中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第50回)

2011.04.26

  震災の爪あとはあまりに残酷で語るに尽くせないが、海外の反応は放射能汚染の方により敏感で、日本列島そのものが放射能に汚染されてしまっているという極端な捉えられ方をされている。何とも収拾のつきにくい副作用が出てきてしまっているようだ。

 地震発生の翌々日ごろから日本を逃げ出した在日中国人は1カ月を過ぎて若干冷静さを取り戻したようで、一部は戻ってきてはいるものの、まだまだ大勢には至っていない。先週都内の某私大の教授にお会いしたら、留学生が戻ってこないので新年度の授業再開に支障が出ていると言うし、私の虎ノ門オフィス近くのコンビニからは中国人のアルバイト店員が姿を消してしまっている。先週土曜日に予定していたNPO総会の会場だった行きつけの中華レストラン(渋谷)は、店を閉めているわけでもないのに休業の看板を出していた。いずれも中国人が帰国したまま、未だに戻ってこないことによるものであろう。

 家族ともども急遽帰国した中国人は、両親と幼子を北京に残して3月末には日本に戻って来たが、仕事の関係でやむをえない帰任であり、家族からの激しい反対を振り切っての来日だった。報告によれば、これまで日本直送の魚を売りものに集客していた北京市内の日本料理店も、翌日には店先からニホンの二の字もなくなり、この店は日本からの食材は一切使っていないという張り紙を出したそうだ。

 これには流石の北京市民も呆れ顔だという。だが、彼らはそれを頭から信じているわけでもないだろう。店側の言い分はあまりにも見え透いている。また、上海の某有名日本食チェーン店などでも、今ごろになって「我々は震災前から日本からの食材は一切ない。すべて大連からのものであり、一部にノルウェーからのものもある」とか、「我々は以前から日本食材を使ったことがない」などと言い始めている。

 「日本からの直送品だから高価なのだ」という以前の言い分は、もはや成り立たない。だが、一人あたり平均消費160元という値段は従来と変わらず、妙なことと感じている市民もいるようだ。中国で見かける刺身といえば、その代表格は従来から鮭(サーモン)だ。その最大の供給国はノルウェーだから、その部分では嘘とも言い切れない。しかし、これが和牛となってくると、店側の説明も苦しくなる。

 中国の「毎日経済新聞」(2011年4月7日付)によると、上海の代表的日系ホテル「花園飯店」の日本料理店でさえ、「食材はノルウェー産と大連産に変えたが、日本からは目下のところ供給もない。また黒毛和牛はこれまでも日本から輸入したことはない。和牛を大連で種付けして、日本の技術で育てたもの」という。待てよ?これまでは純粋和牛として高額な料金を取っていたんじゃないの?

 日本からの牛肉輸入は禁止されており、そもそも純粋和牛などある訳もない。それなのに市場には和牛がけっこう出回っていた。だが、それもここに来てやっと真実が明らかにされたようだ。さらに食品業界の権威の言葉として、中国内の黒毛和牛、神戸牛などはすべて国産であり、一部に純粋な和牛があるとしたら、それは日本人のボスが日本から持ち込んだもので、量的にはわずか。とても大型ホテルに付属するレストランの需要に耐えうるものではないという。

 散々悩んだ末の策には違いないが、ここに来てバレバレになった訳で、皮肉にもこれまで純粋和牛といわれていたものが、国産だったことが明らかになるなど、怪しい日本食材が市場から消えた。これには私など気分的には爽快感さえ覚える。

 中国政府は日本食品の輸入停止措置を正当なものと発表している。だが、それは中国の農産物総輸入額の0.8%程度にすぎないで片付く問題では終わらない。問題はそうした措置が過度な反応を生み、風評被害に通じるということである。

 昨夜も日本で比較的成功している中国人ビジネスマンから深刻な相談の電話あった。彼がこれまで後継者として育ててきた優秀な中国人青年が、震災後に中国に戻ったきりで、日本に戻らないという連絡があったそうだ。会社として人材の抜けた分をどうしたらいいのかと悩んでいるところさえ出始めていて、思いのほか深刻な状況という。

 一方、日本に残っている中国人の若い女性は、両親が毎晩のように電話を掛けて来て、日本は危ないから早く帰れと急かされている。彼女の周囲で日本に留まっている仲間たちもまったく同じ状況だ。このところの余震の多さも、異常で恐怖の日々だと述懐しているが、それにも増して放射能汚染はなおのこと分かりにくいようで、彼女は洗濯物を外に干すことさえ憚っているという。

 日本人でも不安な原発事故による放射能の危険性。日本に長期滞在する外国人が不安を感じるのは当然のこと、日本政府も関係メディアもそうした現実に対しての配慮があってもいいように思われるのだが。

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