中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第57回)

2011.11.24

 物価の上昇がひどく、豚肉の小売価格などは年初から高騰し、庶民は泣いている。これに対して政府は養豚業者に補助金を出すという政策を発表。養豚業が急きょ見直され、先週は年間1万2000頭を飼育している業者が、豚肉の品質とコスト削減の相談にやって来た。そんな彼らだが、日本でさらに資金を手当てし、中国国内で金貸しをやろうと思っているそうだ。

 確かに現在は銀行融資が引き締められ、市場のカネ回りは極端に悪くなっている。大多数の中小企業は運転資金に窮し、高利貸しから年利45~50%の金でも借りるというのが現実だ。そうした状況があるからなのだろうが、その養豚業者は日本で1億円を調達し、出資者には年利8%で配当するのだから悪い話でもなかろうという論理である。

 国内のかつての農民も、いつの間にか金に向かって邁進(向銭看)中の様である。ということは貧しい農民でも金持ちになれるという夢舞台が中国に現れたことを意味し、都市と農村の所得格差解消にも繋がるような気もする。しかし、その裏で中国の経済発展は様々な社会問題を引き起こしている。

 今の中国で最大の問題は何かと問えば「それは道徳だ」とする向きもあるにはあるが、「道徳」以前の「人間としての倫理観」が問題なのではと思えてならない。ネットの発達でこれまでは明らかにされなかったような瑣末な社会問題でもネットを通じて表に出るようになったことと無関係とは言えないが、確かに考えられないような事件が相次いで報道されている。

 ここで最近の具体例をいくつか紹介する。ある若い医師のところに2歳の子どもが担ぎ込まれた。診察の結果、「風邪」と判断し、点滴を開始。だが、間もなく痙攣を起こし、口から泡を吐きながら死亡した。子どもの死後にカルテを見たら「感冒」と書かれていた部分が「手足口病」に改ざんされていたので、医師を追及したところ「字が汚かったから、きれいに書き換えただけ」と答えたという。これは「広州日報」(11月10日号)に掲載された事件。中国の医師の質については様々なことが言われている。

 その数日前、河北省唐山市で道端に落ちていたサンザシの実で作ったお菓子(果丹皮)を拾って食べた子ども3人が死亡した。警察に捕まった男は性保健品の販売を仕事にしている人物。いざこざから60歳代の同業仲間を殺害することを計画したそうだが、結果として子どもを死に至らしめた。

 犯人の男は購入した果丹皮4本に毒を塗り、再び包装して市場にある同業仲間の座席の後ろに置いた。ターゲットの同業仲間は計画通りに、果丹皮1本を口にした。だが、1本を口にして重態となったものの、死に至らなかった。そこで、犯人は残った3本を道に捨てたのだが、それを食べた子どもが死んでしまったという。

 なんとも愚かしい事件なのだが、これについて当局の役人が「拾い喰いという行為も問題だ」とコメント。これが発端となり、ネットを通じた批判が殺到したというから、さらに情けない。

 日本の新聞でも報道されたが、広東省仏山市で2歳児がひき逃げされた事件が起きた。路上に横たわる子どもを横目で見ながら、18人が駆け寄りもしないで通り過ぎた。さらに後続の車も、その上を轢いて走り去ったという何とも信じがたい話だ。

 しかし、前述の事件同様、こうした事件が起きるのには、それなりの社会的背景がある。助けるつもりで駆け寄ったのに、加害者扱いにされてしまったという事件が数多い。「触らぬ神に祟りなし」、「君子危うきに近寄らず」の風潮が生まれており、ひき逃げ事件にも大いに関係している。

 我々には理解しがたいことも少なくない。麻薬密売人はHIVに感染しているケースが多いのだが、警察は逮捕した容疑者が感染者であることが分かると、釈放してしまうこともあるという。感染者を拘置所が受け入れてくれないからであり、社会的な大問題だ。HIVが免罪のための手段になってしまうことが恐ろしい。

 一党独裁、社会主義、一人っ子政策などに対して、ここで異論を唱えるつもりはない。だが、人間が人間としての心を失ってしまっている社会というのが許されるはずがない。社会的な道徳意識の欠如の問題というだけでなく、それをはるかに通り越して人間性そのものを失ってしまっているのである。そういった社会に安定など期待できない。社会不安が経済に与える影響も少なくないと思えるから、恐さを感じる。

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