中国面面観

中国の将来像はどこにあるのか

2016.04.27

中国がもはや重厚長大産業に頼る経済モデルを維持できないのは明らかだ。とは言え、消費やサービスで高成長を持続するのも「言うはやすし」。実は日本もそれを長く追及してきたが、胸を張って「実現した」とは言い難い。

 こうした状況だが、浙江省台州郊外に帰省した一人の中国人が、最近の「田舎」の消費力が格段に成長していることに驚嘆したという文章を発表していた。これからの中国の経済成長のあるべき姿を映し出しているように感じられ、とても興味深かった。この場を借りて、中国の田舎の現状と将来の可能性を紹介させていただきたい。

■意外に心地よい田舎の生活■

この筆者が帰省した際に驚いたことは、田舎に住む人々の生活水準が想像以上に高いことだ。確かに中国の景気はあまり良くない。ただし、台州郊外では仕事がなくなってしまうようなこともなく、実はほとんどの家庭が自家用車を保有しているうえ、カネとヒマを持て余しており、欠けているものといえば娯楽レジャーの場所や種類という状況だという。

 この筆者は都市部の中国人に対し、「驚いてはいけませんよ」と実情を紹介している。つまり、田舎の状況は都市住民が想像するよりはるかに優雅なものであり、ましてや普通の日本人のイメージを凌駕していることを意味しよう。

■カネヒマはあるが、使い道がない■

田舎の優雅さの象徴として、この筆者は具体例として、実父を挙げる。「小学校しか出ていない父がスマホを自由に操り、微信(LINEのようなもの)で友人と連絡を取り合っている。映画のチケットなども、微信を利用して割引料金で購入している」という。

 春節(旧正月)もトランプ遊びに飽きたら、車で周辺の景勝地を巡ったり、近所のレストランで美食三昧にふけったり、更にどうしてもすることがなければ、街に映画でも見に行く。問題点といえば、繰り返しになるが、カラオケや映画、マージャンなどを除けば、他の娯楽が見当たらない、あるいは極めて限られることだ。

 ここに、中国の消費社会の矛盾の一つがあると強く訴えている。小都市や郊外に住む中国人はカネとヒマを持て余しているのに、それを使う場所がほとんどないというのだ。

■大都市よりも高い実質可処分所得■

大都市の住民と比べれば、これらの人々の所得は確かに低い。それでもよく考えてもらいたい。上海や北京など主要都市の住民が住宅にかける費用はおそらく、地方都市の住民の7~8倍に達しているであろうし、日常生活の支出も2~3倍はかかるだろう。一方で所得自体は2~3倍の差しかないはずだ。大都市に住む若者が家を買おうと決心すれば、毎月の可処分所得は非常に限られたものになるに違いない。

 これに対して地方都市の若者は、そうした圧力とはかなり離れたところで生活をエンジョイできる。地方都市の若者の一般的な月収が4000~6000元とすれば、飲食に費やす約1000元を除けば、それ以外のほとんどを自由に消費することができることになる(一カ月の小遣いが数千元もあれば、日本の基準からしても十分ということができよう)。そして、地方都市の若者もカネとヒマを持て余している人々であるというわけだ。

■医療や育児のインフラも不十分■

生活圏は確実に広がっているのに、生活面でのインフラが足りていないのが、地方都市のネックといえる。たとえば、地方都市でも年配の人々の最大の関心事は健康や医療にシフトしつつある。スマホの普及によって、親せきや知人の病気と治療の話題が途切れることはなく、処方された薬、日々食する健康食品まで話題がどんどん膨らんでいく。

 しかし、地方都市には高いレベルの医療機関はおろか、人間ドックや健康診断などのサービスを提供できるクリニックも足りていないのが現状だ。

地方都市のこうした状況は、教育や育児の分野でも同じだ。すぐれた高等教育機関が十分にないのは、地方都市の世界的な宿命と言ってしまえばそれまでだが、幼児を遊ばせる遊園地や体験型テーマパークなども充分ではない。

 この筆者が住む付近の中堅都市である台州は人口が557万人で、浙江省でも有力都市の一つのはずだが、「子供向けの遊園地は数が少ないうえ、人が多すぎて、混みすぎている」と強く不満を漏らしている。

■中国の将来は、地方都市の消費しだいか■

 このように地方郊外の消費余力は想像以上に大きなものがあると、この筆者は主張する。その一方で娯楽や医療、文化、育児・教育といったサービス分野の整備はまだまだ立ち遅れた状況にあり、まだまだ発展の余地がある。つまり、そこに中国全体のこれからの成長市場や、将来の社会の風景が示されていると述べている。

おそらく、日本企業の中国ビジネスの将来性もそこにあることは間違いないのだろう。ただ、内向き志向を強める日本企業やそこで働く日本の若者が、中国企業でもまだ攻めあぐねている中国の地方都市・郊外市場をどのように攻略するか。日本企業にとっての中国ビジネスのハードルが、さらに高いものになりつつあるように感じられた。

(吉永東峰株式会社ニーズキャピタルデザイン代表取締役)

【執筆者略歴】
1998年法政大学経済学部卒業。同年コカコーラに入社、資金財務、経営企画に従事。2001年ネットチャイナ(現、新華ファイナンス)入社、中国金融情報サービスの企画とマーケティングを統括。2003年青山学院大学MBA in Financeを取得。2006年EuromoneyグループISI Emerging Markets日本支社長。2007年11月スパークス・アセット・マネジメントの中国プロジェクトに参画、QFIIをはじめQDIIのマーケティング、中国ファンドの運用企画などに携わる。

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