中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第36回)

2010.2.24

 「中国社会のビジネス上の特徴は?」と問われて、とっさに出てくるのが人脈社会であり、ギフト社会であるというところだが、さらにそこから出てくるのが汚職社会であるという点であろうか。この3点はそれぞれが三角形の角であり、線で結ばれている。すなわちビジネスを推進する上で必要なのが人脈であり、人脈を形成する上で必要なツールの一つがギフトであり、それが極端な場合に結果として汚職につながると言った具合である。

 むろん汚職は権力と不離一体の関係にあり、多くの場合は中央・地方の行政に関わる役人であったり、税関や公安局のトップの座にある高官であったりするのが一般である。そして新中国になってからも根強く生き続けている黒社会(ヤクザ社会)が、行政に入り込んで人民の生き血を吸っている構図が浮かび上がるのだが……。

 新中国になってから歴史的にも有名な汚職事件は、その規模の大きさから言って1999年に福建省アモイ市で起きた頼昌星による「遠東密輸事件」だろう。首謀者の頼昌星は事件発覚直後に香港経由でカナダに逃亡。今に至るもカナダから戻って来ない。この事件、530億元という金額に加え、関わった政府関係者だけでも1000人以上というから疑獄事件としては未曾有の規模である。すでに判決は下されており、20人が死刑あるいは執行猶予付き死刑判決を受けているという。

 関係した政府高官は遠く北京の中央政府にも及び、政府幹部の名前まで挙がっていたのは驚きである。頼昌星は福建省の農民の家に生まれたが、家庭的に貧しかったため、小学校3年生までしか教育を受けられなかった。真偽のほどは明らかではないが、彼の人脈は地元ばかりか中央政界にも広く、かつ深く及び、それは政治家の親族にまで及んだというから凄まじい。

 そうした背景から、彼が帰国し、あらためてこの事件をめぐる裁判が始まると、多くの政治家や家族が法廷に引きずり出される可能性もあるとして、彼の帰国は中央政府の意向もあって先延ばしされているなどと言った噂もあるほどだ。

 2006年には上海市の書記だった陳良宇が社会保障基金を土地投資や企業貸付などへ不正流用したとして逮捕された。その息子まで逮捕されたほか、流用資金額も339億元と多かった。この事件は背後に党中央と上海閥との政治的権力闘争があったとも言われ、単なる経済事件ではないとする論評も見られた。

 だが、陳良宇が多数の愛人を持ち、複数のパスポートを所持しているなど党幹部の特権と腐敗ぶりを追及する報道も数多くあり、これらは高級幹部の絡む犯罪に共通して取り上げられる所業でもあった。私自身は中国の多くの行政幹部を友人としているが、幸いにも友人たちの中でこうした事件に巻き込まれた人はおらず、それは誠にもって幸いというほかないと思っている。

 一方で中国内では政府が幹部汚職に対して厳正に立ち向かっているという動きもあり、それはそれで党中央やマスコミでも大きく報じられる。そこには黒社会と絡んだ高級幹部の驚くべき汚れに満ちた実態が浮かび上がっている。この舞台にヒーローとして登場するのは米国留学組でプリンス党を代表するイケメン男、重慶市の薄熙来・市長だ。

 私が彼と遭遇したのは彼が大連市長だった1990年代と思う。その後、彼は遼寧省長から省の書記となり、その後も商務部の部長(閣僚級)に昇進。重慶市が直轄市となった直後に重慶市長となった人物である。直轄市となった重慶市には、中西部開発の拠点として中央政府から多くの資金が流れ込んだが、これは黒社会にとっては大きなチャンスともなったようだ。

 彼は次期総書記の有力候補と目されるやはりプリンス党の習近平・国家副主席の対抗馬の一人とも言われ、早くから中央入りを狙っていると言われた人物であった。その彼が2009年8月に地元の重慶市に古くから根を張っていたヤクザグループを一斉摘発し、1400人あまりを逮捕したというのだ。これらのヤクザグループには全人代代表と言われるような有力政治家も含んでいる。また、その他の逮捕者の中には複数の公安幹部や司法局長までもがいて、その親族も賭博場経営などで逮捕されている。

 この摘発は長期間かけて内偵を行い、一部の有力容疑者が出張中にその部下を逮捕して、前もって裏をとるなど周到な計画のもとに行われたらしい。何ともドラマチックな中国黒社会撲滅作戦である。この派手な捕り物劇は中央への返り咲きを狙った薄市長の野心から出たものだという話も何となく分る。だが、目的は何であれ黒社会撲滅はもっと広範に進めなければと思えるのだが……。

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