中国面面観

中国的酒席の作法

2013.01.23

 宴会の季節の真っ只中、年末は忘年会、年明けは新年会と忙しくしている方も多いだろう。中国ビジネスに携わる場合、中国の方との宴席の機会もあるかもしれない。2月には旧正月も控えている。友人や同僚だけで囲む席では無礼講でも構わないが、接待など比較的フォーマルな席の場合、中国ではそれなりの作法がある。ここでは席順と乾杯について紹介しよう。

■席順■

 まず、席順である。これは非常に大切で、特に上下関係が厳しい政府関係者を複数招待する場合は、各人の肩書や序列を事前に確認しておいた方が無難であろう。

 中国の宴会では、通常、10~12人用の円卓を使う。ホスト席は入り口から一番奥の席である。比較的高級なレストランでは、しるしとしてホスト席のナプキンをやや大振りで華やかな折り方にして分かるようにする。ホスト席のすぐ右が主賓席(第一ゲスト)で、左が第二ゲストの席になる。招待する側の二番目偉い人はホストの真向いの副ホスト席に座り、その右が第三ゲスト、左が第四ゲストに座る。

 ここまで来たら、残りの来客の序列も大差がなく、空いている席に適当に座っても大きな支障はないであろう。さらに順番を決めなければならない場合、第一ゲストの右にホスト側の3番目偉い人が座り、その右が第五ゲストというように、ホストの右→同左→副ホストの右→同左という順番で決めていく。

 席順は配膳とも連動する。一般的な中華料理は、円卓の真ん中に大皿に盛りつけた料理を置き、各自でとるのだが、高級レストランでの接待などの場合、係員が一人分ずつ小皿に取り分けてから運んでくることがほとんどである。この小皿を配る順番は、席順に沿うものだ。席順を間違うと、位の下の人に先に料理が来てしまい、上の人を待たせるという気まずい雰囲気になる。

■油断できない乾杯の仕方■

 着席したら、いよいよ乾杯である。中国で宴会に出席する時、本当にお酒が飲めないのであれば、最初からはっきりと断った方がいい。少しなら大丈夫とかと言ったら、遠慮か謙遜しているかと誤解され、かえって強く進められてしまう可能性が高い。

 日本では宴会の始まりに一度乾杯するだけだが、中国では宴の最中に何度も乾杯し、全員で乾杯する場合もあるし、1対1または2、3人だけで乾杯する場合もある。乾杯する時は、「……を祝って乾杯しよう」と一言添えるのが良い。これで場を盛り上げるのだ。

 中国の乾杯は「飲み干す」という意味なので、乾杯といったら、自分のグラスにあるお酒を全部飲まなければならない。ただし、宴会の最初の乾杯は、形式的な意味もあり、全部飲まなくても咎められることがあまりない。全部飲めない時、「随意」(suiyi)と言えば良い。あるいは、相手があまり飲めないと分かったら、「私が乾杯して、あなたは随意でいいよ」と言うと、ちょっと格好いいかもしれない。

 乾杯する時のグラスの位置も気を付けたい。グラスを合わせる時、相手が目上の人や客人であれば、相手のグラスよりも低い位置で交わす。

■お酒の種類■

 中国の宴席では、様々なお酒が用意されている。一般的に各人の前にサイズの異なるグラスが3つ置かれている。大きいグラスはビールやソフトドリンク、中はワインや黄酒、お猪口くらいの大きさの一番小さなグラスは白酒を飲むためのものである。

 黄酒(Huangjiu)と白酒(Baijiu)は中国の伝統的なお酒である。黄酒はもち米などを原料に熟成させた醸造酒で、色が濃い黄色になっている。日本でも有名な紹興酒は黄酒の一種である。白酒は、コウリャンや米、麦などを原料として作られる無色透明の蒸留酒でアルコール度数が50度前後の強い酒で、「茅台」や「五糧液」など有名である。乾杯する時に飲むのは、黄酒と白酒が多い。

■増加するビールとワインの消費量■

 白酒はアルコール度数が高いこともあり、若者を中心に敬遠する人が増えている。また、中国における食生活の西洋化に伴い、ビールとワインの消費量が急増している。キリン食生活文化研究所の推計によると、2010年における世界のビール総消費量は1億8,269万キロリットルで、そのうち中国での消費量は4,468万キロリットル、全体の24.5%を占める。1人当たり年間消費量では、中国は31.5リットルと、1位のチェコの131.7リットル(大瓶換算で208.1本)の4分の1以下であり、今後、さらに増える余地が大きいだろう。

 ワインについては、イギリスの酒類調査会社IWSRの発表によると、2011年の中国(香港含む)のワイン消費量は1億5,619万ケースで、イギリスを抜いて世界第5位の市場に浮上した。また、2006年~2010年の5年間、中国(香港含む)のワイン消費者は2.4倍となった。IWSRは、2011年~2015年にさらに54%増加すると予想している。

 宴会はもてなしの場、堅苦しすぎると逆に雰囲気を壊すことになる。席順と乾杯の仕方さえ押さえておけば、ビジネスの潤滑油ならぬ潤滑「酒」になることができるかもしれない。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。