中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第41回)

2010.7.28

 かつて政治と経済は不可分と言っていた中国だったが、最近の中国・台湾間の経済交流を見ると、政治的に敵対している関係とは思えない動きが顕著である。この稿で政治問題を語るつもりは毛頭ないが、例えば台湾を説く場合などにはそれなりの気遣いは必要なのだろう。

 特に公的な立場で台北を訪問したときは、日本人として「二つの中国を認めない立場」で中国をどう表現したらいいのか迷うのは毎度のことである。台湾では今でも「中華民国」という表現は一般であり、来年は「民国100年」を祝うイベントを準備中だと聞いた。その一方でそのイベントに対して「中国政府はどんな反応をするだろう?」ということも台湾当局としては気になるようだった。

 先週、台北で親しい台湾経済人トップと会う機会があった。彼らはそこで異口同音に台湾経済は10年ぶりに上向きに転じていると語った。確かに数字的には貿易だけでも大幅な拡大を見せている。しかし、親しい友人の忠告では、必ずしもそうとはいえない部分もあり、政治的な発言だから冷静に見たほうがいいという。

 その後、現地の中小メーカーの経営者にも聞いたところ、「景気は悪くないね」ということだった。その景気は近年来の中国の経済的好況に支えられたものなのだろう。先月末に海峡両岸経済協力枠組み取決め(ECFA)が中台間でまとまり、中台間の貿易自由度は一層拡大の方向に向かっている。

 また一方、日台間の方は09年ベースで500億ドルあまり。日本からの輸出が輸入を凌いではいるが、貿易や観光の面で日本が台湾経済に貢献している様子は見当たらない。現地交流協会の資料によれば、台湾人の対日本感情は極めて良好で、最も好きな国は日本と答えている台湾人は52%と高い。だが、「台湾が最も親しくすべき国は?」という質問に、「中国」と答えた人は33%、「日本」と答えた人が31%というデータは、台湾のおかれた何となく微妙な立場を感じさせる。

 その昔、台湾経済は米国依存の強い時代を長期にわたって続けていたのだが、それが今大きく転換し、少なくとも経済的独立性を強めているような気がする。私が台湾を訪れた30年ほど前、台湾企業の多くは純粋な家族経営が中心で、経営に親族以外の人間が入る余地は極めて限られていたことから、台湾の大学を卒業した優秀な若者の多くは台湾内では将来的ビジョンを持ち得ず、米国に渡り自ら立身出世の道を選ぶのが通常のパターンであった。

 しかるにその後、米国での生活は夢見たものとは、ほど遠い過酷なものであり、失意のうちに帰国する青年も目立ち始めたことから、1973年に台湾当局は彼らを受け入れるためという意味もあって、台湾中部の新竹県に財団法人・工業技術研究院を設立し、頭脳流失を防ぐ手立てとしているという話を聞いたことがあった。一般に言うインキュベーター(孵化器)機能を有した政府機関を作ったのである。

 今回は縁あって新竹県に行き、工業技術研究院を訪れるチャンスに恵まれた。副院長の曲先生のお話では、同研究所は先端技術の研究開発などで輝かしい成果を挙げているそうだ。組織としては現在1万7637人の研究員・スタッフを擁し、院内のサイエンスパークだけでも6000人近い研究関係者がいると聞いて驚いた。

 展示場で同研究所の具体的成果も拝見した。研究所発の特許件数は1万件弱に上る。人材育成の方も盛んで、台湾主要企業に65人のCEOを輩出するなど、台湾の技術水準を国際的にまで押し上げた源泉がこんなところにあったとは、これもちょっとした驚きであった。日本にも筑波に似たような機能を有した機関があるのだが、台湾のこうした政策が台湾自体の経済力を向上させ、個人の可処分所得増大にもつながってくるのだろう。

 日本政府は先ごろ中国観光客のビザ制限を緩和した。中国人客の数的拡大を日本経済の再生に結び付けようとしているが、昨年中に日本が受け入れた中国人観光客は100万人だった。中国13億人の中の100万人なのだが、これに対して台湾からの観光客はほぼ同レベルの100万人。台湾の人口は2300万人に過ぎないのだから、同じ100万人と言っても、その違いは大きい。

 中国への投資件数は日本からが2万3000社、台湾からは8万社と言われるが、これも人口を分母にした場合、台湾の方が断然高く、台湾の経済力がいかに大きいかを裏付けるデータである。  前述の日台経済人が集まった夕食の際、台湾側経済人がたまたま話題にしていたのが自家用ジェットのことだったが、私の両サイドの方々はいずれも自家用ジェットの持ち主だった。日本側代表はいずれも財界を代表する方々だったが、経営者としては雇われ人だ。これに対して、先方は皆さんオーナー企業経営者であって、ここにおのずと個人的経済力の差が生まれるのだろう思いつつ、そのレベルの違いの大きさに愕然とするひと時であった。

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