中国面面観

中国に最初のゴルフ場ができて30年

2014.08.11

 この夏はスポーツイベントが盛り沢山で、寝る暇もない方が多かったかと思われる。サッカーのワールドカップのほか、テニスのウィンブルドン選手権、自転車のツール・ド・フランス。ゴルフでは6月の全米オープンに続き、7月の全英オープン。8月には全米オープンテニス、全米プロゴルフ選手権が開幕する。

 ボールを使ったスポーツに関して、筆者はもっぱら観戦する立場だが、唯一たしなんでいるのはゴルフである(初心者レベルだが)。折しも、今年は中国にゴルフ場ができて30周年に当たる。そこで、しばし筆者の趣味にお付き合いいただき、中国のゴルフについて、ご一緒にラウンドしていただきたい。

■中国初と世界最大のゴルフ場■

 中国におけるゴルフの発展は1980年代前半にさかのぼる。84年に香港の投資家によって建設された中山温泉高爾夫球会(ゴルフグラブ)が広東省中山市に開業した。これが中国本土初のゴルフ場である。翌85年に深センゴルフクラブ、87年に北京ゴルフクラブなどがオープン。しかし、当時、ゴルフ人口はごく僅かで、政府高官のほか、華僑、外国人が中心であり、90年代初め頃のゴルフ場の数は全国で約10カ所だった。

 92年にトウ小平の南巡講話をきっかけに、改革開放が加速するなか、同年12月にミッションヒルズ・ゴルフクラブ(中国語名:観瀾湖高爾夫球会)が設立され、94年12月に正式開業した。同クラブはギネス世界記録に認定され、世界最大の12コース・216ホールを有している。その後、全国でゴルフ場の建設ラッシュが続き、2000年代前半で約150カ所、09年末には約350カ所に増加した。プレーヤーも従来の層に加え、中国人実業家や高所得のホワイトカラー層にまで広がっている。

■中国のゴルフ人口と消費■

 中国の大手ゴルフ場建設・管理会社「朝向集団」が発表した報告によると、2013年時点で中国本土のゴルフ場は521カ所あり、ホール数は合計11,497に上る。18ホールのゴルフ場に換算すると、639カ所となる。09~13年の純増数は173カ所で、年間10.6%のペースで増えている。

 ゴルフ人口(満12歳、過去12ヵ月内に少なくとも1ラウンドした人)は110万~120万人。そのうち満18歳で年間8ラウンド以上のコア人口は前年比9.8%増の42.4万人に上り、09~13年の年平均増加率は9%である。日米のゴルフ人口(08年時点、英国の調査機関Sports Marketing Surveys)を見ると、米国が2,860万人で人口の約9%、日本が950万人で同7%である。これに対し、中国は0.1%にも満たない。中国のゴルフ人口は今後のゴルフ環境の整備にともない増える余地が大きい。

 ゴルフ関連の消費も増えている。ゴルフ人口の年間消費金額分布では、1万元以上3万元未満が最も多く25%を占め、3万元以上5万元未満と5万元以上10万元未満はそれぞれ21%、20%で、10万元以上が16%、5,000元以上1万元未満が12%、5,000元未満が6%となっている。

■マナー向上が急務■

 ゴルフ人口が増えるにつれ、プレーのマナー向上が急務となっている。むろん、きちんとマナーを守るゴルファーもいるが、そうでないプレーヤーも少なからずいて、時には痛ましい事件まで発生している。6月に北京のゴルフ場で、あるプレーヤーがパッティングの調子が悪かったため、怒りのあまりにパターを投げ、キャディを負傷させただけでなく、その後の対応においても態度が悪かったという。

 同じく6月に成都のゴルフ場で、プレーヤー二人がキャディを汚い言葉で罵り、グリーンをひどく傷つけたと報じられた。さらに、6月29日に中国で行われたプロのツアーで、中国選手と韓国選手がグリーン上で殴り合い、二人とも競技資格を取り消された。

■「紳士のスポーツ」の精神■

 ゴルフは良く「紳士のスポーツ」と言われる。それは、ゴルフのゲームには、「審判員」はおらず、あくまでプレーヤーの自己申告、判断に委ねるため、プレーヤーの「誠実さ」と「自律」を要求するからである。なお、公式競技の場合、競技委員と言われる人がいるが、問題が発生し、プレーヤーがその問題を解決できない時に裁定を仰ぐのである。

 世界統一のゴルフ規則もその第1章はマナーに関する記述であり、その中の「ゴルフの精神」の項に次のように載っている。

 「ゴルフはほとんどの場合レフェリーの立ち会いなしに行われる。また、ゴルフゲームは、プレーヤーの一人一人が他のプレーヤーに対しても心くばりをし、ゴルフ規則を守ってプレーするというその誠実さに頼っている。プレーヤーはみな、どのように競い合っているときでもそのようなことに関係なく、礼儀正しさとスポーツマンシップを常に示しながら洗練されたマナーで立ちふるまうべきである。これこそが正に、ゴルフの精神なのである。」(『2014年版ゴルフ規則』日本ゴルフ協会HPより)

 さらに、二つのゴルフの名言を紹介しよう。

 「ゴルフにレフェリーはいない。プレーヤーは、自らがレフェリーであって、すべての問題を裁決し、処理し、責任をとらなければならないのだ。」(ホラス・ハッチンソン:1886年と1887年の全英アマチュア選手権のチャンピオンで最初のゴルフ評論家)。蛇足だが、この言葉は人生にも当てはまると思う。

 「スコアを誤魔化さなかった私を褒めてくれるのは、銀行強盗をしなかった私を褒めてくれるようなものである。」(球聖と呼ばれたボビー・ジョーンズ)

 ゴルフはますます普及する見込みだが、その真髄をつかむには、技術の習得だけでなく、その精神を会得することが重要と言えよう。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
 1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。 

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