チャイナマンスリーレポート

8月号

2007年8月1日 内藤証券中国部

~本土市場から~

6月20日、上海総合指数は最高値更新に挑戦したが失敗し、その後調整に入った。しかし、その調整も6月のザラ場ベースの安値3404.146ポイントを割り込んでいない。
7月のザラ場ベースでの高値と安値はそれぞれ4062.116ポイントと3563.544ポイント(7月20日現在)となり、その差は500ポイント弱しかなかった。5月末までの連日の上海総合指数の高値更新や6月の相場の乱高下から比べると、静かな相場だった。
印紙税の引き上げ、特別国債の発行が株式相場の過熱を押さえ込んだ。特に、1兆5500億人民元の特別国債の発行が市場に中国政府の強い姿勢を示すこととなった。株式市場の急激な上昇は望んでいないという政府の姿勢を示した。
しかし、株式市場の大幅な下落も政府は望んでいない。
国有株の譲渡に規定を設け、需給関係の悪化が懸念されていた株式市場にとって好材料と受け止められた。さらに、全国人民代表大会財政経済委員会では、資本市場の制度構築をさらに進め、株式市場に大きな変動が起こることを防止するとの認識が示された。
今後、国有株の売却等も控え、政府としても株式市場の長期低迷は避けたいだろう。
また、7月11日に中国国家統計局は06年の実質GDPの改定値を前年比11.1%(速報値は10.7%)と発表した。19日には、07年上半期の実質GDPを前年同期比11.5%増、6月の消費者物価指数(CPI)を前年同期比4.4%上昇と発表した。
CPIが4%以上の上昇が続くようだと、現在の1年もの預金では実質マイナス金利となる。本土株市場の高値更新までにもう少し時間はかかると予想するが、高い経済や企業業績の伸びを背景に、実質マイナス金利の預金から株式市場への個人資産の移動が再度起きる可能性がある。弊社では、07年の上期好業績見通しを発表している大衆交通(900903)、仏山照明(200541)、瓦房店ベアリング(200706)などの銘柄に注目している。

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~香港市場から~

7月の香港市場は堅調だった。7月20日現在、ハンセン指数で6月末比7.0%上昇の23291.90ポイント、H株指数で9.6%上昇の13152.25ポイント、レッドチップ指数で10.2%上昇の4552.75ポイントとなった。どの指数も7月に年初来高値を更新した。
同期間の米国市場もNYダウで4.4%の上昇、ナスダック総合指数で4.5%の上昇となっており、堅調な海外市場に支えられたこともあるが、香港市場は本土市場と違いしっかりとした動きを続けている。
売買代金は6月に記録した過去最高を更新しなかったが、9-11日に3日間連続して売買代金が1000億香港ドルを超えるなど大商いとなった。7月20日現在で、7月の1日当りの売買代金は868億香港ドルとなっており、6月の1日当りの売買代金768億香港ドルを13%程度上回っている。
中国工商銀行のQDII(適格本土機関投資家)商品「東方之珠」が完売したことやQDII制度全体の投資枠が205億米ドルに拡大されるなど中国本土の資金が影響したと考えられる。中国本土株市場が本格的に上場するまでは、香港市場に資金が流れ込みやすい状況が続くのではないか。

また、6月中間決算の香港メインボード市場の銘柄は9月末までに決算発表を行う。決算発表のピークは8月下旬から9月になると予想されるが、業績が大きく変化する企業はあらかじめ業績見通しを発表する。直近でも招商銀行(3968)、中海発展(1138)などが業績見通しを発表している。今後も多くの企業が見通しを発表すると考えられるので、注意する必要がある。


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~労働契約法は企業にとってマイナスか~

6月に、中国では、山西省や河南省の煉瓦焼き窯で未成年者らの強制労働事件が発覚し、社会問題化した。過酷な労働環境や組織的な人身売買・誘拐等の実態が明らかになり、連日メディアで大きく取り上げられた。多くの強制労働者たちが監禁状態に置かれ、逃げようとした労働者は監視人に暴行を受け障害者になった者もいた。虐待を受けた少年の写真も公表され、多くの国民が衝撃を受けた。まさに監獄のような状態だったと複数のメディアが伝えている。
この事件はメディアから火が付き大きな社会問題となった。実態が明らかになるにつれて、地元警察や役人と煉瓦焼き窯の経営者との癒着も指摘され、中国政府の対応にも批判が集まったため、胡錦濤主席や温家宝首相らが徹底した救出と捜査を指示するまでにいたった。

