チャイナマンスリーレポート

7月号

2007年7月1日 内藤証券中国部

~本土市場から~

中国本土市場は、5月29日に上海総合指数で4334.924ポイントを付けた後、印紙税率の引き上げをきっかけとして、3404.146ポイント(6月5日安値)まで20%以上の下落となった。その後、6月19日終値で4269.524ポイントまで回復したが、5月29日の高値は抜けず、今までのような力強さは影を潜めている。

今回、中国政府は過度の金融引き締めによる経済全体への悪影響を考慮して、過熱する株式市場に限定した政策を行った。実際には、印紙税率を0.1%から0.3%に引き上げたことによる株式売買への影響は少ないと見るが、その背景にある、キャピタルゲイン課税の導入に対する警戒感が相場を大きく下げさせた。
印紙税率の引き上げがきっかけとなり、過熱する株式投資の抑制策としてキャピタルゲイン課税が導入されるのではないかとの見方が市場に広がった。中国証券監督管理委員会(CSRC)市場監管部の胡冰・副主任が時間はかかるが「(キャピタルゲイン課税の)導入は必然の流れ」との発言をしたとされる報道などが市場の憶測を助長した。しかし、一方で国家税務総務局や財務部の関係者などは「完全なデマで、根拠はない」と否定した。

弊社でも、キャピタルゲイン課税の早期導入はないと見る。キャピタルゲイン課税の導入は市場を沈静化させるだけでなく、長期低迷に陥れかねない。今後、中国本土市場の大幅な上昇が起きれば、予想より早い時期でのキャピタルゲイン課税の導入があるだろうが、外資の導入や流動性の確保等により、市場全体がもう少し成長した後でのことだろう。

今後の本土株式市場の展開としては、時間的な調整局面が続くと予想する。大幅な上昇に転じれば、キャピタルゲイン課税の導入や金融引き締めに対する懸念が出る。しかし、増加する資金の流動性やQFII制度枠の拡大等が株式相場を支えるだろう。相場の上昇が金融引き締め懸念等を起こさなくなるまで、少し時間はかかるだろうが、好調な企業業績や経済成長を背景に中長期的には上昇していくと考えている。

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~香港市場から~

6月22日現在、ハンセン指数で21999.91ポイント、H株指数で12239.71ポイント、レッドチップ指数で4161.13ポイント、それぞれ5月末比6.6%、14.0%と15.0%上昇した。
好調な米国株市場等の影響が大きかったが、今月の上昇はH株やレッドチップ株等の中国本土系企業の株価上昇が相場全体を押し上げ、同じ期間の中国本土市場とは違った動きになった。先月までは、本土株市場が大きく上昇している一方で、香港市場は大きな動きにならなかった。2月末に発生した中国株市場の大幅下落からも回復は本土株に比べると遅かった。年初より、ハンセン指数は20000ポイントから21000ポイントのボックスを大きく乖離したことはほとんどなく、H株指数も10000ポイント前後の動きで、11000ポイントを大きく上回ることはなかった。
しかし、今回、そのボックスを離れることが出来た。本土市場の低迷が香港市場を活気付ける形となった。本土の豊富な資金が香港市場に向かったと考えている。(関連記事)

さらに、香港市場の売買代金も急増している。5月にQDII制度の改正報道を受けて、売買代金が約950億香港ドルの過去最高を記録していたが、今月18日には記録を更新した。売買代金は18日に1000億香港ドルを超え、20日には1214億4940万香港ドルと過去最高を更新した。
香港市場は、米国市場等の海外市場の影響を受けやすいため、以前の本土市場のような急激な上昇が起きるとは考えにくいが、今後も堅調な動きを予想する。

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~動き始めた本土の資金~

6月13日に、香港への現金持ち運びに関して税関当局が取り締まりを強化しているという報道がされた。
中国本土から持ち出す人民元は2万人民元を超えてはならず、5000米ドルを超える外貨を持ち出す場合は申告が必要となっている。しかし、最近、香港H株投資などを目的に多額の現金を香港へ運ぶ人が増加していることを受けて、関税当局が取り締まりを強化している。広州税関によると、5月30日から6月6日の検査で、規定を超えた現金の持ち運びを9件摘発した。持ち出されようとした現金は、累計で215万HKDと6万9000USDに上った。
摘発された現金は不正に持ち出そうとされた資金のごく一部だろう。

