中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第38回)

2010.4.23

 先ごろ真っ昼間に銀座通りを歩く機会があった。ふと気づくと、背後から中国語が聞える。見ると、中国人旅行客の団体だ。ここは本当に東京の銀座通りなのかと疑いたくなるような光景。聞くところによると、中国人観光客用の大型バスが銀座通りの入り口に何台も横付けされるのは日常的という。

 昨年だけでも100万人以上の中国人客が日本を訪れたそうだ。最近はテレビなどでも中国人観光客の買い物の凄まじさを盛んに放映している。中国人の海外渡航はうなぎのぼりに増加しており、年間4000万人を超えるという。その数字から見れば、日本を訪問する中国人観光客の割合は必ずしも大きいとは言えない。

 最近の中国人観光客は銀座や秋葉原を好んで訪れるが、これは明らかに買い物が目的だ。ただ、こうした好んで訪れる場所も、その時々で変遷しているようだ。その昔は誰彼となく富士山やディズニーランドが一般的。それに新幹線で京都、奈良というのが定番であった。それが最近は「非誠勿擾」(邦題:「狙った恋の落とし方。」)という09年の正月映画の流行で、北海道に人気が集まっている。

 日本に戻った中国人の秘書からあらすじを聞かせてもらったのだが、それだけで大笑いしてしまった。その映画は「赤壁」(邦題:レッドクリフ)の興行収入を凌いでトップに躍り出て、DVDの売上高だけでも3億枚を超えた。このコミカルで若干ロマンを取り入れた映画の最終舞台が北海道なのである。

 盛り場、露天風呂、湖などのシーンには中国では感じられない奔放な異国情緒と北国の旅情をそこはかと漂わせ、そこに正月映画では定番の名優・葛優が独身中年男の主人公として登場。コミカルでうら寂しさをたたえた葛優の演技が観客を引き付ける。北海道の人々はこの映画に特別な期待などしていなかったかもしれないが、中国の北海道ブームの火付け役となった。

 一方、京都や奈良の日本文化の方はすっかり見捨てられてしまったのだろうか……。京都の寺に行っても中国語が聞えることが著しく減少した感がある。そういえば数年前に訪日団を何度か京都に案内したが、当時から「この程度のお寺は中国にもたくさんあるから」と言って、バスから降りようともしない中国人も少なくなかった。

 日本の外国人受け入れをめぐっては厳しい入管チェックがあり、今でも観光目的の入国ビザさえなかなか取れないのが実情だ。それでも国土交通省は日本の観光には力を入れており、受け入れ条件そのものは年々緩和されている。本国での所得という中国人に対する日本側の受け入れ条件も、徐々に緩和の方向に向かってはいる。

 だが、中国の知り合いから聞いたところでは、「中国人ならば年収25万元くらいの人はいくらでもいると思うよ。だけどね、源泉が1カ所というわけでもないから、証明するとなると複数のところから証明を取らなければならないし、大概は面倒だからそうまでして日本に行く気にはなれないと思うよ」ということだった。

 ビザ取得の厳しさは何時まで経っても変わらない。その理由はかつて日本に来てから逃亡して行方不明になる中国人が多かったからだ。わたしも以前は訪日団の招聘に関与したり、ホテル近くの繁華街などに案内したりした時などは、逃亡者が出ることを危惧して厳重な警戒感をもって行動したものである。だが、現在はそうした危険は限りなくゼロに近くなっているのではないだろうか?なぜなら中国の経済発展が目覚しく、両国を比べると明らかに中国の方が上位に立っているからである。

 金持ち中国人客を呼び込むために、さまざまな旅行商品が考えられている。例えば、日本でのガン検診とか、日本での先進的な美容とか、不動産や企業買収のための代表団受け入れなどは、すでに新聞などでも報じられている。

 これは中国の富裕層を狙った旅行プランなのだが、そもそも中国の富裕層がどのくらい存在し、彼らがどこに居るかとなると、まったく分からないのが現状だ。無論、中国人自身もそれを明確にできない。日本にいる中国人学者からお聞きしたのだが、都市部人口の10%とすれば6000万人であり、エルメスやブルガリの調査によれば800万人ほどであり、大雑把すぎて話しにならない。

 しかし、日本でゴルフプレーに興じ、帰りがけにそのゴルフ場を現金で買うという話を持ち掛ける御仁までいると言うから、その金持ちぶりは想像をはるかに絶するものである。ここまで来るとトウ小平の「先富論」が本当に正しかったのかという疑問を感じるのは僕だけではないだろう?  

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。