中国面面観

ロンドン五輪と「メイド・イン・チャイナ」

2012.08.06

4年に一度のオリンピックがとうとうやってきた。多くの中国人にとって、2008年の北京オリンピックの開幕式の派手やかさは、いまだに目に浮かぶだろう。今年は開催地こそ北京からロンドンに移ったが、競技外ではオリンピックと中国のかかわりは相変わらず深いようだ。そのキーワードは「メイド・イン・チャイナ」(中国製)である。

■ロンドン五輪グッズの約7割が中国製■

 イギリスのメディアによると、ロンドン五輪の公式グッズの約9割が外国製で、イギリス製はわずか9%にとどまる。外国製のうち最も多いのが中国製で、全体の65%を占める。これに次ぐのがトルコ製の19%、ほかはフィリピン、インド、ベトナム、ドイツ、ポーランドなどである。

 統計はロンドン五輪の公式ウェブサイトで販売されている約900種類のグッズが対象で、イギリスで製造されたのは、フォトフレーム、ポスター、記念コイン、記念切手ぐらいで、五輪マスコットの「ウェンロック」と「マンデビル」をはじめ、約630種類のグッズは中国で製造された。タオル、シーツ・布団カバー、Tシャツ、マグカップ、キーホルダー、ぬいぐるみ、ピン、バッジ、おもちゃの車など多岐にわたる。

 ただ、これら製品は中国で作られた後、一度イギリスに戻り、偽物防止のタグをつけられてから、世界各国に運ばれる。むろん、多くの製品は再び販売目的で中国に戻ってくる。

■製造業の金メダルを目指して■

 グッズ販売の多くを占めるのがバッジである。そのバッジの生産はすべて1社の中国企業が請け負った。全世界で約40社がロンドン五輪のバッジ製造の受注で争ったが、3回の選考を経て4社が残り、最後に中国華江文化発展という会社が勝ち取った。

 この会社は過去にもアトランタ、シドニー、アテネ、北京で開催されたオリンピック、サッカーの2002年ワールドカップのバッジ生産を手掛けた実績がある。しかし、アトランタやシドニーの時、同社は製造のみ担当したが、北京五輪をきっかけに、バッジの開発・設計にもかかわるようになった。

 同社にとって、ロンドン五輪の受注獲得戦略の重点は、製造から研究・設計に変わった。中国メディアの同社社長への取材によると、同社のデザイナーたちはデザインのアイデアを得るため、数カ月ないし1~2年ぐらいロンドンに住み、現地の生活や文化を体験した。そして、出来上がったバッジには、様々なイギリスらしさが表現されている。ロンドン33区の代表的な建造物、伝統的なイギリス式朝食、霧の都ロンドンを表す傘…等々。こうした努力が実り、今回、バッジの設計から製造までの一括受注に成功したのである。

■ニセ物と中国オリジナルグッズ■

 このように単純な製造業者からより高付加価値の研究・設計を目指して努力する企業もあれば、偽グッズを作る企業も後絶たない。誠に残念である。

 軽工業製品の一大生産基地である浙江省温州市では、地元警察がロンドン五輪グッズの違法製造工場を摘発し、8,000点以上を押収した。調べによると、その工場はすでに10万点以上のグッズを製造し、北京や上海などに出荷したという。

 中国国内のオンラインショップを見ると、ロンドン五輪記念グッズと称される品物が数多く出品されているが、姿形がさまざまで、価格差も大きい。あるサイトに出品されたマスコット「マンデビル」の価格は、ロンドン五輪公式サイトにあるものの10分の1未満である。別のサイトでは、販売価格15元(約180円に相当)の「マンデビル」がすでに300個近く販売されたそうだ。

 もっとも、このグッズについては、“本物ではなく詰め物はpp綿(ポリプロピレン繊維)”と表示しているのだが…。ちなみに、本物のマスコットの詰め物は100%ポリエステルである。

 また、公式グッズの偽物ではなく、中国オリジナルのグッズもある。あるネットショップでは、2012年ロンドン五輪記念版スマートフォンのカバーを1つ9元で販売しており、カバーにはマスコットとロゴマークが印刷されている。ほかには、限定版の香水やスニーカーなど多種多様である。

 スポーツだけでなく、モノづくりの面でも、ルールを遵守してプレーしてもらいたい。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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