本土市場の下落がきっかけ

5月30日に中国本土株市場の印紙税を0.1%から0.3%に引き上げた。22日の昼ごろから中国でインターネットの掲示板に印紙税の引き上げに関する書き込みがあったが、財務部や国家税務総局の広報責任者は否定していた。しかし、それを裏切る形で印紙税が引き上げられた。
キャピタルゲイン課税導入に関する噂も重なり、本土株市場は大きく下げ、5月29日終値4334.924ポイントから6月5日安値3404.146ポイントまで5営業日で21.5%の下落となった。
今回の印紙税引き上げは、国民の政府に対する不信を買うことなり、本土外への資金流失を生んだ。

QDII制度の行方

中国工商銀行(1398)はQDII(適格本土機関投資家)商品の販売を行っている。5月のQDII制度の投資範囲拡大を受けて、同商品は資金の最大50%を香港市場のH株、レッドチップ株や新規上場する本土関連銘柄に投資する。また、HSBC銀行も6月11日から27日にかけて、QDII商品を複数販売する。同商品はアジア、欧州、米国の株式や債券等で運用を行う。まだ、始まったばかりで、どれほどの金額が販売されたかは不明だが、運用次第では今後本土外へ資金を向かわせる良い手段となるだろう。

「保険資金境外投資管理弁法」も近く発布へ

また、中国人民銀行(中央銀行)と国家外匯管理局は保険資金の海外運用規制を大幅に緩和する見通しを発表している。年内にも運用先を香港市場からNY市場やロンドン市場等の海外市場に広げるほか、投資対象も株式投資信託やエクイティーファンドなどにも拡大させる方針だ。このことで、一部の保険資産も海外へ向かうこととなるだろう。
さらに、投資信託会社や証券会社もQDII業務が近く可能となる。

H株の動きに注目

いずれの商品に関しても、大きな流れとなるかどうかは運用次第だ。05年の人民元切り上げ以来、約2年経つが、この間8%程度人民元高が進み、年間約4%人民元高になっている。さらに、CPI(消費者物価指数)は3%前後で推移しており、今後もこの傾向は続くだろう。そのため、QDII商品は7%以下ならば、実質マイナス利回りになる可能性がある。
現在の本土株市場等を考えると10%以上の運用成績がないと個人投資家の関心は引かないだろうが、運用次第では大きな流れとなるだろう。
そのとき、注目を集めるのは中国石油天然気(0857)、中国アルミ(2600)、華能国際電力(0902)や深セン高速道路(0548)などの香港H株になるだろう。

いつも政策発表は突然

今回の印紙税率引き上げも突然ではあったが、以前から中国政府は、政策変更を突然に発表することがよくある。15年以上前に、中国を旅行した人なら、FECという通貨を覚えているだろう。
1993年まで、中国本土では、外国通貨との両替が出来る「外貨兌換券」(FEC)と一般的に流通する人民元(RMB)の2つの通貨が存在していた。FECは93年末に廃止となったが、そのときの廃止の発表も突然だった。
FECとRMBは同価値が建前であったが、外貨との交換や外国製品の購入が出来るFECは人気があり、闇取引では高い交換レートで取引されていた。そのため、その取り扱いに困った中国政府は、突然、FECを廃止してしまった。
この政策変更も廃止の2日程前にテレビで発表しただけであり、FECの流通廃止まで国民に周知させる期間もなにもなかった。迅速な政策決定が出来る中国ならではの出来事だ。

中国の政策発表には注意

現在、中国政府の最大の目標は持続可能な経済成長と国民全体の所得向上であり、このことに変更はない。しかし、その過程として外資の導入を優先する時期もあれば、資源効率を優先する時期など、その時々によって政策は変更されていく。
上海と深センの株式市場も市場自体の質と量を向上させ、国際的な金融市場とすることに変更はないだろう。しかし、株価の上昇を促すときもあれば、株式相場の過熱を抑えるときもある。
今回は、今年に入り5回の預金準備率の引き上げや2回の金利引き上げでも抑えることが出来なかった株式市場の過熱を止めるために、印紙税の引き上げを行った。

