中国面面観

変化を見せる清明節のお墓参り

2014.06.17

 清明節とはお墓参りをし、ご先祖様を供養する中国の伝統的な風習である。筆者が小学生だった頃などは、学校行事で全生徒が清明節に遠足に出かけ、革命烈士(革命に殉じた人々)を参拝するようなこともあった。まさに「中国のお盆」とも呼べるような日であり、今年は4月5日から7日までが清明節の3連休だった。本来は、各地から人々が故郷に戻り、先祖代々の墓前で香を焚き、故人を偲ぶべき日であるが、近年は「代客掃墓」(お墓参り代行サービス)が広がりをみせたり、お供え物が高級化したりするなど、清明節は徐々に変化を見せている。

■「代客掃墓」は認めない?■
 このところ清明節をめぐるサービスで注目を浴びているのが、インターネット上に出現した「代客掃墓」だ。事業展開する会社は数十社ほどあり、お金を振り込めば、顧客の要望に合わせて様々なサービスを行ってくれる。「代跪」(代わりにひざまずく)、「代哭」(代わりに泣く)、「代献花」(代わりに献花する)といったメニューに対して、「普通」、「ゴールド」、「ダイヤモンド」といったランクがあり、最高額は1,000元(約1万6000円)を超える。また、墓参りの全過程の写真(または動画)を証拠として依頼主に提供することもやってくれる。

 しかし、清明節の前日午後の時点で、多くの代行業者の契約件数はゼロだった。依頼主と代行業者の間にあるのはビジネス上の関係だけであり、まったくの赤の他人だ。先祖の供養を赤の他人に任せるのはさすがに気が引けるようで、墓参り代行のビジネスは広く受け入れられないのかもしれない。

 では、自分たちで墓参りをしているのかというと、必ずしもそういうわけではなさそうだ。清明節は3連休になってはいたものの、やはり故郷から遠く離れて生活する人にとって帰省は難しい。例えば筆者の場合、中学校時代の50人のクラスメイトのうち、故郷(遼寧省の瀋陽)に残っているのは10人程度であり、大多数が北京や上海をはじめ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本などの世界各地で生活している。中国国内であっても3連休で帰省するのは容易ではなく、海外であれば尚更だ。清明節にお墓参りをするというのは、現代中国人の悩みの一つであり、故郷に戻りたいという気持ちはあっても叶えられないというのが実情だ。

■お供え物が高級志向化■
 「代客掃墓」は思ったほど繁盛していないようだが、お供え物を派手にふるまうという現象は古くからあり、一部は高級志向を強めている。中国ではお墓参りの際に生花や花輪を供え、紙銭(冥土の紙幣)を燃やす風習があるが、お供え物のマーケットは新たなブームを迎えている。伝統的な紙銭のほかにも、紙でできた「高級車」や「別荘」、「有名なお酒セット」などが登場している(いずれも燃やすもの)。

 そのほかにも「大型液晶テレビ」や「iPhone」、「タブレットPC」、「WiFiルーター」などのハイテク製品を模したものある。紙でできた「別荘」のなかには「3階建て」や「美女メイド付き」などもあるという。こうした奇妙な供え物などには興味がないという人が大勢いる一方で、一部のネット通販では月間販売量が3桁を突破していることから、一定のニーズはあるとみられる。

 先祖や故人が「iPhone」や「タブレット」など見たこともないものをもらって喜ぶかどうかはわからないが、「拝金主義」の価値観で高級志向のお供え物を押し付けがましく贈ってしまっては、失礼に当たるかもしれない。

■形式に拘らず、今を大事に■
 清明節にお墓参りするのは、あくまでも先祖に対する感謝や敬意を表す形式の一つである。先祖を供養する伝統はお金で代行できるものではない。心をこめて供養することこそ、清明節の本来的な意義ではないだろうか。

 清明節の期間中のお墓参りの年齢層をみると、ほとんどが中高年だそうだ。若者の墓参りは少なく、故郷に残る親達からすれば、将来の自分たちの墓がどうなるかは心配の種かもしれない。古くからの伝統を守ってほしいと願うものの、子供に迷惑はかけたくないという思いもあり、そうしたジレンマを抱える人も多いようだ。だが、清明節に込められた先人を敬う精神に基づけば、形式的な将来の墓参りよりも、いま生きている祖父母や両親の幸せを考えることこそ重要なのかもしれない。

(結城 氷奈 株式会社ニーズ 中国エコノミスト)

【執筆者略歴】
 2007年北海道大学法学部卒業、同年第一生命保険相互会社に入社、同5月第一生命経済研究所に出向、中国経済担当エコノミスト。Bloomberg TV中国経済コメンテーター。日本経済新聞、週刊東洋経済、モーニングスター、株式新聞などのメディアへの寄稿多数。

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