中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第46回)

2010.12.27

 中国人富裕層の実態はなかなか掴みにくい。しかし最近、一人の中国人女性実業家とその一行に同行して、その実態の一部を垣間見ることができた気がする。

 かの女性実業家は16~17歳の時にアパレル工場の女工さんから身を起こし、自ら独立アパレル工場を経営することになったという。生まれは中国東北の片田舎にある農村で、家も貧しい農家であった。そのために現実の生活は苦しく、食べるものにさえ事欠く日常で、ひもじさに耐えて過ごした少女時代であった。お腹一杯食べたいというのは極めて現実的ながら切実な夢でもあった。

 中学卒業とともに都会に出て女工となってからも決して楽な毎日ではなかったが、それでも農村時代に比べると、生活そのものはいくぶん改善したように思われた。それでも十分な生活には程遠いもので、特に衣料品の生産に携わっていながら、娘らしい派手な服装は夢のまた夢であったようだ。

 流行の外国ファッション雑誌なども目に入るようになり、女工の身ではあっても何となく可能性を感じられる世界を見たような気がしていた。縫製工だった彼女に資金を出してくれる人も居なかったが、当時お付き合いしていた男友達の応援もあり、中古のミシンを手に入れたことが発端で、自らデザインの勉強も始めたのである。

 彼女は現在57歳だが、地元に12の企業を有し、自ら集団公司の董事長を務める。こんな彼女だが、事業家としての出発は前述のアパレルからであった。中国の改革開放政策にあわせて外資との結びつきが強まり、事業は多角化し、国際化して行った。手にした市内の不動産は面白いように値上がりし、それを転売すると大儲けできた。自ら地元に工業団地を造成して、企業誘致にも手を染めた。

 しかし、不動産は自分の本業とするものではないとして、数年前も工業団地だけを残して、不動産からは完全に手を引いた。自ら設計して自社ビルも建設、ビル内には関係会社以外のテナントも入れた。

 それにしても彼女をしてここまで跳ね上げたものは何だったのだろう?彼女の言葉もまた誠に謙虚そのもので、仲間たちの支援があればこそというものだった。「そこに仲間がいる」と言っても、仲間のすべてがいい仲間というわけでもなかったのだという。

 過去在日韓国人を信用して3000万円あまりを出資したのだが、最終的に戻ってきたのは900万円だけで、在日とは言え韓国人には警戒感を持つようになったのだそうだ。「韓国人でも日本に居る韓国人なら信用してもいいと思った」からということ。彼女はどこまでも日本ファンだったのである。従い今までのところ彼女のお相手はその多くが日本人、日本企業と聞いて一先ず安心したものである。

 その企業群は本業でもあった繊維関係から食品加工、化学品、建材までの広がりがあり、大なり小なり日本と関係があるようだ。私が間接的ながら関係している分野は食品加工だが、これが冷凍餃子である。むろん安全そのものの餃子なのだが、石家荘の毒餃子事件以来、日本向けの餃子販売は三分の一まで大幅に落ち込み、彼女はこの事業を中国で続けるのは難しいと考えている。そして日本製餃子の生産はできないのだろうかと考え、日本での工場探しに踏み切ったことから、日本への往来も増えている。

 一説には7800万人と言われる富裕層だが、現実にはその数倍存在すると言われる。しかし共産党一党独裁の社会においては中央なら党中央、地方なら地方行政との密接な連携の下に蓄財がなされているようだ。日本なら犯罪の範疇に入ると思われる企業と政府の金銭上の癒着は今の中国社会では極めて自然なのである。

 彼女は当該地区の人民代表にもなっていると聞いた。そこで、どうしたら人民代表になれるのかと尋ねたところ、優良企業を多く持っているからという回答だった。優良企業に仕立て上げるのはどうしたらよいのか?彼女の答えは労働者を大事にすることだと自信ありげに答えたのだ。自らが貧しい階層の出身であったことと無関係ではないお答えである。明らかに日本の大企業の社長のお答えとは大違いである。

 その彼女らの日本おける所作を見ているとホテルに到着してチェックインが終わるとすぐに近くの環境調査と言って外出、ホームセンター、ドラッグストアー、スーパーマーケット、コンビニなどをくまなく廻り、手当たりしだいに買い捲るのである。お孫さんのために粉ミルクをケースごと買うだけでなく、自分のための白髪染めや化粧品、ご主人の趣味だろうか庭弄りに使う箭手バサミなど雑貨と思しきもののほか、スーパーやコンビニではアンパンや飲料などを買うという具合である。

 日本でレンタルした車は買い物商品で満杯になり、人は荷物の中に小さくなって座るのだが、この光景がいかにもお似合いに見えるのはなぜなのだろう?

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。