チャイナマンスリーレポート

6月号

2007年6月1日 内藤証券中国部

~本土市場から~

中国本土市場は、5月(5月18日現在)も好調を持続した。連休明けの5月9日に、あっさりと上海総合指数は4000ポイントを超えた。4000ポイント辺りで動きは落ち着いているが、5月18日現在、4030.258ポイントとなっている。これは、4月末に比べ4.92%、昨年末からで比べると50.63%の上昇となる。
また、上海A株指数も同様の動きで4200ポイントを超え、5月18日現在、4218.915ポイントとなった。4月末に比べ4.56%、昨年末からで比べると49.87%の上昇となり、昨年からの上昇を考えるとかなり大きな上昇となっている。
今回、それ以上に大きな上昇となったのが、上海と深センのB株市場であった。
深センB株指数は、5月18日現在、745.261ポイントとなり、4月末比19.28%、昨年末比71.99%の大幅な上昇となった。更に、上海B株指数は、5月18日現在、360.666ポイントで、4月末からでも56.04%上昇し、昨年末から見ると177.19%と急激に上昇している。
昨年からのA株市場の上昇に対してB株市場に出遅れ感があったことが、今回のB株市場の上昇に繋がったと考えられる。しかし、ここ直前の上昇は異常なものとなっている。
今回のB株市場の急騰を受けて、中国本土では外貨への両替をするため個人が長蛇の列を作った銀行もあると報道されている。中国本土の個人は「個人外匯管理弁法」によって、年間5万米ドルまでの外貨両替が認められている。しかし、中には限度額まで外貨両替をしてしまい、知人などに名義を借りて5万米ドル以上の両替をしている人もいたようだ。

5月18日夜に、中国人民銀行(中央銀行)は5月19日付けで1年物の預金基準金利を0.27%、1年物の貸出基準金利を0.18%引き上げ、預金準備率も6月5日付で0.5%引き上げる。更に、5月21日付けで人民元と米ドルのスポットレートの変動幅を現行の0.3%から0.5%に変更すると発表した。預金準備率に関しては、今年に入り5回目の引き上げとなる。
市場は金利引き上げを予想していたが、急騰直後の金融引き締めであるため、今後の本土株市場に十分注意する必要がある。

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~香港市場から~

5月18日現在、ハンセン指数で20904.84ポイント、ハンセンH株指数で10859.17ポイント、それぞれ4月末比2.88%と8.21%上昇した。
5月11日、中国銀行業監督管理委員会はQDII(適格本土機関投資家)制度の投資範囲を拡大すると発表した。それにより、翌営業日にA株とH株の両市場に上場している銘柄で株価差が大きい銘柄に対して、価格面から割安なH株に買いが入るのではとの期待感でH株が大きく買われた。そのことから香港市場は全体的に大商いとなり、同日の香港市場の売買代金は949億8889万香港ドルと過去最高の売買代金を記録した。
以前から問題になっているA株とH株の価格差は、すぐには解消できない問題だが、今後のQDII商品の販売状況によっては、H株に対する再評価が起きると考えている。(関連記事)

5月18日、中国人民銀行(中央銀行)による金融引き締めがあった。市場は年内の金利引き上げを予想していたため、本土市場は大きく下落しないかもしれない。しかし、仮に中国本土市場が大きく下落しても、香港市場への影響は短期的だと考えている。香港市場は本土株市場のような急激な上昇をしておらず、以前より本土A株と比較してH株等には割安感が指摘されている。また、過去の動きから分かるように、香港市場はNY市場等の影響を受け易い。
中長期的に見た場合、本土株のパフォーマンス悪化はQDII商品の魅力を相対的に増加させるのではないか。QDII商品を通じて中国本土の個人マネーを香港市場に呼び込む可能性が十分あると考えている。