市場は政策に左右される。また、個人投資家の噂も株式市場を動かす。中国株投資のリスクとして、中国政府の政策や個人の噂に十分な注意を払う必要がある。

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~流動性の高い金融市場(銀行業界)~

07年5月末時点で、マネーサプライM1(流通現金+普通預金)は前年同月比19.3%増加する一方で、M2(M1+定期預金等)は同16.7%増加にとどまった。好調な株式市場やそれに伴う資産効果により、個人や企業が銀行の定期預金を株式市場へシフトさせたことに一因がある。
また、07年5月末時点で、すべての金融機関の人民元預金残高が前年同月末比14.6%増の36兆300億人民元にとどまる一方で、人民元貸出残高は16.5%増の24兆6,300億人民元と預金残高よりも高い伸びを示している。商業銀行は増資等で自己資本が充足しており、流動性に余裕があるため、商業銀行の貸出意欲は高い。さらに、07年3月末の主要商業銀行の不良債権比率は7.0%となり、05年末の8.9%から年々低下していることも貸出意欲を増加させている。

金融引き締めの影響

景気過熱を背景に、中国人民銀行は貸出と投資の伸びを抑制するため、06年8月以降、8回にわたり預金準備率を7.5%から11.5%に引き上げ、06年4月以降、4回の利上げを実施している。しかし、3月末の商業銀行の超過預金準備率は3%と多くの銀行で流動性が充足しているため、預金準備率の引上げは銀行の貸出意欲をそれほど抑えていない。さらに、近年、銀行は伝統的な貸付業務から、モーゲージ・ローン、クレジット・カードやその他手数料収入など業務の多角化を図っていることも預金準備率引上げの影響を限定的にしている。
また、利上げは銀行にとってプラスに作用している。最近の利上げの特徴は、預金と貸出(1年物以上)両方に対し同じ幅(07年5月実施分は除く)で小幅にとどまる。物価上昇率が3%前後の中国にとって現在の預金利率は実質的にマイナス金利となり、投資家にとって小幅な利上げでは株式投資での収益率に比べ魅力はない。さらに多くの銀行は利ざや拡大のため、「預金は短期、貸出は長期」の方針をとっており普通預金の比率が高い。普通預金の金利を引き上げない現状の金融引締めでは銀行の業績への影響は余りない。また、中国の経済成長が続いている中、企業側の借入ニーズも相変わらず高い。

銀行収益を押し上げた税優遇策

上場銀行は、06年に財政部の税制優遇策(評価資産の減価償却の控除および、賃金控除額の標準値控除から審査認可控除への変更)を受け、実効税率が低下した。この税制優遇策は07年も継続する予定である。また、08年には企業所得税法の改正が予定されており、中国系企業の法人税率が低下する。このため、実効税率は07年、08年も引き続き低下すると見込まれる。

上場銀行は軒並み好業績

外部環境の好調と銀行の財務体質の改善などを背景に上場銀行は軒並み好業績を上げた。
招商銀行(3968)は利ざやの拡大や不良債権比率の低下等により、06年本決算で81.2%の増益となった。利ざやが05年の2.58%から06年には2.64%に上昇し、不良債権比率は05年末の2.6%から06年末に2.1%に低下している。中国銀行(3988)は法人・個人向け業務、マネーマーケット業務がいずれも好調であったことを受け、65.2%の増益となった。工商銀行(1398)も31.2%の増益となり、不良債権比率は05年末の4.7%から06年末には3.8%に低下した。
一方、建設銀行(0939)は、税引き前利益は前年比18.7%増の657.2億人民元となったものの、1.7%減益であった。これは同行の再編にかかわる法人税優遇策が05年6月末で終了し、06年の法人税額が前年比134.6%の大幅増になったためだ。

7月の主な予定

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