中国面面観

あのころ・そのとき「~一夜漬けのおはなし~」

2012.09.21

 選挙が近づいているという。

 こわし屋で有名な先生が「国民の生活が第一」を党名に、取り巻きやチルドレンたちを集め、“維新”は「参議院廃止、衆議院の定数を半分」など高邁な狼煙を掲げて、“信”を問うという。

 ことばだけは結構なお話であるが、なにがわかっているのかと自問した。

 たとえば消費税のこと、5%が8%、ついで10%になる、増税はだれでも好ましいことではないが、それがどのように使われているかが問題。ヨーロッパではどうか、中国ではどうかと考えが及んで、中国の増値税のことが気になった。

 税率17%の増値税は、課税対象が異なるのでイコール日本の消費税ではないが、中国の庶民にとってそれは税負担と受け止められているのか。駐在経験の長い後輩に聞いてみたが生活上では消費税と受け止めていた記憶はないと、知人の中国人に尋ねてくれた。転送されてきたその返事では、一般的な説明のあと、政府高官の汚職問題についての憤懣が述べられていた。さもありなん、文革再現を思わせるような言動で人民の支持を受けていたと思わせるリーダーが海外などにも不正の蓄財を隠し持っていた、この国の上層部。庶民の不満は充満しているが、一党独裁でそのはけ口がない。とすると、日本のつまらぬメディアも、それはガス抜きになるのか、それともそれは、たぶらかしなのか。

 一日大阪へ足を運んで、年来じっこんの専門家(公認会計士・税理士)に教えを請うた。わたしにとって一番の問題は、あまり買い物の経験がない、日常的にレシートを見て、消費税のことを考えたことがないということであった。本を買う、そのとき裏表紙にxxx円+税とあるので、支払いのときは消費税を負担したと自覚する。しかし、コンビニなどでたとえばドリンクを買い求めても、レシートは見ずに捨てているが、話を伺いながらレシートを見つめると、表示価格の下に、内税xx円となっている。これは内税なんでしょう、業者負担の消費税なんでしょうと質問すると、さにあらず、表示価格の内にxx円の消費税が含まれていますよということ、と教えられた。それが増税になったとき即、表示価格にモロに反映されるとは日本の市場競争下では考えられないが、負担する税金が増えるのは間違いない。

 西欧の国々では、医療費や教育費は無税と耳にしていたので羨ましく思っていたが、日本でも医療費(社会保険対象)や授業料・教科書は消費税の非対象と聞いてあれあれ、と思った。

 中国でも書籍や新聞、ガス・水道は増値税も通常より安い13%に設定されているとか(電気は要節電のためか17%)。

 ところで、中国の増値税の仕組みはどうなっているのか。

 わたしは最終の小売段階では、内税とばかり思っていたが、さにあらず。すべて、外税であるが、小売段階では日本式の表示価格となっているため、消費者は気づいていないだけの話とか。

 中国の増値税の仕組みのなかで、発票(ファーピャオ)という公式のインボイスが重要な役割を果たしている。この発票は税務当局発行のもので、すべてこれで管理されている(一時偽の発票で混乱したこともあったとか)。そして、その税率は17%と表面的に高く見えるが、実際は販売額x0.17-仕入額x0.17になるので、納付税額は数パーセント以下となる。

 たとえば仕入れ金額80円、販売額100円の場合、(100x0.17) マイナス(80x0.17)、つまり17円-13.6円=3.4円で、この場合、販売額100円の納付税額比率は3.4%になる(これは業者間の取引のケースで、最終消費者が負担する基本増値税率は17%である)。

 中国の消費者(含む駐在員)も日常生活では税負担の意識がないのは、わたしと同じようなことなのであろうか。

 それにしても言い値では買わない、値切らなければ買い物をした気がしない中国の人を相手とする小売店の、税務処理はどのようなかたちで実際に処理されているのであろうか(日本では一千万/年以下の小規模業者は無税であるが、中国でも小規模販売者は仕入れ額控除無しの、販売額の3%増値税が課されているようである)。

 また、サービス業や不動産業は増値税の対象ではなく、営業税3~5%が内税として課税され、これは地方税であるとか。ウ~ン、地方都市の建築ラッシュの裏にはこの税制があるか、業者と役人の癒着が問題になるのもゆえなしとしないか。

 また、先述の増値税は75%が中央の国家税務総局に納付され、25%は地方財政として運用されている由。日本のように中央からの地方交付税システムではなく、地方財政は営業税を含めてかなり豊かなようである。

 中国の税制に、遺産税(相続税)や贈与税がないのが気になった。明・清時代じゃあるまいに、付け届けから袖の下に至るまで制度的に野放しになっているのはどうしたわけか。これでは地方は言うに及ばず、中央高官から解放軍に至るまで汚職まみれになるのは自明の理で、庶民の嘆きと憤りはマグマのように内にたまる。

 事務所に税理士法人キャストの三戸俊英公認会計士のペーパー『中国税務』があった。営業税の、増値税への移行が上海などから暫行されているようだが、 内容は専門的でよく理解できなかった。中国で法の制定は、暫行・試行から制度化されていくのが通例なので、大都市から暫時地方へと改正・実施されていくものと思われる。

 さて、日本のこれからの消費税のことなど。

 素人のわたしが云々できる問題ではないが、将来的に消費税の高率化が避けられないとすれば、まず行政や立法機関の自らの身を切る姿勢が必要であることはいうまでもない。欧州のように生活関連や教育・医療・文化関連品目は無税または低率とする分離課税とすることと、個人や企業の寄付行為を促進するためにその無税化を図ることなどをベースに議論を進めてほしいと考えている。低所得者などへの現金支給などは、怠惰な国民をふやすばかりである。一時期の中国ではないが、自力更生、刻苦奮闘が生活の基本であろう。

 いま思いついてネットサーフィンし、本田直之さんの「北欧が世界幸福度ランキングトップにいる理由」を見つけた。

 「北欧諸国があらゆる『幸福度ランキング』で上位を占めているのはなぜか。世界的に見ても豊かなはずの日本が、どうして81位なのか(2010年ギャラップ『世界幸福度調査』より)」

 そして、デンマークの団体勤務のリナ・インヴァンセンさんの次のような談話が紹介されている。

 「所得の多い人はかなりのものを払う。所得が少なければあまり払わない。平等とまではいかないかもしれないけれど、肩幅の広い人が社会の安定を担っていく。もし何かが起こっても、今の生活を維持していくことが許される。そこにすごく安心感があるんです」

 日本もこのような国になってほしいと痛感した。

(原田 修)

【執筆者略歴】
大阪外大仏語科卒業(1957)後、中国ビジネスに取り組むこと半世紀。前半の25年は輸出入、委託加工、「大中国展」催事(主宰)など。後半の25年は対中投資、進出企業の経営管理などのアドバイザー。初訪中(1964)のあと200余回の訪中&中国を周辺諸国から観察の旅。会社役員、団体役員を歴任。数年来「市民講座」などの常連講師のほか、『中国ビジネスえとせとら』、『徒然中国』を業界紙などに連載・送信中。

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