中国街角ウォッチ

中国住宅ローン事情~借金嫌いの中国人が住宅ローンに走ったわけ~

201109.01

~借金嫌いの中国人が住宅ローンに走ったわけ~

 中国では、公的住宅の実物分配制度から貨幣補助制度へ移行したことで住宅ブームに火がつき、本来借金の嫌いな中国人の意識が少しずつ変化を見せ始めている。そういった中、住宅取得が結婚する必須条件の一つという考え方が生まれ、広がりつつある。

■結婚は不動産市場の強い支え役■

 近年、中国の住宅ローンが増え続ける背景の一つに、中国の結婚観が影響している。日本においても結婚を機に住宅を購入するというカップルが存在するが、中国ではマイホームを準備してから結婚するという考えが非常に深く浸透している。不動産ポータルサイト「捜房網」が発表した2010年のインターネット調査によると、男性の41.3%、女性の51.0%が住宅取得は結婚するための前提条件であるとしている。そのため、「住宅を買えないから、結婚できない」と考える男性も少なくない。

 中国では、新郎新婦の結婚初日に親類・友人が新居におしかけ、二人を祝福するという風習があり、新居を用意しておくことが結婚式の準備の一部になっているという面もある。現在、結婚のために住宅を取得しようとしている多くの人は、「80後(パーリンホウ)」だと言われる。「80後」とは、1980年以降に生まれた世代のことを指しており、まだ働き出して日も浅い。そのため、手元の貯蓄が少ないが、そうした中でも結婚用の新居を購入するという意識が非常に高く、住宅ローンの利用を広める一因となっている。

■婚姻法の新解釈は住宅需要に繋がるか■

 2011年8月に、中国の最高裁判所は「『中華人民共和国婚姻法』に関する若干問題の解釈(三)」を公布した。その中で、第七条は「婚姻後に片方の両親が出資し購入した不動産が、出資者子女名義で登記された場合、自身子女に対する贈与と見なし、当該不動産は夫婦の片方の個人財産になると認定すべきである」と規定している。

 また、第十条は「夫婦の片方が婚前に不動産売買契約を結んだ場合、個人の財産で頭金を支払い、かつ住宅ローンを組み、婚姻後に不動産登記が頭金支払い者の名義となった場合、離婚時に夫婦双方の話し合いが合意に至らねば、当該不動産は不動産権利人の個人財産になると認定することができ、未払い分に関しては不動産権利人の個人債務になる」と規定している。これらの解釈が公布されたのは、離婚率が高まる中、不動産という財産トラブルが多く発生しているという背景がある。婚姻法の新解釈は離婚時の財産分与を明確化しており、結婚前の住宅購入に安心感をもたらすだろう。

 結婚話をめぐっては、女性の母親の権限が大きい。住宅を買わない男性は、女性の母親から結婚を許してもらえないことが多い。このため女性の母親から男性に対する住宅取得への圧力があり、不動産市場の下支え役の一つにもなっていた。一人っ子政策の下で大事に育てられてきた子どもたちは、今ちょうど結婚適齢期を迎える時期に差し掛かっている。これまで結婚前に住宅を購入するのは男性だったが、婚姻法の新解釈にともなう安心感を背景に、今後は女性の親たちが娘の将来のために住宅を一軒準備しておくという動きが出てくる可能性もある。

 婚姻法の新解釈が不動産の新しい需要に繋がるかどうかはともかく、結婚のため住宅を取得しようとする「80後」がたくさんいるのは事実だ。彼らの上の世代の中国人は、節約生活が染みついた消費スタイルで、借金が嫌いという意識を持っていた。しかし、経済成長とともに、収入が日に日に増える「80後」は消費文化やローンといった新しい消費スタイルが染みついていることに加え、目先では結婚のための住宅取得の必要性に迫られている。中国の不動産市場はこのような「80後」の結婚需要にも支えられ、当面は大きく崩れることはなさそうだ。

(董氷 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/エコノミスト)

【執筆者略歴】
 2002年来日。2007年北海道大学法学部卒業、同年第一生命保険相互会社に入社、同5月第一生命経済研究所に出向、中国経済担当エコノミスト。Bloomberg TV中国経済コメンテーター。日本経済新聞、週刊東洋経済、モーニングスター、株式新聞などのメディアへの寄稿多数。

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