低い労働者の地位

今回の強制労働事件は中国社会を驚かせ、社会問題化した特殊なケースかもしれない。しかし、中国では労働者の地位は低い。特に、地方の農村部から沿岸地域の都市部に出稼ぎにきている「農民工」の地位は低い。
中国では戸籍制度が存在するため、農村部から都市部への自由な戸籍の転出入が原則出来ない。計画経済の下では、食料、住居や仕事までが国家の計画の下で手配され、計画外の労働活動や移動は想定できず、許されなかった。
しかし、市場経済へと移行した現状においては必要性がなく、経済成長の足枷ともなっている。だが、戸籍制度による移住規制は今までに何度か緩和されたが、依然として残っている。戸籍登録地から離れて別地域で仕事をし、生活をしていても、戸籍を移すことは一般的には出来ず、都市部の現住所に戸籍がない「暫定住民」が中国では急増している。
戸籍制度による移住規制は単に戸籍地を動かせないだけではない。滞在先の戸籍を持たない暫定住民は、地元住民と対等に就職競争ができず、就職できた場合でも、低い賃金に抑えられることが多い。さらに、医療・年金保険などの社会福祉、子供の学校教育や公共サービス等において都市部住民とまったく異なる対応を受ける。現住所地域での全国人民代表大会(全人代)代表者の選出に対し投票権を持たない暫定住民よりも地元住民の権利を都市の行政機関は優先するためである。また、全人代の代表者を決定する選挙において、農民の一票の重みは都市部住民の四分の一と規定されており、農民の地位は低い。
そのため、都市部で安い労働力を供給している農民工の地位は絶対的に低い。

労働契約法の成立

そうした状況の中で、6月末、全人代常務委員会で労働者の権利向上を図るために「労働契約法」が可決・成立し、08年1月から施行される。
今回成立した労働契約法の概要をまとめると、以下のようになる。

  • 雇用開始後1ヶ月以内に書面で労働契約を締結しなければならない。
  • 勤続10年以上、または、期限付きの労働契約を3度目に更新する等の場合には、終身雇用契約を結ばなければいけない。
  • 契約期間3ヶ月以上1年未満の場合は試用期間1ヶ月以下、契約期間1年以上3年未満の場合は試用期間2ヶ月以下、契約期間3年以上の場合は試用期間6ヶ月以下。
  • 20人以上または全従業員の10%以上の削減は、30日以上前に労働組織か全従業員に通知した上、意見聴取を行い、当局へ報告した後でなければならない。
  • 労働契約解除の際に義務付けられていた経済的補償金を契約期間満了時にも支払う。金額は勤続期間1年に付き1か月分の給与相当。
  • 本来長期的な業務であるにも関らず、雇用期間を分割して短期契約としてはならない。
  • 従業員は、労働組織を代表者として、雇用者と労働条件等について集団契約を締結することが出来る。
  • 労働報酬の支払いに遅延や不足があった場合には、従業員は現地の人民法院(裁判所)に強制執行を申し立てることが出来る。

労働者の権利向上

同法により、労働者の権利は向上する。
1ヶ月以上労働契約が未締結の場合は2倍の給与を支払わなければならず、1年以内に労働契約を締結しなかった場合は終身雇用契約を締結したものとみなすなど、労働者の権利保護が強化された。
また、現在、契約満了期には支払い義務がない経済補償金(退職金)も同法では支払いが義務化されており、金額まで規定されている。
常態化する賃金不払いに対して裁判所に強制執行を求めることができ、人員整理に関しても当局への事前報告が必要となるなど現行法に比べ、大幅に労働者の権利が改善している。
現政権の「共同富裕」(ともに豊かになる)政策が示す方向とも一致している。

