中国面面観

人民元から目が離せない「―中国為替レート市場化への展望―」

2014.08.11

 2013年11月の中国共産党の重要会議(三中全会)で採択された「全面的に改革を深めるうえでの若干の重大問題に関する決定」によると、中国人民銀行(中央銀行)は人民元為替レート形成メカニズムの改革を更に推進し、人民元為替レートの柔軟性を強化すると決めた。様々な兆しは、2014年が「改革の年」になることを示している。人民元為替レートの市場化は各界から注目されており、中央銀行にとって重要課題の一つになる見通しだ。

■元高、元安双方向への柔軟性強化■

 改革の主要内容は、米ドルペッグの「固定相場制」から、市場需給に基づき、通貨バスケットを参考に相場を調節する「管理変動相場制」への移行という。具体的には、為替相場の変動幅について、2005年で当局発表の基準値に対して上下0.3%に設定されたが、2007年から上下0.5%に、2014年に上下1.0%に、そして2014年3月17日から上下2.0%に拡大された。また、通貨バスケットについては、対米ドル安定の為替政策によりながら、他の貿易相手国の対ドル変動も参考し、人民元中間レートを調整する。

 現在採用されている為替相場制度は完全ではないが、一定の変動が認められている。2005以降の金融改革めぐる主な動きからみると、中央銀行は元高、元安双方向への柔軟性を強化する決心を明らかにした。

■市場化改革は急務■

 国際金融では、1)固定相場制、2)独立した金融政策、3)自由な資本移動は、同時に実現できないという「国際金融のトリレンマ」がある。現在の為替政策では、人民元は米ドルに対して変動幅に制限があるから、中央銀行は米ドルの介入を実施しなければならない。結果として、米国の政策に同調せざるを得なくなり、国内金融政策の独立性も妨げられる。また、為替コントロールの関係で、人民元の為替レートが過小評価され、輸出品の価格が安くなり、貿易黒字も巨額に上る。貿易不均衡で「不当な為替操作」と非難された以上、人民元レートの柔軟化が要求されている。さらには、世界的に外国為替市場が拡大、国際化するなか、中国の為替市場システムが金融管制の関係で、閉鎖的で規模も小さいという状況がある。為替市場の健全化、人民元の国際化を目指すとすれば、為替レートの自由化が求められる。

 内外の圧力に対応して、人民元相場の市場化が必要である以上、できるだけ急がなければならない。

■チャンスだが、リスクも高い■

 為替相場の市場化で、金融政策の独立性や貿易の均衡というメリットがあるが、一方でマーケットボラティリティ(市場変動)も大きくなる見通しだ。元高では輸出企業が不利になる。結果的に、労働集約型の産業が海外へ移転し、貿易黒字で成長してきた実体経済に悪影響がもたらす可能性がある。一方、元安では輸入インフレ圧力が更に高まり、中国に流れている投機資金が海外に流失してしまう可能性もある。国内外の圧力に対応して、当局は人民元柔軟化の重要性が認めるが、市場化に伴ってマクロ経済が不安定化する可能性が高いため、金融改革に対して慎重な姿勢をとってきた。

■人民元をめぐる「中国脅威論」■

 「世界の工場」と呼ばれる中国は、安い人件費で輸出製品が廉価であるうえ、固定相場制で人民元が輸出に有利になるよう誘導できる。結果として、他国の雇用を奪い、ドルペッグで通貨価値を低くとどめ、不公正な価格で他国の現地産業を圧迫していると、米国に非難される。

 表面的に、米国が人民元相場の柔軟化へ圧力を加えているのは、自国の貿易赤字を削減するためだが、たとえ中国の対米輸出が減ったとしても、米国の貿易赤字の削減に結びつくものではなく、輸入先が中国から他の新興国に代わるだけかもしれない。人民元の切り上げについて、米国の中国に対する強硬な姿勢の背後には経済的な考えに加え、「中国脅威論」がある。

 米国で留学するうちに「中国脅威論」という言葉をよく耳にするようになった。雇用を奪い、対中貿易赤字が巨額になる危機感があるうえ、中国による米国企業の買収が相次いでいるためで、精神的にも中国の発展に脅されていると感じられるようだ。また、アフリカにおける中国の進出は米国にとって、まさに政治的な脅威である。将来の中国は米国の代わりに世界一の強国になると予測する人もいるほどだ。

 私自身は中国人だが、米国で「中国脅威論」を聞くと、中国の発展が過大に評価されるのかもしれないと感じる。中国のGDP成長率だけを見ていると、大きなものだという印象を受けるが、そのほとんどは外資企業が作り出したものである。中国での加工貿易の主体は、ほとんどが外資企業であり、海外から原料を輸入し、本土の安い労働力を利用しているにすぎない。また、加工貿易による輸出は、中国の経済が成長してきた原動力だが、一方で実体経済との密接度はそれほど大きくはない。

 なお、人民元レートの切り上げ論を振りかざす人は、中国を過大評価しているかもしれない。変動幅が広げられてく今後について、「切り下げ」の可能性も高い。

(曽悦心 インターンシップ生)
【執筆者略歴】
 米国ミドルベリー大学在学中。内藤証券中国部にて研修中に本稿執筆。

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