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~統計数字から~

国家統計局は4月19日に、2007年1-3月期の国内総生産(GDP)を始めいくつかの経済統計を発表した。今回、発表日時の変更があったため、高い数字が発表されて金融引き締めがおこるのではないかとの憶測を呼び、当日の株式相場を混乱させた。

高い経済成長率
実際に発表された実質GDP成長率は前年同期比11.1%増で、2006年第2四半期の11.5%以来の高い数字であった。しかし、1-3月期の消費者物価指数(CPI)が、2.7%上昇と事前予想の3%を下回ったことにより、強い金融引き締めは起きなかった。
4月29日に、中国人民銀行(中央銀行)は今年4回目となる預金準備率の引上げを発表したが、預金準備率を0.5%引き上げただけにと止まり、金融引き締めの規模は市場予想の範囲内であった。

中国経済の実態
今回発表された統計数字を見ながら、中国経済の実態を見ていく。まず、高いGDP成長率の原動力は固定資産投資額の増加にある。今回発表された固定資産投資額も伸び率は低下したものの前年同期比23.7%増と高い数字であった。固定資産投資額は、不動産投資や設備投資等を示しており、中国ではここ数年常に20%以上の高い増加となっている。
固定資産投資額の増加は高いGDP成長率と同時に不動産価格の高騰や過剰設備を生んでいる。特に、過剰設備から生産された製品は国内だけでは消費できず、輸出に向けられ貿易黒字を増加させた。貿易黒字(2007年1-3月期)は464億米ドルになり、前年同期に比べ231億ドル増加した。

米国の貿易統計によると2006年の貿易赤字額(通関ベース、名目、原数値)は、8180億米ドル、そのうち対中国が2325億米ドル、対日で884億米ドルとなっている。また、2007年2月では546億米ドルの貿易赤字、うち対中国で184億米ドルとなっており、全体の33.7%を占めている。

中国の貿易黒字が人民元高を生み、それを阻止するために中国は為替介入をおこなっている。中国は前日比0.3%の為替変動を許しているが、実際の変動幅はもっと小さい。人民元高を抑えるために人民元売り米ドル買いの為替介入を行っており、外貨準備高(2007年3月末時点)は1兆2020億米ドルとなっている。
この為替介入により市場に出回った人民元が流動性の増加を招き、更なる固定資本投資を生む形となっている。好調な企業業績に支えられ現状はバブル経済ではないと弊社では考えているが、この循環を放置すればバブル経済が発生しかねない。

中国政府の取り組み
この循環を止めたいのが中国政府であり、現在取り組んでいる。この循環を断ち切るには、いくつかの方法が考えられる。

まず、強力な金融引き締めや為替介入の中止によって、流動性の増加を押さえ込む方法がある。しかし、現在の中国ではこの方法は取れない。中国には三農問題などの所得格差問題がある。今回発表された可処分所得(2007年1-3月期)では、都市部住民で3,935人民元(実質伸び率+16.6%)、農村部住民で1,260人民元(実質伸び率+12.1%)と3倍以上の差がある。
2006年の「中国統計年鑑」によると、2005年度の貴州省農村部の一人当たり純年収1,877人民元に対し、上海市都市部の一人当たり年収18,645人民元となっている。その差は約10倍になる。日本の場合、内閣府発表の平成16年度「県民経済計算」によると2004年度の沖縄県の一人当たり県民所得は1,987千円で、東京都は4,559千円となり、約2.3倍となる。どちらも地域差による物価水準の違いがあるため、この倍率だけで所得格差を論じることは出来ないが、中国の所得格差の大きさを窺い知ることが出来る。
大幅な金融引き締めや為替介入の中止等により流動性の増加を完全に阻止すれば、都市部よりも農村部にダメージを与え、社会全体が不安に陥りかねない。

内需主導型経済へ
もう一つの方法は、生産性を向上させ、内需主導型経済成長へ移行させる方法である。現在、中国政府が推し進める方法ではあるが、ここにもいくつかの問題が存在する。

