中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第44回)

2010.10.27

 尖閣諸島で起きた中国漁船の衝突事件で、ビジネス上でも通関手続きが厳しくなったとか、レアアースの輸出規制問題などが騒がれた。加えて中国側から閣僚級幹部の日本側との接触制限や中国企業の大型旅行団のキャンセルなど、次々と矢継ぎ早に発せられた中国政府の厳しい対日措置により、日本側のビジネス現場でも緊張感が続き、とり敢えずの出張や旅行を取り止めるなどの動きが目立った。そのタイミングでフジタの社員4人が石家荘市で逮捕され、市内のホテルで拘留されたりしたものだから、中国に対する印象はますます悪化の一途をたどった。

 その後19日間の拘留を経て漁船の船長が解放されて、情勢はいくらか和らぐと思われたのだが、16日には中国内陸部の成都、西安、鄭州、綿陽、武漢などで反日デモがあり、またしても暗い気持ちに逆戻り。ビジネス現場にいる日本人なら「またかよ」とうんざりした気持ちでTVニュースを眺めたことだろう。

 その発端が尖閣諸島事件だとしても、スローガンは「日本への観光旅行はやめろ」だとか「地球上から日本を葬り去れ」とか、その内容の幼稚さに、あらためて彼らの水準の程度を感じる。デモ隊の一部が暴徒化するのも毎度のことながら、これを抑えきれない中国当局の管理体制の甘さが何とも情けない。デモ隊の中心メンバーは地域的に見ても反日というほど日本につながりがあるとは思えず、ただただ安定した立場を失い、社会から疎外された不満分子なのだろう。彼らにはたぶん尖閣諸島がどこにあるのかも分からないのではないか?デモの翌日に西安から戻った友人は「デモ???何もなかったよ」の一言。これも毎度のことである。

 それにしても中国外交部のあの高飛車で傲慢な態度はどこから来ているのかという質問は多い。テレビニュースでもよく使われる言葉として「激しい中国世論を考慮して」というのは一般的な表現だが、中国政府が強硬な外交政策をとらざるを得ないバックグランドとは何なのか?平和的互恵関係なる前提があるのなら、もっと冷静に選ばれたコメントが好ましいようにも思うのだが。

 最近の中国政府が対外的に高圧的な理由は自国の経済力アップがバックにあるといわれるが、それ以上に共産党治世への求心力の落ち込みに対する危機感の表れと見る向きもないではない。このところオリンピック、万博と立て続けに民族意識を高揚させるイベントを開催してみたのだが、彼らの目指した党中央への民衆の結束は必ずしも思うようには進んでいない。むしろネット普及や海外情報などにより、国内は民主化を押し上げる方向に進んでしまっているのである。かつて私が中国に行き始めた70年代初め、北京におけるスローガンは「穴をほれ」(防空壕を作れ)であって、当時の仮想敵国はソ連であった。その後も米帝国主義、日本軍国主義などを宣伝し、国民に危機感を持たせながら頑張ってきたのだが、1989年の東西冷戦終結後は仮想敵国戦略が使えなくなった。民主主義だけでこの大国を治めることの難しさを否定するつもりはないが、それにしても隣国の日本をして中国に警戒感を抱かせるような風潮を作り出すような政府発言はいかがなものであろうか?

 当時はまだ富裕層も出現しておらず、党中央の指示は絶対的なものとして民衆の多くはそれに従うことに特別な抵抗感を覚えなかったようだ。78年の改革開放で中国社会と中国経済は大きな転換期を迎えたはずなのに、国家の体制だけは従来のまま放置して走り続けること20年あまり。確かに中国は経済的には豊かになったとは言うものの、一方で国内には地域的経済格差の拡大など矛盾が年々顕在化しているのである。共産党員7800万人といえども数から見ればメジャーという訳でもなく、一党独裁そのものは国際的に通用し難くなっているようにも思われる。

 そのタイミングで出てきたのが劉暁波氏へのノーベル賞授与であり、これに対する中国政府の公式対応がこれまたあまりに頑なことに、違和感を覚えた外国人は少なくないだろう。そんな中で中国外交部が意地になって自らの主張を行ったとしても、国際的な理解を得ることは難しかろうし、逆に政治体制の後進性を自ら露呈してしまったようにさえ思える。

 これらの一連の事件を目の当たりにして、これまで彼らが言い続けてきた「中国を一つにまとめるには民主主義だけでは難しく、共産党の一党独裁の道しかないのだ」という主張が単なる身勝手としか感じられず、必ずしも説得力を持つまでに至っていない。日本外交の稚拙さも目立った今回の事件だが、外交に関してだけで言えば周恩来、トウ小平の時代を懐かしく思うこの頃である。

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