中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第26回)

現在進行中の世界的な金融危機の中で、世界中のさまざまなメディアが中 国の有り様に注目している。その中でテレビ報道などは、ここに来て中国で も始まっている不況が、いかに深刻なものかを倒産企業、失業者、出稼ぎ労 働者を対象にしたインタビューや貧困地域での現地取材を通じて伝えている。

日本の報道特集番組などでも、スタジオに招いたコメンテーターが口を揃え て自分が見てきたような怪しい話をする。マスコミ関係者から私への問い合 わせでも、結局のところ中国のマイナス面の具体例に関するものだ。1989年 の天安門事件や2005年の反日運動騒ぎの時も同じような傾向があり、別に驚 くに当たらない。ただ、“中国が不安定であり、社会不安がまん延している ”というような一方的な悲観論だけを語るジャーナリストの性癖には、それ が彼ら自身に与えられた任務とは分かっていながらも、同情さえ覚える。

先日のテレビ番組では中国専門家と称するコメンテーターが、「中国の農村 は解放以前の状態に戻った」などと、無責任極まりない発言をなさっていた。 彼らは解放前の中国の歴史を学んだことがあるのだろうか?

確かに中国の公表値でも、広東省の昨年の工場閉鎖は5000社近くあり、さら に今年4月までに4000社近くが閉鎖するという予測がある。また、これまで不 動産バブルが続いていた広東省深セン市でも、不動産価格が半分近くまで値 下がりしており、この傾向は徐々に北に向かって進むものとみられている。

しかし、バブルの直接的な影響を受けているのは一部の資産家階級であって、 一般庶民にはほとんど無関係な世界であることを現場にいると実感する。平 日でも昼夜を問わずレストランは家族連れなどで溢れており、空席はほとん ど見当たらないほどの賑わいだし、スーパーマーケットやコンビニも若い人 で一杯だ。

深セン市は街の中心部を移転する計画で、これはグレーターホンコン(大香 港圏)を目指し、香港と相互乗り入れの地下鉄を延長していることとも関係 しているようにみえる。移転予定地はすでに広大な土地が用意され、塀で囲 まれて中は見えないが、駅ビル・商業ビルの建設などが計画されているのだ ろう。その場所に程近い広大な敷地に建てられている市政府庁舎の付近には、 すでに立派な高層ビルが出来上がっているが、これらのビルにはテナントが 集まらないで困っていると聞いた。

3月5日に始まった全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告では、中国 が抱えるさまざまな経済問題に対する政府としての活動指針が示されている。 その政策から見て取れるのはやはり農村対策。すなわち都市と農村の格差是 正のために、政府は何をするかということであり、これは党中央がこれまで の全人代でもずっと掲げ続けてきた政策だ。農村からの出稼ぎ労働者が職を 失うのは、工場閉鎖もさることながら、不動産バブルの崩壊でビル建設が大 幅に減少したからであり、これ自体はかなり前からその予兆があった。

こうしたなか深セン市や中山市を訪問したのだが、深セン市は前述のとお り相変わらず活気に満ちているようにみえた。しかし、株で大損したという 現地銀行マンによれば、このところ欧州への輸出の減少で、深セン港に寄港 する船舶は少なくなっているし、輸入も減少してコンテナも減り、高速道路 もトラックが少なくなったので渋滞が緩和されたということだった。

ところが翌日たずねた中山市の開発区では、親しい行政トップから次のよう な話を聞いた。最近は外資による投資話がほとんどなくなったが、国有企業 による投資が急増。以前から聞いていた計画だが、香港~マカオ・広東省珠 海市の橋梁建設が間もなく始まるためで、その投資総額は約700億元。橋梁建 設に使う鋼構造物は地元で生産することになっており、その生産任務を負っ た中央からの国有企業代表団が、工場建設に適した土地を探しに明日やって 来るという威勢のいい話である。

彼の話によれば、関連する中央政府機関は例年の予算が600億元だったが、今 年は6000億元とまさに10倍増。新広深高速道路(広州市~深セン市)の建設 に10億元の投資を決めたというのだ。なるほど、中国の景気対策、経済政策 はすさまじい。この工事にはまた多くの労働力を要することになろうが、こ うした事業はそのいずれもが失業対策につながっているのだろう。

中国はもともと農村の労働力が過剰で、そのエネルギーが都市建設やインフ ラ建設のために費やされ、それが都市と農村の格差是正を促進した部分もあ った。今回の華南訪問では日本の報道では知りえない中国のダイナミズムを 目の当たりにして、あらためて驚かされたが、帰国の朝、くだんの中山の行 政幹部から携帯に電話が入り、代表団との協定(中山市が工場用地を提供す る)にサインしたと告げられた。そのスピード感にも脱帽である。

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