中国面面観

中国のコカ・コーラ、不思議な言葉が続々と

2013.12.30

 中国に出張した際、スーパーマーケットで目にしたコカ・コーラが面白かった。おなじみの真っ赤なパッケージに、デカデカと色々な言葉がプリントされています。

 「白富美」、「高富帥」、「文芸青年」、「yang气美女(酸素美人)」・・・

 日本人には意味不明な言葉ですが、中国の若者がみんな面白そうに手にとって買っていきます。みなさん、ちょっと気になりますね。

■「白富美」「酸素美人」、若者言葉が表す中国の世相

 これはコカ・コーラが2013年の夏に中国で始めた販促活動で、ラベルにプリントされているのは中国の若者言葉です。そのいくつご紹介させていただきます:

「白富美」(色白で育ちのいい美人)
「高富帥」(背が高く高所得のイケメン)
「酸素美人」(透明感あり、いるだけで場が和む美人)
「文芸青年」(文学青年)
「有為青年」(バリバリ頑張る若者)
「積極分子」(アグレシッブな若者)
「(口苗)星人」(ニャン星人、猫バカな人)
「小蘿莉」(ロリータ、可愛い女の子)
「隣家女孩」(隣の女の子のように親しみやすい女性)
「天然呆」(天然ボケ)
「純爺門」(男の中の男)
「粉糸」(芸能人などのファン)
「月光族」(月給を一ヶ月で使い切ってしまう若者)
といったような言葉です。

 スーパーでお客さんを観察していると、ラベルに「白富美」の字があったコーラを手にとったのは本当に色白で育ちがよさそうな美人。そして「小蘿莉」の字があったコーラを手に取ったのはまさに可愛い子。一番多いのは、友達に合ったコーラを買ってあげる若者。たとえば「天然ボケ」の友人に、「天然呆」のコーラを買ってみんなの前で渡し、みんなの笑いを誘うといった具合です。

■「80後(バーリンホウ)」で一括りにできなくなった若者の細分化

 ところで、どうしてコカ・コーラが中国でこんな販促をやっているのでしょう。実は中国でも健康意識がどんどん高まり、コーラ離れの若者が続出しています。そこで、これまでずっと飲料市場のトップシェアを誇っているコカ・コーラは奇策を打って出たわけです。コカ・コーラの中国での売り上げですが、2013年夏は前年同期比2割増でした。この販促はひとまず奏功したようです。

 このコカ・コーラの販促ですが、日本企業にも色々とヒントになるところがあるのではないかと思います。

 中国の消費市場は若者が主役を担っています。日本のメディアも「80後(バーリンホウ)」、「90後(ジョウリンホウ)」などの中国の流行語をよく取り上げましたね。それぞれ「1980年代生まれの世代」、「1990年代生まれの世代」の意味で、すなわち20代30代の若者層です。

 しかし、変化の激しい中国では、もはや「80後」や「90後」も古い言葉。どんどんと細分化が進んで、一括りにできなくなったのです。若者は所得や学歴が違えば、消費嗜好も分かれます。上記の若者言葉はまさにこういう世相を反映しているのです。

 日本企業もこうした変化に上手に対応すれば、自社商品にふさわしいターゲット層を見つけ、その心をうまく掴むことができるでしょう。

■「酸素美人」はエコや健康に敏感な先端層

 例えば、日本で流行の健康系や自然系の商品を中国で広げようとしたら、まずは「酸素美人」や「文芸青年」を味方につけるべきです。彼らは学歴が高く、エコや健康に敏感だからです。上海には「環保(環境にやさしい)」を訴え、自然素材にこだわるとともに、日本の最先端のデザインセンスを上手に取り入れた中国系のファッションブランドがあります。日本円にしたら一着数万円でかなり高額にもかかわらず、実によく売れています。デザイナー出身の社長は若者の先端層に芽生えたエコ意識を先取りして大成功したわけです。

