中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第45回)

2010.11.24

 このところ中国では進出日本企業の多くが税務当局の攻勢に辟易としているということを度々耳にするようになった。中国の税収は今年100兆円を越える見込みというから、日本の税収37兆円に比べるとほぼ3倍の税収ということになる。 一方フォーブスによれば重税ランキングはフランスに次いで2位に躍り出ているというのだが、人民にしてみればそれほど税収が多いのなら、減税すべしという声も無いではないが、我々の周囲、即ち中国の企業現場での議論の中には重税に喘いでいるという話はとんと出て来ない。むしろ納税を如何にして少なくしたかとか免れたかという話題が中心なのは、この国には納税意識そのものが極めて希薄だという現実である。

 私が税務局と対決したのは1981年の4月、大連に事務所をオープンして間もなくのことであった。その前年、即ち1980年、天津駐在のときは個人所得税徴収の制度は無かったのだが、その翌年4月突然大連事務所に税務局員は二人の訪問を受けたのである。彼らは北京で徴税に関する研修を受けたときに作ったと思われるメモ帖を見ながら、納税手続きと納税義務に関する規定を長々と説明したのだった。説明は彼らが徴税事務そのものに不慣れで、むしろ遠慮がちで朴訥とした感じを受けたものだ。私は「納税が義務だというのなら、中国政府は納税者である我々外国人をどのように保護してくれるのか?」と聞いた。更に続けて「私は赴任してまだ1ヶ月も立っておらず、事務所としての収入も無い身で金は無いが、ビジネスの見通しがついてから払うというのはどうだろうか?」と提案したものである。その日は要求された書類に数字などを書き入れ、彼らはその書類をもってそのまま帰って行ったのだが、一月後再び現れ、「ご商売は如何ですか?」と切り出して来たのである。当然のことながら商売はまだスタートしたばかりで事務所としての収益見通しが着くまでには到っていなかったが、「あなた方の任務は我々から金を取ることだろうが、何もしてもらえないのに金だけとられるのは納得できない」と言って突っ張り、日本国内での収入も含む総所得対して税率45%などはばかげていると抗議、さればということで納税したらビジネスに対するサポートをしてもらえるのかと迫ったところ、どんなサポートを希望するかと言うので「わが社が扱っているコピーマシーンを購入してもらいたい。今回展示会用に20台のサンプル機を日本から持ち込むが、あなた方のためにサンプル機1台は確保しておく。納税は外貨なのだから、それを受け取る税務局としては外貨の使用は認められるだろう?税務局にコピーマシーンは欠かせないOA機器なのだから」と言ったところ、外貨使用許可はどのようにすれば取れるのかという質問を受けることになったのだが、結局大連税務局は1台を買ってくれたのだった。

 中国の税務局もそんな可愛い時代があったのだが、それから30年中国の税務局も大きく変ってしまった。税務局員の意識が高まらない内に税制だけが一人歩きして、この世界でも「法より人」になってしまっているところから様々な矛盾や問題が次々と出て来るようになった。最近帰任した外務省高官の内輪話の中に進出日本企業が中国国内で1年間に納める企業所得税は数年前だが800億円以上でこれは当時日本が中国に出したODAの額に相当すると聞いて驚いたことを思い出す。いずれの国も大差ないと言われるところは国は税金を取りやすいところから取ると言う現実、中国の場合はまさにその典型のように思われる。日本企業はそれが個人所得税であれ、企業所得税であれきちんと納めるというのが大勢であり、税金は必要コストという思想がほぼ定着しているので、最も取りやすい相手なのだ。特に台湾企業などは税金を払わない企業が圧倒的に多いそうで、その殆どが税務局員との馴れ合いで納税から逃れているようである。日本企業の中にも税務局員との繋がりが希薄なところは時として法外な納税金額を要求され、困った挙句税務局員を食事などに誘い彼らと繋がりを作ると納税額が100分の1になったなどという例は枚挙に暇ない。最近中国人の友人が語ったところではタバコ2カートンで納税額は10分の1になったという話も聞いたが、中国社会これを正すのは並大抵のことではなさそうだ。

 にもかかわらず中国が納税額で世界の上位にランクされたのはなぜだろうか?ここに登場するのが中国当局が必死に否定する不動産バブルによるものなのだ。北京などでも税収の半分は不動産関係と言われるが、バブルを抑えるために政府が考え出した様々な税金が大いに寄与しているようだ。関係者によれば関連の税金は所得税25%をトップに累進課税で次々と課せられ、項目だけで60種類を超えると言うのだから、この構造を改めない限りこの矛盾はどこかで暴発する。この10年間で不動産は30倍になったのだから、実態はかなり危ういと考えるべきで、納税額が増えたと言って喜んでばかりはいられない実情をもっとよく見なければならない。

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