中国面面観

中国式クリスマス

2015.12.30

 クリスマスシーズンになると、中国でもショッピングモールやレストランなど、あちらこちらでクリスマスソングが流れ、サンタクロースの格好をする店員を至るところ見かけます。中国本土では、クリスマスは国民の祝日ではないので、政府機関や会社、学校は普段通りですが、近年ではさまざまな方法でクリスマスを祝い、中国独特の慣習も出来上がっています。

■聖誕節、平安夜、聖誕老人■

 クリスマスは中国語で「聖誕節」といいます。イブは「平安夜」、サンタクロースは「聖誕老人」、クリスマスツリーは「聖誕樹」、クリスマスプレゼントは「聖誕礼物」、クリスマスディナーは「聖誕大餐」、「メリークリスマス」は「聖誕快楽」。

 19世紀に宣教師によって中国に伝えられたクリスマスですが、1949年に共産党政権の樹立後、「聖誕節」という言葉はほとんど封印され、改革開放後にようやく復活しました。1989年に「人民日報」が、上海の若者の間で春節(旧正月)よりもクリスマスの方が盛り上がっていると報じられ、これが改革開放後のクリスマスに関する最初の新聞記事となりました。

■中国的クリスマスの過ごし方■

 中国に伝えられたクリスマスは、中国独特の過ごし方も形成されています。本来、クリスマスはイエス・キリストの誕生を記念する日で、欧米のクリスチャンの家庭では家族と一緒に過ごし、教会のミサに行くのが一般的な行事です。

 しかし、中国のクリスマスは友人や恋人同士ではしゃいだりして、むしろバレンタインデーのようなノリが多く見受けられます。街には彩りのイルミネーションで飾られ、贈り物をしたり、豪華なクリスマスディナーに行ったりします。

■クリスマスイブにリンゴを贈る■

 クリスマスはプレゼントがつきもの。そのプレゼントで中国独自の発想で生まれたものがあります。リンゴを贈ることです。特に若い男性が彼女に贈る場合が多いようです。クリスマスに贈るリンゴには特別な名前があり、「平安果」と呼ばれます。

 中国語でリンゴは「苹果(ping guo)」、そして「イブ」、つまり「平安夜」は「ping an ye」といいます。この「ping」の字をかけて、クリスマスにリンゴを贈るという習慣になったのですが、やや無理があるように思うのは筆者だけでしょうか。さらに、イブに「平安果」を贈ると平安に過ごせるとまで言い伝えられている。なかなかの商魂です。

 「平安果」のリンゴ自体は普通のリンゴで、きれいな箱や色紙でラッピングされ、なかには「聖誕快楽」(メリークリスマス)などの言葉が印字されているものもあります。「平安果」は大体1個10元前後で売られていますが、クリスマスが過ぎると、ラッピングなしで普段の姿に戻り、その値段も「平安果」の半額以下に戻ります。

■義烏――クリスマス用品の生産基地■

 童話の中では、サンタクロースが世界中の子供たちに届けるクリスマスプレゼントのおもちゃは、サンタクロースが住んでいるフィンランド最北端のラップランド州にあるおもちゃ工場で作られているとされています。

 しかし、現実の社会では、世界の約6割のクリスマス用品は、ラップランドから数千キロも離れた中国の沿海部にある小さな街“義烏”で作られています。ここには、童話のなかに出てくる妖精もなく、純白の雪もなく、トナカイもなく、その代わりに数えきれない工場や、低賃金で働く労働者、卸売り中心のお店が集まっています。クリスマスを祝う人々にとっては、クリスマスは生活の一小節ですが、義烏の労働者や生産販売業者にとってはサバイバルでしょう。

 彩りのクリスマスイルミネーションが輝く街を歩き、たくさんの可愛いオーナメントで飾られたツリーを眺めるとき、これらの美しさを生み出す人々の努力を思い出さずにいられない今日この頃です。

(李粹蓉株式会社ニーズキャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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