 仕事の効率を上げる製品なら、「有為青年」(バリバリ頑張る若者)と「積極分子」(アグレシッブな若者)に照準を当ててアピールすれば、支持を集めやすいでしょう。日産が中国で販売している「ヴェヌーシア」は、内陸部で売れています。中国名は「啓辰」、「人生の新しいスタート」という意味。内陸で起業を目指す「有為青年」「積極分子」にとっては、まさに心に響く言葉です。

 「酸素美人」「文芸青年」「有為青年」「積極分子」・・・こうした若者層は、これからの成長が期待できるミドル・クラス。「酸素美人」や「文芸青年」は生活の質を重視し、クリエーティブな職業において才能が開花する人が多いでしょう。「有為青年」や「積極分子」は上昇志向が強く、なかにはやがて社長になるような人もいるでしょう。

■欧米ブランドを好む「白富美」「高富帥」、「カワイイ」大好きな「(口苗)星人」「小蘿莉」

 他の言葉もみてみましょう。

 「白富美」と「高富帥」とはどんな若者なのかご存知でしょうか。これは中国の別の流行語で言えば、「富二代」のような者が多い。すなわち親が金持ちで、もともと育ちがよくお金には困らない若者です。彼らには欧米の高級ブランドを好む人が多いので、日本の商品が彼らの心を掴むには、商品価値に加えて、高いブランド価値も必要不可欠です。

 他にも、たとえば動物好きな「(口苗)星人(猫バカ)」、可愛いモノに目がない「小蘿莉」(ロリータ、可愛い女の子)や「粉糸」(芸能人などのファン)などには、日本のアニメーション、芸能人、キャラクターのファンが非常に多い。日本の芸能人や漫画キャラなど、いわゆる「カワイイ文化」を活用した商品は彼の中では大きなニーズが存在しているでしょう。

 「隣家女孩」(隣の女の子のように親しみやすい女性)、「天然呆」(天然ボケ)、「純爺門」(男の中の男)、「月光族」(月給を一ヶ月で使い切ってしまう若者)などは、大衆層であり、ボリュームゾーンに属する若者です。彼らは、「有為青年」・「積極分子」・「酸素美人」・「文芸青年」のような、トレンドリーダー層の影響を受けやすい。彼らの心を掴むには、分かりやすさ、単純明快さが必要不可欠です。

■中国の若者文化を知り、彼らを味方につけよう

 中国で上手にやっている日本企業がないわけではありません。日本で若い女性向けに「カワイイ系」の下着を販売して人気を博した企業が、上海でもお店を展開しています。私たちは、中国語版商品名の作成にかかわったことがありますが、複数の商品シリーズにはなるべく今の中国の若者言葉を上手に活用し、萌え萌えのネーミングとしました。

 上海のショッピングモールにある同社のお店を見に行ったことがありますが、日本のカワイイ文化を全面に押し出したそのお店は上海の若い女性に人気のようで、週末は混み合っています。中には「酸素美人」もいれば、「小蘿莉」もいました。商品のカタログを来店客が次々と手にとっているのを見て、中国語版商品名の作成に貢献した私たちの社員もうれしくなりました。

 最後に、実は私も若者言葉をプリントしたコーラを買いました。どんな言葉をプリントしたコーラを買ったかは、お会いした際に、個別にお教えいたしましょう。

(徐向東 株式会社中国市場戦略研究所http://www.cm-rc.com代表 )

【執筆者略歴】
 北京外国語大学講師を経て文部省奨学金で来日、日本で博士号取得後、一貫して日本企業向けの中国市場進出の調査やコンサルティングに従事。日経グループ企業の首席研究員、上海事務所総監、コンサルティング会社の代表取締役などを経て、2007年から株式会社中国市場戦略研究所(cm-rc.com) と上海CMRC代表。著書に「中国人に売る時代!巨大市場開拓の成功の法則」(日本経済新聞出版社2009)、「中国人にネットで売る~2つの“ネット”の正しい使い方、つくり方」(東洋経済新報社2011)などがある。

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