企業にとってマイナスか

今回の労働契約法は企業にとってコストの増加に繋がるだろう。安い労働力を武器にしてきた中国企業にはマイナスと見られるかもしれない。
しかし、04年初めごろから広東省で起きた労働者の募集に対して農民工の応募が足りない「民工荒」という現象が、全国的に広がっている中国では労働力の確保が重要になっている。コスト増加によるマイナスよりも、労働者の権利を保護し、確実に必要量の労働力が確保できる体制を整える方が企業にとって有効ではないだろうか。
また、労働力の確保だけではなく、将来に対する不安の減少から個人の貯蓄が消費に向かう可能性がある。日本でも同様であるが、現状が良くても将来に対する不安が大きければ、個人資産は消費に向かわず貯蓄に向かう。貯蓄率の高い中国では、個人の将来に対する不安が減少すれば消費が拡大し、企業にとって大きな購買層の形成も期待できる。

今回の労働契約法は企業にとってもプラスではないか。今後は、国内消費喚起のためにも戸籍制度等の制度改革による農村部の地位向上が待たれる。

~保険業界~

生活水準の向上により拡大する保険業界

生活水準の向上が進み、中国でも保険市場は拡大傾向にある。06年の全国保険料収入は前年比14.5%増の5,641億人民元で、うち生命保険料収入が同11.8%増の4,132億人民元、損害保険料収入が同22.7%増の1,509億人民元となった。中国における保険加入率がまだ低いこと、個人の貯蓄率が高いことや高齢化が進んでいることなどから、今後、生損保業界の発展余地は大きい。現在の市場拡大スピードを継続すれば、10年には全国保険料収入が1兆人民元を突破すると見込まれる。

拡大しつつある保険資金の投資先

中国政府は資本市場の発展を重視しており、その一環として保険会社の投資範囲拡大に様々な政策を打ち出す予定である。
年内にも中国保険監督管理委員会は運用先を香港市場からニューヨークやロンドンなどの海外市場にも広げるほか、投資対象を従来の預金や債券から株式投資信託やエクイティーファンドなどにも拡大させる方針を明らかにしている。当初は主に運用委託の形となるが、保険会社の能力向上に伴い、直接投資へと転換させていく考えも示しており、今後、さらに保険業界の運用先は拡大していくものと見込まれる。運用先の拡大は収益を拡大させるだけではなく、保険会社にリスク分散効果も与え、より強固な財務体質を形成することにもなる。
また、中国人寿保険(2628)と平安保険(2318)は銀行への出資も積極的に行っている。中国人寿保険は06年に広東発展銀行に出資し、さらに、07年に中国民生銀行にも出資した。また、平安保険も07年に中国民生銀行への出資を行った。これらは投資先というだけではなく、保険商品の販売窓口拡大にも繋がる。

好業績の保険各社

保険料収入の堅調な伸びと活況な資本市場による投資収益の増加で保険会社は各社とも前期の決算で大幅な増益だった。
生保最大手の中国人寿保険は06年度の保険料収入が1,838億人民元、純利益が114.4%増の200億人民元となった。また、07年1-5月期の保険料収入は前年同期比12.7%増の1,023億人民元であった。生保事業の市場シェアが5割弱に達している中、相変わらず高い伸び率を継続していることは同社の競争力の強さを表している。さらに、同社は農民向け商品開発にも力を入れており、今後、地方での拡大も期待される。
生損保、銀行、資産管理の3つの事業を手がける平安保険も大幅な増益となった。同社の06年度の保険料収入は859億人民元、純利益は85.5%増の78億人民元だった。同社の06年の市場シェアは生命保険において05年の16.1%から17.0%に、損害保険において同9.9%から同10.7%に上昇した。07年1-5月も生命保険料収入が前年同期比13.3%増の346億人民元、損害保険料収入が同42.9%増の92億人民元と高い伸び率を示している。
損害保険専門の中国人民財産保険(2328)は06年度の保険料収入が713億人民元、純利益が121.5%増の21億人民元と大幅な増益となった。投資収益(配当等を含む)が前年度比251.6%増の40億人民元になったことが増益に大きく寄与した。


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8月の主な予定

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