中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第30回)

いくらぐらいのバックマージンなら中国では犯罪にならないのかという質問 をよく受ける。中国社会では純粋なビジネスであっても、犯罪の意識などな しに、それに似通ったかたちのバックがなされているからだ。

昔から習慣的、儀礼的に行われて来たバックであったものが、新中国になっ てからも続いており、それが役人特権と結びついた。こうしたことは人間社 会である限り避けられない部分なのかもしれない。現地の弁護士によれば、 邦貨換算で2万円程度までなら問題にはならないだろうという話だった。

世界的規模で見るなら汚職清潔度なども発表されており、NGO「トランスペア レンシー・インターナショナル」(TI)が発表した2008年度腐敗認識指数( CPI)によれば、清潔度の高い国はニュージーランド、デンマーク、スウェー デンであり、ワースト国としてはソマリア、ミャンマー、イラクなどの名が 挙がっている。中国は72位といった具合で、代表的な汚職汚染国の部類にラ ンクされている。ちなみに日本は18位となっているが、このランクはよほど の改革がなされない限り、当分は変りそうもない気がする。

中国は今でも国を挙げて「反腐敗闘争」を展開しているのだが、2008年の公 式統計によると、汚職で処分された人は15万1000人に上っており、うち共産 党幹部は4960人という。

中国の汚職摘発には政治闘争や権力闘争が絡んでいるケースも多い。現在の 胡錦涛政権は比較的バランスしているように思われていたが、それでも時の 経過とともに、きな臭い情報が流れてくる。最近では胡錦涛の右腕として敏 腕を振るっている李克強に汚職捜査の手が伸びたという報道もあるが、これ らは現政権の共青団閥に対する上海閥の反撃だとする専門筋の見方もある。

前政権の江沢民時代(1993年~2003年)は中央においても、地元上海にあっ ても、上海閥が跋扈し、やりたい放題だったことは、北京に駐在していた私 も忌々しく思った。彼が第一線を退いた後、しばらくは党最高指導部である 政治局常務委員会の過半数を上海閥が占めており、彼は曽慶紅などの直属の 部下を動かし、上海にだけ特別な自由裁量を与えてはさまざまな開発を行い、 それが上海の不動産価格を吊り上げるなどの結果を招いた。

党中央で総書記となった胡錦涛もその間はそうした動きを見ているだけであ り、実際に司直の手が入ったのは2006年になってからである。それは上海事 件とも言われ、社会保障基金の不正使用によって上海市トップだった陳良宇 が解任・逮捕された事件である。また、上海市長だったことで日本にも知己 が多いとされていた黄菊(故人)は江沢民の腹心として中央にも上り、国務 院副総理(副首相)にまでなった人物だったが、汚職に関する捜査は黄菊夫 人や実弟など一族郎党にまで及ぶという徹底振りだった。

こうした一連の捜査も中央の指示なしにはあり得ず、考えてみればこれも政 争の一過程と見られる部分である。上海市トップだった陳良宇の解任に当た り、中央政府は北京から軍関係者を上海に派遣し、事件関係者の海外逃亡な どを阻止するという厳戒態勢をとったと言われる。

2006年末のことだったが、上海市内を歩いていたとき、ふと見ると露天の雑 誌コーナーに陳良宇事件を特集した雑誌が並べられていた。表紙は陳良宇の 顔写真だったが、ゴシックで飾られたサブタイトル「愛人12人、パスポート 16冊」の文字が特権階級のすさんだ行状を象徴的に示していた。

私にとって意外だったのはそうした党幹部のスキャンダラスな事件が雑誌に 掲載されて、街角の露天などで堂々と販売されているという時代的変化、す なわち中国の言論の自由はここまで来たのかという驚きにも似たものであっ た。

最近は広東省でも多くのトップが次々と逮捕されている。その目玉となっ たのが、昨年末に中国家電量販店トップ“国美電器”の創始者である黄光裕 が、北京で公安当局に身柄を拘束された事件だ。これに関連し、広東省政治 協商会議主席や深セン市長も汚職容疑で拘束された。

黄光裕は広東省の極貧農家に生まれながら、4000元から身を起こし、国美電 器を中国全土に店舗を構える大企業に成長させた立志伝中の人物。その過程 でさまざまな政治工作が必要だったことは想像に難くないことである。彼は 長者番付トップになったこともあり、出すぎた民営企業は狙われるという中 央の研究者の指摘もあることを考えれば、この事件が広東省を狙い撃ちした ものなのか、国有企業が民営企業の追い落としを策したものなのかは定かで ない。

小さなバックマージンの世界から政府を動かすほどの莫大な資金、とても比 べようもない次元ではあるが、底にうごめく中国社会の金の動きはその中に いる人間にしか分からない暗い影をもっているような気がする。

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