中国街角ウォッチ

~中秋節の「月餅」商戦~今年はエコ化?~

2011.09.28

■中秋節と月餅■

 9月12日夜、中秋の名月にふさわしく、満月の輝きがまばゆい限りでした。中国では、この日は旧暦の8月15日に当たり、旧正月と並ぶ中国の重要な伝統祭りのひとつ「中秋節」です。夜は家族揃って美しい月を観賞しながら団欒するのが習わしで、ここで欠かせないのが供え物の「月餅」(ゲッペイ)です。月餅の種類は色々あり、代表的なものは、日本でよく見かけるこげ茶色の皮の「広式」(広東式)、パイ生地のような皮でできた「蘇式」(蘇州式)があります。餡は、ハスの実と小豆が最も一般的ですが、ナッツやドライフルーツからハムといった塩味のものまで実に多彩です。

■贈答品としての月餅の高級化■

 中秋節が近づくと、北京では車の渋滞がひどくなるようです。現地の運転手の話によれば、これは月餅を贈るため車が増えたからだとか。いま、中国では、自分で月餅を買って自分で食べるというよりも、買って人にあげる、もらったものを食べる傾向にあります。親戚、友人さらには企業同士の月餅の贈り合いはもはや中秋節の必須行事となりました。月餅メーカーにとって個人客に加え、取引先への贈答や従業員への配布のために大量に月餅を購入する企業が主要顧客になっています。

 贈り物としての性質が強まった月餅は、年々高級化しています。フカヒレ、アワビ、燕の巣など中華料理の高級食材が月餅の餡として詰め込まれるようになっただけでなく、豪華な「おまけ」がつけられました。お茶や、お酒、煙草との抱き合わせは当たり前で、プラチナのネックレス、ゴルフクラブ、チタン製中国将棋盤などがついてくる超高級月餅まで現れ、なかにはマンション付きで1箱数百万元の月餅が売り出されたことがありました。こうした超高級月餅は時に賄賂の道具として使われることもあり、誠に残念です。

■高級月餅からエコに回帰■

 幸い、今年は変化が見られました。まず、包装が簡素化したのです。シンプルな紙箱入りや、ばら売りが増え、派手な外箱のものが少なくなりました。その背景の一つに、過剰包装に対する政府の規制強化があります。政府規定で包装の空間率や、販売価格に占める包装コストの割合などが定められ、違反者に対して罰金刑を科します。また、500元や千元以上の贈答用高級品はやや影をひそめ、100~200元前後のものが売れ筋だったことも今年の特徴です。エコへの関心の高まりや足元の景気減速懸念が、簡易包装や比較的手頃のものを選ぶ消費者が増えたのと関係するかもしれません。

 包装だけでなく月餅本体の中身も例年とは様子が違います。月餅の見栄えが少々悪くなったのです。それは、政府が新しい食品添加物使用基準を施行し、防腐剤や食品添加物の使用制限を厳格化したので、月餅の皮のつやがやや欠け、餡も食材本来の素朴な色を幾分取り戻したからです。月餅の消費期限も短くなり、例年は3カ月から6カ月のものが多かったが、今年は2カ月前後のものが多くなっています。さらに、高齢化や健康重視という社会の流れを反映して、低糖、低脂肪、五穀などの新製品も増えました。

■原料高も利幅が大きい■

 今年の月餅がエコ化しているのは、原料価格の上昇とも関係します。中国商業連合会が中秋節の約1カ月前に発表した報告によれば、今年は月餅の原料が軒並み上昇し、そのうち小麦粉は約10%、砂糖は約30%、ピーナッツオイルは約10%、豆類は20%以上、包装資材、人件費、輸送コストなども概ね10%超の上昇となりました。特に、餡の主原料であるハスの実は、主要産地の湖南省が暴風雨に見舞われ、大幅減産となったため、上昇率が約40%に達しました。その結果、今年の月餅のコストは1個当たり20%前後上がりました。

 しかし、原料高は、月餅の高い利益率の構造に大きな影響を与えていません。例えば、1箱小売価格300元の中高級月餅の場合、月餅本体の原料コストが約25元、そこそこの包装のコストが約50元で、両方合わせて75元になります。企業などの大量購入に対する2~3割引の優待を与えてもメーカー側に依然大きな利益が残ります。

 この高い利益率を狙って月餅業界に参入する企業が後を絶ちません。業界団体のデータによると、2010年に全国の月餅メーカーは約1万社に上り、年産量は25万トン超、売上高は150億元で、主要企業や有名ブランドのここ数年の売上高は年平均15%以上で伸びています。近年、ハーゲンダッツや、スターバックス、ネスレなど、これまで月餅とは無縁と思われる業種からの参入も増え、月餅アイス、コーヒー味月餅など新製品が創作され、月餅業界に新たな可能性をもたらしたと言えましょう。

■祭りの後、売れ残りの月餅はいずこへ■

 日本では中華街などに行けば、一年中、月餅を賞味することができますが、本場の中国では月餅は年に一度の季節性商品で、一部観光客向けの店を除けば、中秋節シーズン以外は販売していません。それでは、お祭りの後、売れ残りの月餅はどこに行ってしまうのでしょうか。

 多くのスーパーでは、中秋節直前からすでに値引き販売を実施するので、売れ残りはそれほど多くないという。スーパー等での月餅販売は、代理販売の場合、売れ残ったものは全部メーカーに返品しますが、買い切り販売の場合、販売店自身で売れ残りを処理しますが、従業員に配るケースが多いようです。老舗月餅メーカーの場合、中秋節前にすでに完売するところが多く、たとえ売れ残りがあっても自身のブランドが傷つくことになるので値引き販売はほとんどしないとのことです。

 以前、メーカーが売れ残りの月餅を再加工・再利用して別の商品に変えて販売するなど、品質や衛生面で問題になったこともありましたが、今年は政府の取り締まりが厳しくなったこともあり、再加工等はあまり見当たらなくなったようです。そもそも、現在、メーカーの多くは、数カ月前からの予約制の導入や引換券の事前販売などで事前に需要を把握し、それに基づいて生産を調整する体制になっているため、売れ残りが減少していると言われています。

■強敵出現も主役はやはり月餅■

 最近、中秋節に月餅の代わりに、ワインやほかの菓子を贈ることも増えています。しかし、中秋節の満月にはやはり月餅が一番似合うと思います。さて、来年はどんな月餅が登場するのか。楽しみです。

(李粹蓉 株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員)

【執筆者略歴】
 1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13 年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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