中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第34回)

2009.12.29

 2009年は中国の著しい経済成長が世界的に注目されたという点で記憶に残る年であったろう。昨年末のリーマンショックで世界的規模の金融危機が叫ばれた中で、中国経済にもさまざまな影響があったであろうことは、同国の対米輸出額の大幅な減少だけでも分るのだが、一部外資系企業の撤退や閉鎖などの報道はあったものの、中国経済自体が不況に陥ったという声は聞こえてこない。

 台北で先ごろ開かれた経済関係の会議に出席し、馬英九総統や台湾の代表的経営者たちのお話もお聞きしたが、内容的には中国経済への依存度が高い台湾企業は、いずれも元気という印象が強く、昨年の会議における空気と大きく変っていた。発言の中には台湾からの中国進出企業は8万社だが、日本からの進出は2万社で、中国経済に与える台湾企業の貢献度がいかに高いかを誇らしげに語った経済人もおり、日本側経済人の多くは圧倒された感があった。

 台湾人の友人によれば台湾の中で今や独立を叫ぶ人はマイナーであり、多くは極めて自然に中国との融和政策を受け入れているのだという。我々はこれまで中国経済、台湾経済を区別して捉える方法が当たり前としていたが、目下の台湾では中国経済は台湾と一体化しているという捉え方が一般化しているようで、この1年間の変化の速さと大きさに驚いたものである。

 わたし自身は若いころから台湾、中国、日本それぞれの政治家、経済人の話を並列的に聞くチャンスが多かった。そして絶対的とは言えないにしても、国際的な観点から内容ある講話をするのが台湾関係者であり、中国の役人の話は紋切り型の観念的な内容であり、日本の経済人はミクロ的観点で終わっていたことに、いつも物足りなさを覚えたものであった。

 そうしたなかで最近は中国政府首脳の訪日も日常化したが、私が中国の発言レベルに変化を感じたのは、2000年の朱ヨウ基首相来日ころからである。その後、中国の首脳にも来日時に自らの個性や才能を大いに発揮する人もおり、中国の人材の層の厚さを羨ましく思ったものである。

 さて、先々週は中国のナンバー2と言われる習近平副主席が来日し、都内のホテルで盛大な歓迎レセプションが行われ、厳しい入場チェックと監視体勢の下、1000人を超える日本人、在日華人などが集まった。主催は毎度の事ながら日中友好7団体、在日華僑4団体であったが、主催者側を代表して歓迎の意を述べられたのは日本国際貿易促進協会の河野洋平会長だった。

 その際ふと思ったのは、これら団体代表者の大方が政権交代によって無冠となってしまったことであり、会場に姿を見せた親中国派の野党議員も何となく精細を欠き、かつての勢いが見られなくなったのは時代の流れであろうか。期待した習副主席のご挨拶は決まり文句の羅列で新鮮味に欠け、原稿に目を通しながらのものであって、迫力も全く感じられないものであったが、日中間にも中台間同様、さまざまな問題は含みながらも、取り立てて騒ぎ立てないようにしようという意図があったのかも知れない。

 昨年5月8日にも胡錦涛主席来日に際しての歓迎パティーにも出席したが、そこでも胡主席のスピーチには今回と同様に、特別のインパクトがある内容はなかった。歴史的には1983年11月に来日した胡耀邦主席が残した21世紀委員会や3000人青年交流など日中間の歴史に残るようなこともあったし、2000年11月の朱ヨウ基首相来日などは在日中中国の古い閉鎖的イメージを塗り替えるような活発な活動をしており、その点では明らかに今回とは異なる何かがあった。

 わたし自身も前線にいて忘れもしない時代、それは小泉政権時代靖国問題などをめぐって日中間は政治的には冷え切り、政冷経熱状態が5年余り続いていたのだが、2006年10月に安倍晋三内閣が誕生し、同年10月には初めての外遊先として中国を訪問したことで、日中間に存在した氷のような関係が急激に溶け始めた時期である。

 翌2007年4月の来日では温家宝首相が経済人との歓迎昼食会場で、得意の漢詩を披露した。彼は冒頭で「原稿は用意されているが、今日は原稿なしでお話したい」と前置きし、その人柄を髣髴とさせるようなアドリブ混じりの話だった。平易な言葉でしかもゆっくりと読み上げた一編の詩、彼が東京に着いたその夜ホテルで作ったという「和風化細雨、桜花吐艶迎朋友、冬去春来早」なる即興詩は時代を的確に反映した出色であるとして仲間内ではしばらく話題になったものである。

 中国や台湾の政治家・経済人の中には、政治や経済を越えた哲学的なところまで語れる人が少なくない。日本の政治家・経済人にも頑張ってもらわないと対等な政治関係・経済関係を築くことも難しいかも知れない。

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