中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第29回)

今月は最近の社会状況、特に文化大革命(文革)を経験しない若者たちが社 会の主流になった現在、何が起きているのか?一人っ子政策が生んだ社会矛 盾と結婚問題などについて報告したい。

1970年代、「生一個孩子、美好生活」(一人っ子なら、いい生活だ)という 大きなスローガンが北京の街中のあちこちに掲げられていた。あれから30年 が経ち、一人っ子政策ゆえのさまざまな社会的矛盾が顕在化してきているよ うにも見受ける。

一人っ子として生まれた子供たちは、親の愛情を一身に受ける代わりに徹底 的に甘やかされることから、家庭内にあっては皇帝のようにわがままで自己 中心主義になってしまい、“小皇帝”などと揶揄される結果となった。その 子供たちが学校を出て、社会人となり、社会の中心的存在となる日も近づい ている。

一方で子供が少ない分、高齢者比率が増加して超高齢化社会を現出してしま っているほか、男女の出生バランスにゆがみが発生。男子が多く、女子が少 ないという現象が、結婚適齢年齢の若者たちの数的不均衡を生んでいるので ある。

この一人っ子政策、適用されるのは主として都会に住む市民たち向けの政策 のように見えるが、決まった法律ではなく一種の行政指導のようなもの。地 方都市でも一人っ子政策は奨励され、夫婦が一人っ子宣言をして当局に申請 すれば、奨励金を受け取ることができるというシステムにして政策実現を促 進していた。

必要な労働力として子供が財産とされる農村では、最初の子が女の子なら二 人目の出産が認められるとか、少数民族は多産が認められるという具合であ り、都市住民でも金持ちは罰金を支払ってでも二人三人目を出産するという 話もある。

一方、農村では子供の売買などの犯罪行為が後を絶たず、社会的なマイナス 部分が目立つ政策であるには間違いない。この国、元来が「多子多福」(子 多くして幸多し)という伝統が根付いていた国柄であり、農業立国としては 子供イコール労働力という思想も「人口資本説」に支えられ49年の新中国成 立後も、多産の奨励が行われていたのである。日露戦争の時代、中国の人口 は4億人と言われていたのだが、食料事情の改善などもあり、人口は爆発的に 増え、今や13億人を超えるほどになった。

人口抑制論は1950年代の大躍進運動の時代に北京大学の馬寅初・学長が政府 に提言していたのだが、現実に抑制策として具現化したのは1970年代に入っ てからであった。一人っ子政策が施行された1970年代に生まれ、その子供た ちが物心ついたころには文革も終結しており1980年代に突入していくのだが、 計画経済から市場経済に移行して物資も豊かになった1980年代に育った若者 たちが「80後」と言われ、彼らの価値観が新たな社会的潮流として目立ち始 めている。

こうした社会矛盾を背景に数年前から出現しているのが「恐婚族」(結婚を 怖がる若者たち)であり、中国の有力メディアの調査によれば、自らが恐婚 族の一員であると認める人は22.3%、自分の周りに恐婚族がいるとした人は 45.7%に上ったという。

昨年の「中国社会形勢分析と予測」(中国社会科学院・社科文献出版社刊) による報告では、全国の婚姻届出人数は減少が続いており、結婚年齢の遅れ も目立ち始めているそうだ。2006年の統計だが、上海での結婚平均年齢は男 性31.1歳、女性28.4歳、北京の男性28.2歳、女性26.1歳となっているという。

分析調査は続けて恐婚族は年齢に区別なく存在しているが、特に「80後」の 年代に多いと総括している。そしてその原因として、この傾向が比較的高い 教育を受け、一人っ子が多く、家庭内で大切にされたために、心理的成熟度 が一般同年代の若者に比べると遅れており、社会経験も浅く、生活や仕事の 圧力からくるさまざまな悩みが、結婚に対する恐怖心につながっていると分 析している。

さらに間接的な原因かもしれないが、中国社会白書は中国の離婚率の増加も 関係しているという分析を行っている。1985年には45万8000組であった離婚 件数は、1990年には80万組となり、1995年には100万組を超え、2005年には1 78万5000組まで急増。こうした社会状況が存在していることと無関係ではな いとしている。

離婚率と都市化も密接な関係があると言われ、結婚の中で再婚の占める割合 が上海では20%、天津18.9%、北京17.62%となっているのだという。両親の 離婚は子供にとり厳しい試練ではあるが、その経験が自分の結婚観に影響す るのは当然の現象であろう。結婚したくない子供たちと、結婚させたいとい う親たちの確執の存在も社会問題として取り上げられているが、これも都市 化現象にともなうものであり、その源流はすべて一人っ子政策にあるように 思われる。

こうした異常な社会現象に気づいた中国政府は、2年ほど前から一人っ子政策 の見直しを始めたが、30年間の政策のつけは30年で取り戻せるわけでもなく、 新たな矛盾を創出することになるような気もする。 な気がする。

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