中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第48回)

2011.03.02

 このごろ日中間の国民感情調査なども頻繁に行われるようになったが、こうした調査はどこまで当てになるのだろう。なぜなら先ごろのように尖閣問題などが報道されると、両国ともに相手を非難する対象として見るのは仕方ないことだからだ。かつての靖国参拝問題でもそうだったが、調査結果は必ずしも本質を正しく反映したものになるとは限らない。

 現実にはサイレントマジョリティも多く存在するわけだから、調査結果が即真実と決めつけてもいけない。さらにこの種の調査は最初からその結果について予想が立っているのだから、調査のタイミング自体が問題だと思う。その背後に政治的背景があっての調査であれば、それはそれで問題である。

 最近参加したセミナーで一人の日本人パネラーが、「先のノーベル賞で劉暁波氏を受賞者に選んだノルウエーに対し、中国人はみな怒っている」と表現した。だが、冷静に考えると、それは真実を歪めているとしか思えない。これは中国共産党と国民が一枚岩だと思っている発言者の思い込みから出たものだろう。現実にはみなが怒っているはずもなく、常識的には政府の対応に反感を抱く国民も数多くいたと見るべきであろう。

 聴衆の前で物言いをすると、時として表現が歪んだりするが、テレビなどのコメンテーターの発言などには、こうしたものが多くある。国民感情の調査結果などを数字だけで判断するのは、こうした背景を考えると難しいのである。

 ブログなどでは、中国の世論調査はまったく信用できないという書き出しで始まるものもある。しかし、そもそも中国の世論調査が日本と同じような発想で行われていると見ることが間違いなのだ。中国の世論調査は多くの場合、政治的意図を持って行われる官営調査であり、それによって世論の実態を調べようとするものではない。国情・体制の違いから、それは仕方ないと考えるべきであろう。

 それにしても再び冷え切ってしまった日中関係。それは単に世論調査で現実を調べても解決には至らない。それでは日中間に横たわる障害を乗り越えて回復させる道はあるのか?

 つい数年前だが小泉元首相の靖国神社訪問ですっかり冷え切ってしまった関係を2006年10月に就任したばかかりの安倍元首相が電撃的に訪中して事態をひっくり返した。その直後の2007年2月には温家宝首相が来日し、ニューオータニで行われた歓迎宴に私も出席した。その席上で温首相が述べられた挨拶は誠に臨場感あふれたものであって、用意された原稿を見ながらそれを棒読みする日本の政治家との違いをまざまざと見せつけられただけではなく、日本の政治家には見られないインテリジェンスを感じたものだ。

 その場で温首相からあふれ出た漢詩は「和風化細雨、桜花吐艶迎朋友、冬去春来早」という簡単なもので、「昨夜の日本到着後、東京のホテルで作った」という。ゆったりと原稿など一瞥することもなく、30分あまり話し続けたのだが、誠に爽やかでスマートな語り口だった。さすが13億人の頂点に立つ人にふさわしい風格を漂わし、私などはすっかり彼のファンになってしまった。

 中国の歴史教育ではいまだに日中戦争を題材に反日教育を続けていると言われる。だが、江沢民時代にその部分が強調されたかもしれないが、在日留学生などに聞くと、部分的に鮮烈な印象はあるものの、総じてあまり思い出として残っていないようである。問題は「反日」イコール「愛国」という風潮であり、この部分は政治、外交の分野で改善に向かって努力してもらわなければならないだろう。

 ここで考えなければならないのは、行き着くところ中国との政治的人脈の構築である。日本政府には与党、野党に拘わらず中国に強い人脈がないというのは困ったものである。私と親しい中国人の一人は、その点を悲しい現実と捉えている。

 小沢一郎氏は2009年11月、140人の議員を引き連れて中国を訪問し、現地で彼ら一人ひとりと胡錦涛主席とのツーショットを撮らせたが、何ともばかげた日本の議員という印象を与えたことだろう。ちなみに、これをアレンジした中国政府のスタッフはその直後解雇されたという。

 微妙な日中関係であるにもかかわらず、日本政府は大使として民間人を派遣した。これについて日本通の中国人に聞いたところ、日本は中国との外交関係を軽視したゆえに、敢えて外交の専門家を避けたという捉え方をされているそうだ。

 経済外交という言葉が飛び交う昨今だが、日本は国交正常化以前から民間が貿易を通じて友好を維持しており、なにも今に始まったことではない。日本の友好7団体は中国政府代表団の歓迎レセプションを共催するが、これら団体のトップがほとんど野党関係者であることについて、来日した中国首脳はどう感じたのだろう。

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