中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第51回)

2011.05.23

 北京から来た中国人実業家と会食した際、彼が北京で成功している最大の理由を尋ねたところ、即座に人脈という答えが返ってきた。そこでどんな人脈があるかと聞いたのだが、やはり役人が中心。中国には年に何度か祝日があるが、 このときにしっかりやることが、大切なのだそうだ。元旦、春節(旧正月)、メーデー、中秋節、国慶節などにそれなりの贈り物をすることは、最低限の儀礼という。

 「中国ビジネスを手がける上で、最も強力な武器は何か」と、私自身も尋ねられることが多い。これまでも「それは人脈だろう」と、お答えしてきた。特に難しい政府の許認可などについては、間違いなく人脈が大きな力になる。

 中国通と称する方々の多くが同様のことを経験なさっておられるはずだが、ビジネス上の有益な「人脈」となれば、名刺交換をしたくらいではなかなか築けない。それなのに、面談したことがあるとか、パーティーで名刺交換したとかだけ で、自分の人脈になったと思っている人も少なくないように思う。

 90年代の初め、香港に日中合弁の商社を設立し、私は副社長に就任。その事を香港ローカル各紙は朝刊1面で賑々しく報じた。翌日から香港のビジネスマンが次々と押し寄せて来て、自分は中央(北京)と太い人脈があり、必ずお役 に立てるから今後も出入りさせて欲しいという。

 共通しているのは、アルバム片手に中央幹部とのツーショットを示しながら、自らの人脈をアピールするやり方。ほとんどがパーティーでのツーショットだ。この人たちの話はほとんどが役に立たない。彼らについて私の親しい友人は、「連 中を相手にしていても商売にはならないよ。彼らは事務所も持たない皮包商という商人で、カバンひとつ抱えて走り回っているだけだからね」とアドバイス。事務所賃貸料のバカ高い香港ならではの知恵かもしれないが、数カ月を無駄にし てしまった。

 人脈には濃淡があり、ビジネスで役立つ人脈となれば、我々外国人の場合それなりの時間が必要だ。中国社会の人脈は「地縁、血縁、学縁」を中心としており、我々外国人のほとんどにとって無縁の世界だ。だから、それを超越したとこ ろを狙わなければならない。それがビジネス構築の一つの関門になるのである。

 数年前に某出版社の編集担当者から、中国ビジネスに関する本の出版について相談を受けた際、その種の本は売れないから止めた方がいいと言った。だが、話の中で何をやるにも人脈がカギだという語ったところ、それなら「人脈力」と いうタイトルで書いてもらえないかとオファーされた。後に企画書が送られて来たが、いまだに手をつけていない。実際のところ人脈作りは意図してできるものではなく、コツがあるわけでも、技術が必要なわけでもないからであり、本を読んで 人脈作りのノウハウを会得できるものでもないと思うからである。

 中国での人脈ならば、私も現地勤務だった頃はいくつかのプロジェクトに関係していたため、国務院の誰々とか閣僚級などとの交流もあった。けっこう華々しい人脈に囲まれていたが、時代を経てその方々は第一線を退き、現場から姿を 消した。このため自然にその人脈も消滅してしまっているのである。人脈は築くことができたとしても、それを維持・発展させる手立てを持たなければ、腐ってしまうものなのである。

 中国のある友人によると、中国では6人を経由すれば必要な人脈に行き当たるそうだ。つまり確たる人脈に至るまでには、それなりのプロセスを経るということなのだろう。さすれば人脈を持っている人を人脈にするという手法が有効なのだ が、こうした人を捜すのも一苦労である。

 こちらが人脈と思っていても、相手がこちらを人脈と思っていなければ、人脈としては繋がらない。それゆえ、こちらも多くの人的、経済的、経験上などの財産を保有することが必要だ。でなければ、相手もこちらを人脈にしたいという気持ちにならない。

 さらに、相手が必要とする条件をこちらが備えているか否かが重要だ。そのうえで、自らの希望を聞いて動いてくれそうな人物かどうかもポイントになってくる。簡単なようでいて現実にはかくも難しい世界なのである。

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。