき「~くにのかたち~」 はらだおさむ氏
2011.06.29
あのころ・そのとき「~後発の強み~」 はらだおさむ氏
2011.05.23
あのころ・そのとき「~危機常在~」 はらだおさむ氏
2011.03.30
あのころ・そのとき「~再会の食卓・・・~」 はらだおさむ氏
2011.03.02
あのころ・そのとき「~ケンカのあとで・・・~」 はらだおさむ氏
2011.01.26
あのころ・そのとき「~こよひ しぐれか~」 はらだおさむ氏
2010.12.27
あのころ・そのとき「~もうケンカはすみましたか~」 はらだおさむ氏
2010.11.24
あのころ・そのとき「~青い空と赤レンガの壁~」 はらだおさむ氏
2010.10.26
あのころ・そのとき「~「飛躍」のみちのかたわらで・・・~」 はらだおさむ氏
2010.07.28
あのころ・そのとき「~いつか来た道だろうか…~」 はらだおさむ氏
2010.06.25
あのころ・そのとき「~開幕で、金(きん)~」 はらだおさむ氏
2010.01.25
あのころ・そのとき「~序の舞の…~」 はらだおさむ氏
2009.12.29
あのころ・そのとき「上海万博のことなど」 はらだおさむ氏
中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。