中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第39回)

2010.5.27

 先月号で中国の富裕層について言及したが、その後どこからともなく、そうした片鱗を漂わせた人たちが眼前に現れた。そのうちの一人は30代後半の男性で、奥さんと女性スタッフ2人を従え、業務出張のために来日した。

 中国での日常生活を聞いて驚いたのだが、週4~5日は仲間と一緒にゴルフ場通いという。日本に来た目的も仕事を兼ねてゴルフをエンジョイしようというもので、宿泊代は節約してビジネスホテルでもよいと言うから、富裕層にしてはアンバランスな金銭感覚という気がした。その点では富裕層とは言っても必ずしも派手ではなく、自身の生活そのものは合理的・経済的・質素にしながら、好きなことには金銭を惜しまず、徹底して楽しもうということなのだろうか?

 私はかつて「中国巨龍(チャイニーズドラゴン)」という週刊新聞のコラムを担当し、連載50回の執筆の中で中国社会の世相の実像や変化を紹介したことがあるが、当時は富裕層などという社会的階層は存在しておらず、むしろ役人社会や庶民の貧しさなどがテーマだったと記憶する。その中国巨龍の最新号で中国富裕層に関する紹介が一面トップを飾ったのだ。

 日本の経済界では中国富裕層を狙えというのが一つの風潮のようになっていながら、その富裕層はどの程度の規模でどこにいるのかということは、中国人の誰に聞いても確たる回答は得られず、極めて漠然とした階層でしかなかった。

 中国で有名な英国人フージワーフ氏による調査結果では、資産額が1000万元(約1億3000万円)を超える中国の富裕層は、全国で約87万5000人に上る。その平均年齢は39歳などと報告されているが、それ自体は何となく分かる範囲内のことのような気がする。そして、但し書きでこれは表に出た数字に過ぎず、底辺にはさらに多くの富裕層が蠢いていると言われると、数字そのものが怪しく見える。中国における調査の限界も見え隠れし、結局のところよく分からないという結論になってしまうのである。

 時を前後して、かつて北京での商社時代事務所に勤務していたエリート女子社員が、何年ぶりかに尋ねて来た。日本に留学、益々才能を磨いたのだろう、北京の大学時代の人脈をベースにビジネスを展開しているそうだ。今や日本の会社社長として日中間を往来し、貿易で成功したという。

 中国はまさに人脈、すなわち地縁、血縁、学縁をベースにした人脈社会が形成されており、こうしたものがなければ何もできないというのは、私自身の実感でもある。その女性社長によると、同窓生によるゴルフ基金会を組織し、その会員の拠出金を運用。そこから生み出された運用益で、会員は世界中でのゴルフ場でプレーを楽しんでいるという。今年は東京にメンバー30人が集まったそうだ。

 彼女もまた基金会メンバーで、東京に常駐していることから、今回は彼らの世話役として高級ホテルでの歓迎会やゴルフ場の手配を担当。歓迎会には政界から副大臣が3人も出席してくれたと、興奮気味に語っていた。会合は日本の能などもアトラクションに組み入れ、かなり派手なものだったらしい。

 これなども富裕層の集まりであり、米国から参加したメンバーの一人が乗ってきたチャーター機で、北海道のゴルフ場にまで行ったというのだから、恐れ入る。羽田の空港使用料は1万ドルだったが、高すぎないかと聞かれたものの、私はその返答に窮した。

 この基金会、今回の訪日メンバーは30人だが、会員数は69人に上る。彼らの拠出金は一人当たり800万円。今回訪日メンバーは30人だが、30人で計算しても拠出金は2億4000万円で、この運用益は年間でざっと2000万円以上にはなるから、訪問先では一流ホテルに泊まり、その国の実力者と会食し、ゴルフプレーだけでない文化的な交流活動もできる。

 この基金会、富裕層なら誰でも入会できるというのではなく、北京の某有名大学出身のEMBAに限られるというから、単なる富裕層の集合体ではなく、しっかりした基盤の上で団結し、相互に支えあうという機能も有している。この話をしてくれたかつて私の部下でもあったこの女性は、日本を舞台に基金会の仲間から依頼されたM&A案件をいくつもまとめたと言っていたが、なるほどそれが基金会に拠出する源泉にもなったのであろうし、限られた同窓間の信頼関係で難しい国際ビジネスもスムーズに進むのだという現実を知らされた。

 結論から言うなら中国の富裕層はゴルフ場に行くと見つかり、そこを舞台に仲間内でビッグな取引を展開しているという中国社会らしい事実が存在している。

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