中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第32回)

2009.10.26

鳩山由紀夫首相は政権交代後の比較的早いタイミングで北京に飛んだが、これで日中の関係は普通の関係になるのだろうか?こうした疑問を持つのは、中国の政治経済の根底に「政経不可分の原則」なるものがあり、日中両国の経済関係、貿易関係はその時代の政治に翻弄され、長く厳しい不幸な時代を経験したからである。

日本の政治も経済に大きな影響を与える部分はあるが、国際的には日本の経済は一流、政治は三流と言われて久しい。一般には今の日本の繁栄は経済界のエネルギーによってもたらされたものであって、政治的な力が経済発展に作用したという評価はむしろマイナーであるような気がする。

しかし、政経不可分の中国に対峙するには、日本の政治的姿勢が問われる場面が常にあるわけで、歴史的にもある時代、日中間の経済的障害を日本の政治家の力で解決した事例がいくつか存在する。その嚆矢たるものは日中国交正常化に至るまでの紆余曲折の歴史の中にある日中貿易促進会議(1952年)だ。

日中貿易促進会議に参加していた政治家は、参議院の院内交渉団体所属の緑風会・高良とみ、帆足計、宮腰喜助などで、彼らは政府方針に反してソ連経由で北京入りし、第一次日中民間貿易協定に調印。国内で議論を呼んだ。当時の日本政府は中華民国政権を中国の正統政権としており、新中国に対しては全面輸出禁止などの敵対政策をとっていたからだ。

その後も1955年のバンドン会議で高碕達之助が周恩来総理から平和五原則に基づく日中国交正常化の提案を受け、片山哲・元首相が訪中するまでになったのだが、1957年に岸信介が首相に就任するや、新中国に対する敵視政策をとって、民間貿易協定を無視する動きに出たことから、貿易関係は停滞を余儀なくされるのである。

これに対して周恩来は政治三原則(中国を敵視しない、2つの中国を作らない、両国の関係正常化を妨げない)によって事態の収拾を図ったのだが、1958年に長崎国旗事件が起こったために日中貿易は完全に中断させられたのであった。

その後、日中間で政治家たちが表舞台で目立つようになったのだが、彼らは対中交渉を繰り広げ、政治を超越したところで貿易正常化に動いたのだった。そのバックには中国製品がなければ即、死活問題になるという分野の業界も存在したからである。こうした民間事情を背景に野党である社会党の訪中団が組織されたりする中で、石橋湛山・元首相が中国の「政経不可分原則」を確認。松村謙三、古井喜実、高碕達之助などの議員たちがそれぞれ貿易再開に向け動き出した結果、中国サイドから再び「貿易三原則」なる条件を引き出すのである。

1962年には当時の通産大臣である高碕達之助が全日空の岡崎嘉平太・社長などの民間企業トップを率いて訪中し、「日中総合貿易に関する覚書」を締結。ここで民間貿易が再開されるのである。これが中側代表の廖承志のL、日側代表の高碕達之助のTを取り、LT貿易と称されたもので、これにより短い間だが日中間の細いパイプが繋がったのと、われわれは認識している。

ところが1965年に佐藤栄作首相が「中国はアジアの脅威」と発言したことで両国間は再び緊張、交流の糸が切れてしまい、その直後の66年には中国に文化大革命が勃発したことから、日本側には中国敵視の風潮さえ見られるようになってしまった。

ここでも中国にパイプを持つ政治家が登場。1968年に古井喜実が訪中し、覚書貿易会談を通じて、覚書貿易(メモランダムトレイディング)の調印を行うが、これが通称MT貿易といわれるものである。

MTは内容的にはLTを受け継いだものだが、これは1972年9月の田中角栄首相の訪中による国交正常化の翌年まで続けられた。私は1973年末に北京飯店で行われたMT貿易の終了記念式典に参加した。歴代首相も中国との関係は重要視したが、中でも1979年、日本の160億円無償援助(北京での病院建設)に関わった関係で大平正芳首相は印象的である。

その後も中曽根康弘、竹下登など、多くの首相は中国との絆が深かったし、中国の評価も高かったように思われる。しかし、ここ暫くは日本の政治家として中国に物申す人は見当たらないというのが、私の周囲の方々のご意見である。人脈の国、中国に強い人脈を持つ日本の政治家が少ないことは、政経不可分の中国との往来の中では経済的にも何一つ利することはない。

民主党政権の中には一定の人脈を中国に有する政治家もいると聞いているが、かつてのように強力な人間関係を築き上げた人はいるように思えない。なぜなら人脈構築には時間が必要であり、人脈とは経験則から言うなら双方の立場を熱っぽく主張して論争を繰り返し、その結果として生まれる共通の着地点だからである。特に中国の場合に限ることはないが、主張や論争を激しく繰り返し、そのプロセスが人脈の前提となる互いの信頼感にも繋がるのである。

また、基本的には「相手の立場を思いやる精神」は必要で、それが外交上では妥協と揶揄されたとしても、俗っぽい表現ながら「懐の深さ」も必要である。私自身としては単なる「日中友好」を超越して、現実には「日中共生」の時代に入っているのだから、そんな時代に見合った日中政治家の交流を期待するのだが。

参考:
ウィキペディア「日中国交正常化」
劉徳有「日中関係秘史五十年 時は流れて」
宋堅之責任編集「忘れがたき歳月 記者たちの見た中日両国関係」

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