中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第33回)

2009.12.01

 この時期の北京は乾燥がはげしく、健康管理が難しい。その北京で11月1日と10日に降雪があった。そのいずれもが人工降雪であると判明し、北京市民も騒いでいるという。ちょうどこの時期に、私は北京に旅立つことになった。

 北京空港に降り立ったのは11月10日の午後10時過ぎ。こんなに遅くなったのは、到着が定刻より5時間も遅れたからだ。北京から初雪の一報がもたらされたのは11月1日。暖房の準備もされていない時期だから、市民は寒さに震えているという内容だった。この時点でこれが人工降雪だったと知る人はいなかったようだ。

 人工降雪という情報が広まったのは4日過ぎになってからで、北京市民は寒さに震えただけでなく、当局のやり方にも怒りを震わせたようだ。雪は10日から降り、11日の夜も続いた。今年2回目の降雪と思っていたが、市民の中には今年3回目だという人もいた。

 この降雪現象についてチャイナデーリー紙は、乾燥を防止するための人工降雪だったと報道した。確かに私も11月にこれほどの雪を経験したことはない。ただ、初雪ということに限れば、1987年10月末に北京で雪が降ったという記録はある。しかし、北京では通常雪などあまり降らないというのが通説であった。

 空中を舞う雪は、1970年代の初めに何度か経験した。当時の北京は乾燥が激しいうえに、気温も低すぎるから、日本のような“降る雪”ではなく、“舞う雪”なのだと教わったが、小さな粉雪が風もないのに空中を浮遊する様は美しかった。

 量的には路上に積もるまでは降らなかったが、公園の草むらや樹木の枝葉には舞い落ちた粉雪が身を寄せるように集まり、一端の雪化粧をしていたものだ。車のフロントガラスに激しく落ちる雪に気を取られていると、急に後輪が真横に滑り、車は思わぬ方向に傾き、運転手があわててハンドルを切りなおしたという記憶もある。

 その後、1990年代後半に北京で大雪を経験した。このときの雪は日本と同じで、湿ったボタ雪が地面に積り、家々の屋根を真っ白にし、数日にわたり消えることがなかった。北京でもこのような雪が降るようになったのは、地球温暖化のせいではないのか、と思ったものである。

 雪で不安になるのは、やはり車に取り込んだときだ。車に装着されたタイヤはスノータイヤやラジアルタイアではないから、当たり前のようにスリップ事故を起こす。それは今回の降雪でも同様で、ドライバーも雪になれていないから、なおさら危ない。街中総出の人海戦術で雪かきをしても、翌朝は道路のアスファルトがピカピカに凍って滑る。昼間になっても、太陽の出ない季節では道路表面の氷も溶けない。東京も雪に弱いといわれるが、北京の場合はその危険度において比較の対象にもならない。

 昨年の大雪は中国華北地区全体に及び、華南・華東地区でも降雪が観測されたという。今回の人工雪も山西省や陝西省に及び、各地の空港で離着陸に大きな影響が出た。その時期たまたま西安にいた友人は、空港で24時間も閉じ込められ、その日のうちに目的地に到着した我々を羨んだ。

 1日の降雪では北京路線の200便以上が欠航または遅延したとされるが、10日の降雪でもほぼ同規模のトラブルになっていたであろう。もともと中国では遅延や欠航の原因について、アナウンスはほぼ100%行われない。雪の影響ということは目で見ればすぐに分かるから、西安で空港に閉じ込められた友人も、特に怒った様子はなかった。これは中国だから仕方ないと諦めている部分もあろうが……。

 1980年代初めに大連から北京に向かって飛んでいたはずの飛行機が、天津空港に突然着陸したことがあった。これは積んでいた貨物の荷崩れで、操縦がやりにくくなったためという説明があったものの、天津で2時間以上待たされたのには驚いたものである。

 さて、昨年のオリンピック開催にあわせ、北京では事前に雲にミサイルを撃ち込んで、降雨のタイミングを早めたと聞いた。また、今年10月1日の国慶節は、建国60周年祝賀のパレードが催されたが、その日に北京から届いたメールによれば、人工的に雲を追い払ったため、朝から雲ひとつない快晴だったという。中国政府が市内の天候を自由自在に調整できるのは、科学技術の進歩を世界にアピールしていると言えなくもないが、その副作用はないのだろうかと心配している科学者もいる。大人しい北京人は静かに雪を掃いては寄せているが、この季節的に早すぎる雪を見ながら複雑な思いを拭いきれなかったものである。

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