中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第43回)

2010.9.27

 日中間はしばらく小康状態を続けているかに見えたのだが、9月7日尖閣諸島南端海域で発生した中国籍漁船の日本巡視船の海上追突事件で漁船の船長を海上保安本部所属の巡視船が漁業規制法違反の疑いで逮捕し、乗組員を石垣島に連行、事情聴取したことをきっかけに再びギクシャクした状況となって来た。問題は1895年に日本が領有を閣議決定した海域をいつの間にやら中国が領有権を主張し始め、中国漁船などが漁獲操業のために立ち入るようになったことにあるのだが、これも中国の資源エネルギー政策に係わる方針と深く関係しているのだろう。1969年、この海域周辺の海底に豊富な石油資源が埋蔵されているという国連の調査結果が出たことで中国政府がこの海域の領有権の主張をし始めたとされるが、中国はこれまで石油、天然ガス資源に対しては極めてナーバス且つ積極的戦略をとっており、南沙諸島海域でも周辺国々とのトラブルは相次いでいる。

 先日偶然のことながら日中石油ビジネス30年という業界の大先輩にお会いする機会があったが、彼は90年代日本でも話題になった新疆タリム盆地の石油開発に関係していた人物でもあり、黒龍江省の大慶油田石油の対日輸出にも関係していた人である。その彼は今現役を完全に退いているが、彼は中国育ちの日本人で、日本語・中国語ともに母国語同様に駆使することが出来、大戦時は解放軍に参加、兵役に従事した経験を持ち、周恩来首相などとの直接的接触もあったという日本でも稀有な経歴をもつ方である。その彼との会話の中で意気投合した点は中国での石油資源開発の難しさであったが、彼自身も90年代半ばタリム盆地の石油鉱区の国際入札に日本企業数十社を引き連れて参加したのだという。97年に日本の石油公団及び石油開発企業が鉱区の一部を試掘したのだが、商業ベースには乗らないとして撤退せざるを得なかった。その後も鉱区の入札は複数回行われたようだが、いずれも商業ベースに乗るような量的な石油が確保できず、外資は全て撤退したと言われる。生産は現在でも中国企業によって続けられているのだが。80年代私の香港時代には中国にはいくつかの海底油田開発プロジェクトがあった。私はその内の渤海湾油田と南海油田の二つに関係したのだが、そのいずれもが当初の情報とは裏腹に量的な面でビジネスラインには乗らなかった。特に南海石油プロジェクトの現場は深セン南頭地区であったので香港駐在であった私は何回も現場近くまで足を運び、海上のリグに関係者を運ぶためのヘリコプター会社設立プランに参加したりしていたのだ。しかし結局石油はわずかしか出て来ず、いつの間にかこのプロジェクトは消えてしまった。昨年当時の現場近く(深セン郊外の南山区)に行って見るとその当時現地で権勢を誇っていた石油開発会社は現名のまま不動産会社に変身しており、同地区は高級高層マンションが林立、発展した深セン市街地に通うエリートたちの高級居住区となっていたのだ。

 さて、尖閣湾周辺海域での石油・天然ガス資源探索にしても未だ経済性が保証されている訳でなく、今後如何なる展開になるのか全く不明なのである。トウ小平氏が日中平和友好条約批准書交換で訪日したのは78年10月であるが、その折彼は「この問題は一時棚上げしても構わない、次の世代は我々よりもっと知恵があるだろう」として、尖閣の領有権問題を避けた。ということは「石油開発を将来に亘って皆で協力してやったらいい。石油が本格的に出て来た時点で、その分け前を話し合ったらどうなのか」という意味合いもあったのではなかろうか。経済ベースにのる石油・天然ガスが出るかどうか分らない段階で、占有権を主張しても始まらないのにというのが長年石油ビジネスを経験した前記大先輩との共通した見解であった。

 更にこの事件をきっかけに北京や上海でお定まりの反日デモが始まったが、中国社会は目下定職を持たない人民も多く、社会的にも現状打破を狙ってイライラを募らせている階層も少なくない。日本大使館前のデモ隊の規模は決して大きくないのだが、メディアを通じて報道されるとそれがメジャーな動向のように感じられる。思い起こせば2005年の反日デモのときも一部の動きが中国全土を象徴するがごとき激しいデモであるような報道が連日なされたものだが、これは現地発メディアの宿命であって、これを受け取る我々サイドは真実を冷静に見なければならない。外交部のスポークスマンの政治的発言は厳しいものを感じるが、時代的背景もあってか中国政府は表向きでは国内での激しい反日行動にはむしろ批判的な態度を示している。背後には日中間の経済交流がここまで拡大している現在、日本に反中国的機運が高まるのは得策でないという政治的判断も感じられる。

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