中国面面観

富裕層間の古くて新しいコレクション「茅台酒」

2012.03.28

上昇が止まらないブランド価値!

 中国のお金持ちは、本当に茅台酒が好きだ。いや、自分で飲むのが好きというより、最近は贈り物として好む傾向が強いようである。贈り物10大ブランドのうち、9つが欧米ブランドの中、茅台酒が唯一の中国ブランドとしてランクインしているという事実には正直、驚かされた。

 今年年初に発表された胡潤<フージワーフ>研究院のレポートによれば、ルイ・ヴィトン、カルティエ、エルメスの上位3ブランドに次ぎ、茅台酒は5位に入り、6位のアップルや下位のシャネル、ベンツなどよりも評価されたとのこと(胡潤研究院:駐中の英国公認会計士が1999年に開設)。海外ブランド好きの国民性はよく知られているが、アルコール度数が平均53度もあるお酒がここまで好まれているとは想像していなかったのである。

 茅台酒は中国の「国酒」と言われ、建国から間もない1952年全国銘酒品評会で八大銘酒に選ばれた。白酒(パイチュウ)の最高峰の代表的な存在であり、高粱を原料とする世界三大蒸留酒の一つ(蒸留酒:ウィスキー、ブランデー、焼酎など)としても有名だ。アルコール度数が高いため、キュッと、初めての方には飲み慣れない口当たりだが、香りが高く、たとえ飲み過ぎても二日酔いしにくい高級酒でもある。

 300年以上の歴史をもつこの銘酒は、中国内陸部の貴州省が原産。麹が育つ環境が整っていることもあり、古くから「貴州茅台酒」として全国的に名を馳せた。貴州省は四川省の南東に位置し、人口は約4,200万人で少数民族が多い。一人あたりGDPも約2,000ドルと全国平均を下回る。アルミニウム(業界最大手企業チャルコの重要生産拠点)、石炭、ホーキサイト、リンなど幅広い資源が存在する。

 元来、中国の人はお酒が好きな民族だということもよく知られている。ビールでは国別消費量が世界一(2003年から8年連続トップ)であり、4,000年も前から醸造酒(穀物や果実を原料として発酵)が史物記録で確認されている。蒸留酒は比較的に歴史が浅いといっても、数百年前から飲まれてきているわけだ。

 中国が経済開放した78年以降は特に、政府役人や国営企業幹部など、俗にいう“国内代表選手”らが、当時、初めて海外投資家と接した際、宴席で乾杯、乾杯を繰り返し飲んだのがこの茅台酒だ。その時分から、事業が成功するように祈る「お祝い」のお酒という意味から、日常生活で飲むお酒と分けて飲んできた。

 80年代の茅台酒は一本あたり数十元(当時レートで300-800円)位の値段だったと記憶している。それが最近は数百元、中には数千元から一万元まで価格がつり上げられ、なかなか下がってこない状況が長く続いた(最近はやっと3割近く調整しているとのこと)。

 50年代に政府によって接収された現地酒蔵が後に統合され、99年に貴州茅台酒として株式会社化し、2001年に上海証券取引所に上場を果たした。2010年の売上高は99年比で10倍強まで大きく成長し、昨年年初より9ヶ月間の売上高も前年比で46%増。15年までに10年比で更に4倍増の500億元超(約6,600億円)を目指すとのこと。株価も上場来10倍超上昇してきた。

 ただ、貴州茅台酒の株式を持つよりは、実物をしばらくの間寝かせて保有した方が、価値が上がりやすいという一攫千金狙いの考え方が横行している。もともと生産量が少なく、また10本のうち9本がニセモノと言われていることもあり、希少性を助長していることが背景にあるようだ。

 顧客をもてなす乾杯酒の高級イメージが贈答品化し、それがまた資産価値を創造する品物としてコレクション化しようとする動きが普遍化している。まさに現代中国の一つの社会現象だと言えよう。

 建国の父と言われた毛沢東がかつて貴州省解放時に勝利の酒として振る舞い、1972年の日中国交正常化時でも国賓をもてなす乾杯酒として使われた高級白酒。
周恩来首相(当時)が風邪をひいても薬は飲まず、茅台酒を飲んで治した逸話はあまりに有名だ。今後、お酒の価格上下の変動があっても、国民の間では祝宴の乾杯に欠かせないお酒として存在感を保ち続けると思われる。  

(吉永東峰 株式会社ニーズ キャピタルデザイン 代表取締役)

【執筆者略歴】
 1998年法政大学経済学部卒業。同年コカコーラに入社、資金財務、経営企画に従事。2001年ネットチャイナ(現、新華ファイナンス)入社、中国金融情報サービスの企画とマーケティングを統括。2003年青山学院大学MBA in Financeを取得。2006年EuromoneyグループISI Emerging Markets日本支社長。2007年11月スパークス・アセット・マネジメントの中国プロジェクトに参画、QFIIをはじめQDIIのマーケティング、中国ファンドの運用企画などに携わる。

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。