中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第35回)

2010.1.25

 中国の変化は大きいと言われるが、身近にいる子供や孫の日々の成長が分りにくいのと同様に、現場にいては気づかないが、たまの訪問でその変化の大きさに驚かされるというケースが多いのも、近年の中国の変化の大きさと関係しているような気がする。なかでも昨年末に訪れた江蘇省蘇州市で見た光景は、その象徴的なもののように感じられる。

 蘇州には6つの開発区があるが、日本企業に馴染みの深い開発区は上海側に近い地域に造成されたシンガポール工業団地として知られる蘇州工業園区(通称“園区”)である。そこから西に向かって古い街並みをそのまま残した旧市街地を抜けたところに、1992年設立の蘇州新区と呼ばれる蘇州国家ハイテク産業区(通称“新区”あるいは“高新区”)があり、それぞれが独自の路線で発展を続けている。

 歴史的には新区の方が古い。一方、園区は1994年シンガポール初代首相の李光耀(リー・クアンユー)がその地理的条件に目をつけ、中国政府とジョイントで作り上げた工業団地である。金鶏湖畔に広がる美しい自然条件を活かした生産区、居住区、商業区を整然と分離、それを総合した形の設計になっており、その成立過程からトップには国務院の副首相クラスの人物が就くなど、比較的自主性を持った開発が進められてきたところから、数ある開発区の中でも特異な存在として見られていた。

 そもそも中国は国土の広さからしても物流システムの発展が追いついていないので、特に近年は販売・消費マーケットとして中国と捉えた場合、ハブ機能を有した大都市に近いというのが最大のメリットと言える。園区は中国トップの大消費都市である上海市から80キロメートルと近く、私は1990年代半ばに北京市で同開発区のセールスを受けて以来、この地区の発展には注目していた。

 今回の訪問で案内されたのは、特に発展目覚しい商業地区で金鶏湖の東岸に位置している園融時代広場。来年には上海からの地下鉄が開通し、その駅に直結するという地点に久光百貨(香港そごう系、4階建)がオープンしている。日本では先ずお目にかかれない贅沢な規模である。

 1階は国際的にも有名な一流ブランド店が勢ぞろい、地下の食品街には日本のデパ地下を彷彿とさせる惣菜屋が並ぶ。サイゼリア、牛丼のすきや、カレーのCoCo一番のほか、日系のうなぎ屋、焼鳥屋などが整然と連ねていた。

 トレイ盛でラップに包まれて販売されていた果物や野菜は日本のスーパーと寸分も変ることなく、むしろ商品の品種は日本のスーパーを遥かに凌ぐのではないかという印象さえあった。特に果物売り場にはドリアンが山のように積み上げられており、こんな果物一体誰が買うのかと目を疑ったが、トロピカルフルーツの集積地、香港そごうならではの品揃えかもしれないと納得した。

 私を案内してくれた上海駐在の日本人は「値段は街で買う倍はする」というから即座に売れるわけはないと考えたが、街の値段というのが路上の自由市場でのものを指すのなら倍もあり得るかもしれない。ただ、その後の調査で2~5割ほど高いということが分かった。オープン後1年を経過しているというから売れなければ倒産しているはずで、そうした食品を買える階層が居住している地域なのだと思うに至った。

 同行した行政の人に言わせると、新幹線が開通すれば上海から20分で来られるから、上海の消費者も当て込んだ計画なのだという説明があった。

 この一帯のショッピングモールにはウォルマートやユニクロなども入っており地元の客でけっこう賑わっている。夜になると人目を引くのはLEDで作ったという天幕(スクリーン)で、使用した超高輝度のLEDは2000万個以上、幅32メートル、長さ500メートルという世界最大級のスクリーン。その投資額1億元という。

 我々は時間帯が悪くて映し出されるという映像には出会えず、角度も悪かったことから、橋の欄干程度にしか見えなかった。劇場もあって、同行した中国人は「ここには玉三郎も来ました」と言う。商業が文化にまで及ぶという側面を見せられて、「ああ、これじゃ日本は敵わないな」と思わず呟いてしまった。

 つい最近まで単純な外資導入のためのツールでしかなかった経済開発区も、生産はもとより、その一部は今や経済、文化、商業などあらゆるものを内包した形で発展している。サービスもほぼ日本並という声も聞く。これを目の当たりにしての思いは、完全に日本を越える形で躍進しているというショックにも似た驚きであった。

 新区の友人からの情報では、園区の大和ハウスのマンションが今年完成すれば、さらに多くの富裕層が集まり、ショッピング、食事の中心地としての集客は一段と高まるだろうという。新区も日航ホテルの建設や日系スーパーの進出のほか、シンガポールのショッピングモールを真似たところが数カ所立ち上がっている。新区の最新マンション(スケルトン)は1平方メートルあたり1万元程度、これに対して園区は2~3割ほど高く、その差は益々広がって行くとの予測もあるそうだ。中国の発展はまだまだ道半ばなのだから、この先どうなるのか、まったく予断を許さないところまで来ている気がする。

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