中国面面観

旧暦の話

2012.05.02

 旧暦付のカレンダーを眺めていると、4月21日のところに旧暦閏3月1日・新月と表示されている。あれっ?今年は閏4月のはずなのに、なぜ?このカレンダーが間違ったのか、自分の記憶が間違ったのか。腑に落ちないので、早速調べてみた。結論は、カレンダーも自分の記憶も、どちらも正しい。ただ、眺めていたのが日本のカレンダーで、自分の記憶にあるのが中国のカレンダーだけなのだ。旧暦って不思議――。

■双子の閏年■

 今年は2月に29日があり、新暦では閏年であることは周知のとおりだが、新暦だけでなく、旧暦でも閏年に当たる。中国では、これを「双閏年」、つまり双子の閏年と呼ばれる。太陽暦である新暦の閏年の仕組みは良く知られている。平年365日と設定されている暦が回帰年(365.2422日)とのずれを調整するため約4年に1度、1日閏日を加える。しかし、旧暦はやや複雑になる。

■1年13カ月■

 中国の旧暦(中国では「旧暦」という言い方もあるが、「農暦」という呼び方の方がもっと一般的である)は、太陰暦を基本として太陽暦の要素を加味した太陰太陽暦で、月(太陰)の満ち欠けで1か月を決め、太陽の公転周期で1年を決めるものである。旧暦の月の1日は必ず新月で、15日は必ず満月となる。

 しかし、月の満ち欠けの周期は平均約29.5306日で、これの12ヶ月は354.3672日と、太陽暦の1年より10.875日ほど短い。これでは3年で季節が1ヶ月ずれてしまい、15年も経てば旧暦の正月が真夏に迎えることになる。このずれを補正するために、旧暦の暦法ではある月の後に同じ月を「閏月」として入れ、1年を13ヶ月とする方法を取り入れた。

 ちなみに、「閏」は中国語で余分という意味がある。そして、19年に7回の閏月を置けば太陰周期と太陽周期のずれが最小になるという計算である。

■月の満ち欠けと季節の変化を表す旧暦■

 どの月の後に「閏月」を入れるかは、二十四節気を用いたルールに基づく。二十四節気は、旧暦の特徴のひとつで、天球上の太陽の動きに合わせ、立春、春分、秋分、冬至などといった名前を付け、季節の変化を示すものである。このように、旧暦は、月の満ち欠けの具合と季節の変化を同時に表すことができ、特に古代の人々の生活にとって便利な暦である。

 なお、閏月を決める現行のルールに基づけば、冬に閏月が置かれる可能性は低く、春から夏前後に閏月が生じる可能性が高くなる。1821年から2020年の200年の間、旧暦の閏月は74回で、閏11月、閏12月、閏正月は一度も存在せず、閏5月が16回と最も多い。ちなみに、前回の閏正月が発生したのは1651年で、次回は2262年になる。かなり気が遠くになる…。ただ、閏正月が発生しても、旧正月の祝いは最初の正月だけという決まりだが。

■「双春兼閏月」■

 1カ月閏月が増えた旧暦の今年は、年間384日もあり、次の旧正月はちょっと待ち遠し。しかし、1年が長くなった分、面白い現象が起きる。それは、1年の中に春が二回来ることなのだ。ここでいう春とは、二十四節気の最初である「立春」のことで、新暦2月4日または5日に設定される。今年の旧暦は、新暦の日付では2012年1月23日に始まり、2013年2月9日に終わるので、2012年2月4日と2013年2月4日の2回の立春が同じ旧暦の年に入る。四季の最初は春、その始まりが立春で、万物が芽生える時期であり、それが2回もあるので、めでたいわけだ。中国では「双春兼閏月」という言葉で表現し、結婚に最も適する縁起のいい年とされる。

 それに対して、2013年の立春が今年に入った分、来年の旧暦の兎年は立春がない「盲年」と呼ばれる年となり、結婚等に適さないと考えられるため、今年は例年に増して結婚するカップルが増えそうだ。もっとも、春が二つにしても、春がないにしても、あくまで暦法上の計算によるもので、吉凶禍福とは無関係と思うのだが。

■中国閏4月、日本閏3月■

 中国の旧暦では、今年は閏4月となっているが、日本の旧暦では閏3月になっている。それは、中国と日本の時差の影響で、今年の閏月の場所を決める二十四節気のひとつである「小満」の時刻が中国時間で新暦5月20日23時17分頃、日本時間では翌21日0時17分頃となる一方、新月はどちらでも21日になっているためである。その結果、日本ではこの新暦5月21日からが旧暦4月1日で、その前の月(新暦4月)が閏3月となるが、中国では新暦4月が旧暦4月、新暦5月21日からが閏4月となる。

 しかし、日本と同じように中国と1時間時差のある韓国では、中国と同じ暦を使っているので、中国と韓国の旧暦に違いがない。韓国だけでなく、世界各国・地域の華人社会も現地時間と関係なく、中国と同じ暦を使っている。

■中国ビジネスには中国の旧暦が不可欠■

 日中の時差の影響で、新月や二十四節気の時刻は1時間ずつ違うこととなるため、日中の旧暦の日付が異なることがしばしば起こる。今年のように月まで違ってしまうのはやや珍しいが、1日の違いは比較的よく見られる。例えば、1997年の旧正月は中国では2月7日、日本では2月8日だった。また、今年は閏月の違いだけでなく、旧暦5月と7月も中国では1日早くなる。中国の旧暦5月5日は「端午節」、7月7日は「七夕」に当たるので、むろんこれらも日本より1日ずつ早くなる。

 中国では今でも、正月、端午節、七夕、中秋節、重陽節など多くの伝統行事は旧暦でお祝いしており、そのうち旧正月、端午節、中秋節は国民祝祭日として定められている(香港では重陽節も祝日の対象)。こうした祝日の連休期間中、中国では帰省や旅行で人口の大移動が起こり、日本など海外に押し寄せる中国人観光客も多い。そうした中国人の消費パワーを取り入れ、ビジネス・チャンスをしっかりとつかむには、中国の旧暦を把握しておくことはもはや不可欠なのかもしれない。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
 1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13 年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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