中国面面観

「三中全会」と中国の試練

2013.11.11

 いまだPM2.5に覆われている北京で、11月9日~12日に中国共産党の第18期「三中全会」という重要な会議が開かれる予定である。中国共産党の新しい指導部が昨年11月に発足してからちょうど一年が経ち、この会議では中国の行く先を示す決定が下されるだけに国内外から注目されている。

■「三中全会」=中国共産党中央委員会第三回全体会議■

 8,500万人超の党員を有する中国共産党は5年に1回全国代表大会(党大会)を開催し、そこで選出される中央委員会による3回目の全体会議が略して「三中全会」と呼ばれる。共産党規程では、「中央委員会は全国代表大会の閉会期間中、大会の決議を遂行し、対外的に中国共産党を代表する」と定めている。中国のメディア等で「党中央」あるいは「中共中央」をいう場合、一般的にこの中央委員会のことを指す。

 全国代表の任期は5年1期で、現在は昨年11月に発足した第18期に当たる。中央委員会の全体会議は基本的に年1回、各期において計5、6回開催され、それぞれ「一中全会」、「二中全会」、「三中全会」、「四中全会」…のように呼ばれる。今回開催されるのは、第18期三中全会になる。

 現在の第18期全国代表大会の代表人数は2,270名で、そのうち中央委員会は中央委員205名、候補中央委員171名である。候補委員は、中央委員会会議への出席権、発言権をもっているが、選挙権、被選挙権、議決権はない。ちなみに、委員全員の氏名は中国共産党の機関紙である人民日報のホームページに公開されている。

■改革が「三中全会」の中心議題■

 各回の中央委員会全体会議はそれぞれの役割がある。一中全会は通常、党大会が閉幕した翌日に開かれ、党の指導部を選出し、二中全会は政府人事関連について議論する。三中全会は経済改革、四中全会は党運営が中心議題である。現18期「一中全会」は昨年11月15日に開催され、習近平総書記をはじめとする党指導部を選出し、「二中全会」は今年2月26日~28日に開催された。

 1978年の改革・開放以降、第11期から第17期まで計7回の三中全会が開かれ、その多くは中国経済に大きなインパクトを与えた。なかでも有名なのは、1978年12月に開かれた第11期三中全会である。そこで改革・開放政策が打ち出され、中国の改革・開放の起点とされている。また、1984年10月の第12期三中全会では、都市を重点とする経済改革が決定され、改革・開放は農村部中心から都市部に拡大した。1993年11月の第14期三中全会では、社会主義市場経済体制の構築という目標が明確化された。

■春からの準備■

 三中全会での経済改革に関する決定は「…に関する中共中央の決定」というようなタイトルの文章として公表される。この文章の準備は開催年の春頃から始まる。まず起草グループ(中国語で「起草組」)を設置する。起草グループのリーダー(中国語で「組長」)は党中央の指導者が務める。2003年の第16期三中全会では当時の中央政治局常務委員で総理の温家宝氏が自ら、前回の第17期三中全会では当時の中央政治局委員で副総理の回良玉氏が務めた。

 起草グループのメンバーは、党・中央政府の幹部、地方政府のトップのほか、専門家や学者など数十名から構成される。第17期三中全会を例に見てみると、起草グループは3月末に発足し、メンバーは約50名で、およそ6カ月の間に9回の全体会議、30回あまりのワーキンググループ会議が開かれた。原稿作成については、41回の修正が行われ、原稿の意見収集期間に約3,000人が議論に参加し、最終的に約1.5万字の「農村改革発展の若干の重大問題に関する中共中央の決定」が完成された。

■中国経済学界重鎮の懸念■

 今回の三中全会も経済改革に関する重要な決定が下されると見られる。行政改革、土地制度改革、財政改革、金融改革など、多くの分野でより一層の改革を期待する声が多い。9月の中ごろ、中国経済学界の重鎮である呉敬璉氏はあるシンポジウムで、中国は現在経済発展モデルの転換と体制改革の二つの課題に直面しているとの内容について講演した。

 成長モデルの転換が打ち出されて20年近く経ったが、いまだに転換しておらず、土地・水・空気など人間にとって最も基本的な生存条件すら問題が生じたと、呉氏は指摘した。そして、成長モデルの転換にはさらに踏み込んだ改革が不可欠で、中国は全面的かつ深く掘り下げた改革に取り組まなければならない局面に来ていると、警鐘を鳴らした。

 10月下旬、習近平国家主席は、「三中全会で改革の全面的深化について検討し、全体計画をまとめる」と発言した。また、党内序列第4位の兪正声氏は、三中全会では「重大かつ包括的な改革を模索する」とし、「今回の改革は広範囲にわたり、大胆で前例がないものになる」と述べた。

 どのような内容の改革が打ち出されるか、その結果はまもなく明らかになる。そして、ぜひとも実行力をもって大胆な改革に取り組み、北京を覆うPM2.5と共に、中国を覆っているさまざまな問題点を取り払ってほしい。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
 1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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