中国街角ウォッチ

中国街角ウォッチ(第58回)

2011.12.28

 今年もまた北京から「空気汚染がひどく曇った日が続いている」という便り。汚染の原因はやはり市内を走り回る車の排ガスなのだろうか?

 北京ではオリンピック開催に合わせ市周辺の主な工場を河北省各地に移し、煙突のケムリなども遮断したはずで、何を今さらの感は否めない。だが、そんな空気の汚れ以上に汚れているのが、大都市の夜の世界ではないだろうか。文革中の70年代初頭から北京に駐在してストイックな生活を体験した我々からみれば、最近の中国は明らかに人間臭い国になった。

 先月久しぶりに南京に出張し、その最終日は上海に一泊した。そのとき友人が関係する中国人弁護士事務所のスタッフと夕食を共にした。彼は日本の九州地区の大学に留学経験があり、留学時代に飲食店でのバイト経験が豊富だったそうだ。そのおかげか、流暢な日本語を操り、在上海日本人の相談を中心に扱っているという。

 相談内容の多くはお金の絡む女性問題だ。彼によると、相談相手は一流企業の管理職など、それなりの地位にある日本人男性が多い。そして、交際相手の中国女性の背後には、様々な入れ知恵をする日本人の存在があることもしばしばで、話をややこしくするそうだ。

 彼の経験談によれば、中国を離れる日本人男性が交際相手の中国女性から請求された慰謝料の最高額は400万元と言うから驚きだ。まじめな日本人男性は保身のために命がけで支払いに応じようとするらしい。

 風俗関係の女性から法外な金銭を請求されるケースも頻発しており、日本総領事館や商工会議所なども駐在員に注意を喚起しているものの、その種の事件は後を絶たないのという。

 女性から脅迫に近い形で金銭を要求されるケースでは、「支払いに応じなければ、本社に訴える」というのが決まり文句。「男性が『どうぞご自由に』と言ってしまえば、それで終わってしまうことなのだが」と、彼は言う。

 400万元は特種な例だが、40万元くらいの支払いは日常茶飯事のレベル。困り果てた日本人男性が弁護士に相談し、中国人女性も弁護士を立てて対抗して来る。今やそういう事件が日常茶飯事とするならば、これは中国の退歩と捉えるべきであろうか。  

 ところで最近の話だが、産経新聞の元中国特派員で、目下フリージャーナリストの福島香織さんのお話をお聞きし、彼女の「中国の女」(文芸春秋刊)という著書も読んだ。そこであらためて中国の社会問題の深刻さを感じた。

 自分の血液を売る「売血」で生計を立てた結果、HIVに感染する――。河南省の一農村では人口の半分近くがHIV感染者という。無論、その中で出産もあり、先天的にHIV感染者としてこの世に生を受ける子もいる。こうした現実は腹立たしいというより悲しく、この状況に手をこまねくこの国は、いったい何なのだという憤りを禁じえなかった。闇の社会をついぞ覗く機会がなかっただけに、私の中国理解の中で完全に抜け落ちた部分がこれだったのかという空しさは拭いきれない。

 農村の嫁不足は日本でも同一現象が見られるところだが、中国では地方で娘をかどわかしたり、年頃の娘を都会に連れて行ってあげると騙したりして、都市近辺の農家に嫁として売り飛ばすという犯罪行為も堂々と行われているそうだ。一人子政策の弊害が様々な形で農村に不幸の種を作り、人が人として扱われない風潮がまかり通っている現実を知らされ愕然とした。

 かく言う私も中国でカラオケに行く機会が増えた。そこで福島さんの潜入取材と言うほどではないが、傍らに座った女性にインタビューすることは極めて当たり前の習慣になっている。

 そうした女性に質問する内容は出身がどの地方で、何時ごろどんな理由でこの社会に入ったのかという程度。その内容が嘘でも真実でも構わない。一つの決まりきった挨拶程度の会話だ。

 中国の友人のご好意で、まさに取材気分も手伝って、もっと怪しげなマンションにも足を踏み入れたことがある。ここでも取材だけで失礼したくなるのは、その部屋の雰囲気の暗さと不衛生さによるものだった。福島さんの潜入ルポが語るとおりのものだったという気はするが、いま思い出しても不愉快な環境だった。

 無論、これは中国社会の一面なのだと思えば、反社会的な部分だと割り切ればよいのだろう。ただ、我々は中国という大きな森だけを見て木を見ていないことを覚えるのである。

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