中国面面観

699万人

2013.07.05

699万人……。何の人数だろうか?
 香港の人口?いい線いっているが、違う。2012年央の香港の人口は713万人だ。

 東京都の人口の半分?これも近い。東京都の人口総数は1,328万人(2013年6月1日現在、東京都推計)で、その半分が664万人。ちなみに東京都の女性人口は672万人(男性は656万人)なので、こちらの方がもっと近い。

 では、一体何だろうか?正解は2013年度の中国本土の大学新卒者数である。日本では新学期が始まってまだ3カ月位しか経っていないが、秋入学の中国では、6月末に卒業シーズンを迎える。約700万人もの大学新卒者だが、いずこへ向かうのか?

■最も厳しい就活の年■

 中国教育部の発表によると、2013年度の大学新卒者数は699万人で、前年度に比べ19万人増加した。中国のマスコミの表現を借りれば、「史上最も厳しい就職シーズン」である。全国の大学新卒者数は2009年度に初めて600万人を突破し、611万人に達した。その後も毎年20万~30万人のペースで増えている。

 これほどの新卒者数だから就職活動も厳しい。65万人以上の大学新卒者を抱える広東省では、就職先と雇用契約を結んだ新卒者が5月初旬の時点で約50%にとどまり、内定率が前年同期に比べ6~7ポイント低下したという。中国の最高学府の北京大学でさえ、就職先が決まった卒業予定者は5月10日時点で5割強にすぎない。

 雇用情勢が厳しいのは、新卒者数が増加の一途をたどっていることに比べ、企業側からの募集が停滞していることがある。中国教育部が今年2月に企業500社を対象に実施した調査によると、これら企業の2013年度の予定採用人数は前年より約15%減少した。

 こうした厳しい雇用情勢の中、新卒者たちはどう対応するだろうか。

■「体制内」への回帰

 「体制内」とは、平たく言えば中国共産党や政府、国有企業のことである。就職難に加え、景気の先行きの不透明感などから、公務員や国有企業での就職を希望する学生が増えている。中国の大手ポータルサイト「捜狐教育」が、今年度の大学新卒者11万人を対象に就職先の希望についてインターネットでのアンケート調査を実施した。その結果は政府機関が49%、国有企業が19%、民間企業はわずか8%である。

 ただ、公務員も狭き門である。公務員の募集人数は、2011年度の9,763名から、12年度に10,480名、今年度は12,927名と増えているが、応募者数も増えている。2011年度は90万人だったが、今年は112万人に達した。

■「関係」も実力のうち?■

 中国語の「関係」は日本語で「人脈」という意味合いがある。厳しい就職難の中、親の「関係」を活用して、国有企業や政府機関に就職先を確保する学生も少なくない。ある学生は雑誌のインタービューで、外資系企業のように純粋に実力で競争する企業よりも、自分にとっては国有企業での就職の方がアドバンテージがあると、はっきりと言った。この学生の親はある市政府の幹部だそうだ。

 中国では官僚の子どもたちのことを「官二代」と呼ぶ。つまり、官僚の二世である。中国の名門大学として知られる清華大学が、2012年に面白い調査結果を発表した。それによると、「官二代」の親で大卒以上の教育水準のある人は、非「官二代」の親の6倍に上り、平均収入は約2倍である。そして、「官二代」の大卒者の初任給は、「官二代」でない人に比べ、13%(1カ月あたり約280元)高い。「関係」は、就職先の確保だけでなく、待遇にまで影響しているということになる。

■起業家への挑戦■

 自分で起業するという道を選ぶ学生も増えている。起業は体制内に入り込めない、あるいは「関係」がない学生が消去法的に選ぶ道ばかりではなく、大手国有企業などからの内定を蹴って起業にチャレンジする学生も多い。

 雇用問題を専門とする大手コンサルタント会社「麦可思研究院」が最近発表した報告書によると、2012年度の大学新卒者のうち起業した学生は約2%で、2011年の1.6%から増加した。史上最多の大学新卒者が社会に飛び出す今年は、起業の道を選ぶ学生がさらに増えそうだ。

 安定を求めて体制内での就職を選んだ学生も、起業という冒険の道を選んだ学生も、人はそれぞれ置かれた環境の中で様々な選択をして人生を歩んでいく。新卒者たちにとって社会に踏み出す第一歩として悔いのない選択であってほしい。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

 【執筆者略歴】
 1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。