中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第28回)

中国の街角を歩いていても世界的金融恐慌が中国に押し寄せていることなど 微塵も感じないし、地方の行政幹部からも威勢のいい話しか聞けない。一方 で6月になってからは日本経済もすでに底を打って回復基調にあるなどという 論評も出回るようになっているのだが、本当にそうなのだろうか?

日本の産業界では不況品種の代表ともいえる自動車や半導体も一時の危機を 脱して緩やかな回復に向かっているが、あれもこれも中国が元気だからとか、 中国特需などと言った言葉も聞かれる。

だが、今年第1四半期(1~3月)の中国のGDP(国内総生産)は6.1%増であり、 経済成長の鈍化は昨年1月から止まるところ知らない。中国が今年年初にGDP の成長率目標を8%と公表しているところから見ると、厳しいスタートである ことに違いない。昨年までは2ケタ成長を続けている中国にしてみれば事態は 深刻である。

しかし、これらの統計数値は果たして真実をきちんと反映している数字であ るのだろうかと、わたしはいつもいぶかるのである。なぜならこれまで中国 の公表値はあまりにも政治的で、統計そのものが当てにできない国柄だった からだ。しかしながらその一方で、経済のグローバル化の潮流の中で中国も 間違いなく世界経済に入り込んでいることから、統計数字の正確度は間違い なく上がっており、現在は以前のような政治性を持った意図的な公表はなく なったとも信じていた。

だが、一昨日に来日中の中国社会科学院経済研究所研究員のお話を拝聴して、 中国の統計というのはまだそのレベルなのかと、あらためて落胆させられた。 日本の中国専門家による中国経済の分析は、ほとんどがそうした統計をベー スにしている現実を知るだけに、中国の難しさをまたしても感じたのである。

中国の代表的新聞は「人民日報」は中国共産党の党機関紙だが、毎年のよう に「地方各行政・機関は正しい統計数値を把握して、中央への報告として欲 しい。さもなくば国家は正しいマクロ経済政策を出せない」という趣旨の内 容である。これについては中国の行政のあり方そのもの、すなわちシステム に問題があると、わたしは以前から思っている。党中央もそう考えてか、こ こ数年そのシステムを少しずつ改革しており、その効果も出始めているので はと思っていた。そのシステム改革とは、地方行政幹部の考課基準に従来か らのGDP成長率の計画達成度だけではなく、環境保護や環境汚染なども考慮す るというもの。環境汚染の深刻な中国もやっと環境について規制強化を始め ただけでなく、そのフォローも政策に生かすようになったという大きな進歩 に見えた。

これに対し一昨日に拝聴した大先生のお話では、先生が現場で行政トップに 聞いた景況感と生産現場のトップに聞いたものが明らかに異なるというのだ。 省単位では厳しく税を取り立てており、中央への納税もその延長線上にある のだが、納税額は昔ながらのノルマ制であり、未達成である場合は翌年の分 を原資として、納税させられるという。わたしがジェトロ時代に経験した地 方廻りでも日常的だったが、ある昼食会に集まった地方幹部同士の会話の中 心はGDP成長率に関することであり、一部の幹部は「統計データを3回出して も認めてもらえなかった」と嘆いていたことが印象的であった。地方出身で ある中国の友人は、中学校時代のクラスメートが地方の統計局に勤務してお り、彼の話として「中国の統計は当てにしない方がいい」と断言したという から、誤った統計数値が中央に集められてもそれが正しいはずはないと思っ ていた。

大先生の実地検分によれば中国はいまだ国有企業が中心の経済だが、国家規 模の大型国有企業の業績は軒並み悪いが、地方行政の管理する国有企業は業 績が比較的良い。地方企業のトップは業績が振るわないと言うのに、地方の 鎮長、県長クラスの行政官によると、業績は上向きで計画達成に問題ないと いう。その時点でのギャップは必ずしも大きくないだろうが、中央に集大成 されたときのギャップは相当のものになるのは、言わずもがなである。

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