  • 生産性向上のために必要な技術力をどうするのか。
  • 国内消費をどのように喚起するのか。資本形成型から内需主導型への移行は可能なのか。

今年、全人代で企業所得税法の改正により、国内企業と外資企業の税率や控除方法が統一され、ハイテク企業等に優遇税制が認められた。
このことは外貨や設備投資をもたらす外資企業を誘致することで経済発展を目指していた方向を転換したことを意味する。低付加価値の企業を排除し、高付加価値の企業を誘致や育成することで社会全体として生産の効率化を図ろうとしている。

一方、国内消費を喚起するためには、国民の可処分所得を引き上げる必要がある。特に、中国の場合、低所得者層の引き上げは急務である。
そのため、中国政府は為替介入による流動性の増加が起きている現状でも大幅な金融引き締めをおこなっていない。金利引き上げをほとんどおこなわず、小幅な預金準備率の引き上げを繰り返すことや売りオペで対応している。しかし、過剰流動性回避のために金融引き締めは続けるだろう。
また、財政投資等による農村部対策や物権法の明文化による私有財産の保護等で国内消費を喚起しようとしている。

5月7日に、商務部が発表した今年のメーデー(労働節)連休期間中(5月1-7日)の社会消費品小売総額で前年比15.5%増になるなど、着実に消費は増加している。

このように、中国には難しい問題がいくつもあるが、弊社では内需主導型の経済成長へ移行できると考えており、国美電器(0493)、聯華超市(0980)や華潤創業(0291)などの消費関連銘柄に注目している。


~QDII制度の投資範囲が拡大~

5月11日に、中国銀行業監督管理委員会は商業銀行に対しQDII(適格本土機関投資家)制度で、これまで禁止していた株式への直接投資を認めると発表した。このことにより、中国の個人投資家が海外株式に投資できるようになった。
これまでのQDII商品は、固定利回り商品での運用に限られていたため、人民元高が進む現状において利回りが低下しており、金融商品としての魅力がなかった。そのため、QDII商品の販売実績は、当局の予想を大幅に下回る状況が続いていた。

今回、「株式への直接投資してはならない」という文章が削除された一方で次のような規定が設けられた。

  • 投資する株は、海外の証券取引所に上場する株式でなければならない。
  • 株式に投資できる資金は、一つのQDII商品につき純資産の50%を超えてはならない。一銘柄に投資できる資金は、一つのQDII商品につき純資産の5%を超えてはならない。商業銀行は運用期間において上記の原則に基づき、ポートフォリオを適時調整しなければならない。
  • QDII商品を顧客に販売する際の最低額は、30万人民元(あるいは相当額の外貨)を下回ってはならない。
  • QDII商品の購入先である顧客は、相応の株式投資経験を有していなければならない(適合性の原則)。銀行は具体的な評価基準と手順を定め、顧客の株式投資経験を評価し、評価結果について顧客から署名入りの確認書を徴収する。

今回の投資範囲拡大は中国本土で懸念されている過剰流動性を抑える意味で一定の評価がされている。だが、個人の投資家動向は為替相場や株式相場などに左右されやすいため、中国本土株市場の大幅な上昇が起きている現状では、短期的には影響が少ないと考えられる。
しかし、本土株市場の急激な上昇が止まった時など相場環境に変化が起きた場合、改めてQDII制度は見直されるだろう。A株とH株の価格差が意識され、香港市場の本土系銘柄が恩恵を受ける可能性がある。A株市場と香港市場に同時上場している銘柄にはA株売りH株買いの裁定取引への期待感が生まれ、H株の株価を押し上げる。さらに本土系銘柄の株価を全体的に押し上げる可能性がある。
そのため、A株市場と香港市場に同時上場している銘柄で価格差の大きい銘柄が今後注目されるだろう。しかし、価格差の大きい銘柄は業績が好調でないものもあるので注意は必要だ。

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6月の主な予定

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