チャイナマンスリーレポート

10月号

2007年10月1日 内藤証券中国部

~本土市場から~

9月の上海総合指数は堅調な動きではあったが、過去の上昇から考えると比較的狭いレンジでの動きだった。9月21日現在、9月の高値は21日の5489.074ポイント、安値は12日の5025.336ポイントで、463.738ポイントのレンジしか動いていない。
日々の動きも小幅で、9月11日、国家統計局が8月の消費者物価指数(CPI)を前年同月比6.5%と発表し、市場では追加の金融引き締め策が出るのではとの思惑から241.319ポイント、4.5%の大幅下落となった以外は大きな波乱はなかった。実際に、9月14日引け後に中国人民銀行(中央銀行)は利上げを発表したが、休日明けの17日、上海総合指数は上昇した。

利上げを発表すると本土株は上昇している。今年、9月14日までに5回の利上げを発表したが、何れの時も発表直後の立会いでは上海総合指数は上昇している。利上げは週末に発表されることが多く(今年8月21日火曜日に4回目の利上げをしたい以外、すべて週末に発表)、休日の間に心理的な影響が緩和されている。また、中国市場は思惑で動くことが多く、利上げ発表前に市場が利上げを織り込んでしまう面もある。
もう一つ大きな要因としては実質マイナス金利がある。今の中国の物価上昇からすれば、金利を引き上げたとしても、1年もの預金金利は実質的にマイナス金利であり、金融引き締めの効果が出にくい。8月のCPIと1年もの預金金利を比較した場合、2.6%程度の実質マイナス金利となり、株式から預金への資金シフトは起こりにくい。
実質マイナス金利の状況が続く限り、利上げはあまり効果を発揮しないだろう。


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~香港市場から~

香港市場は8月前半の大幅下落から一転して大幅な上昇となった。8月17日にハンセン指数は20000ポイントを一時的に割り込み19386.72ポイントまで下落したが、8月20日に中国政府による香港株直接投資の試験導入発表を受け、反発に転じた。8月17日終値から比較した場合、9月21日現在、ハンセン指数は26.8%上昇の25843.78ポイント、H株指数で42.6%上昇の15693.66ポイントとなった。同期間のNYダウ工業株30種が5.7%の上昇であったことからすると大幅な上昇である。

今まで比較的連動が高かった香港市場と米国市場の動きに変化が見られた。米国市場で大幅な株価下落があった場合、翌日の香港株は軟調な展開になることが多かったが、8月20日以降、米国株の下落の影響を受けず、香港市場が上昇する場面が何度となく見られた。

今回の香港市場と米国市場の相関の低下は本土投資家の非公式な香港市場への資金流入によるところが大きい。今後、香港株の直接投資が実施されれば、さらに相関は低下していくだろう。しかし、香港市場が米国市場をはじめとする海外市場から完全に切り離されることはない。資本異動に規制がない香港市場は既に世界的な金融市場の中に組み込まれている。
今後は、香港市場の動向を考えるとき、海外市場の動きだけではなく、中国本土の個人投資家の動向にも注意を払う必要があるだろう。




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~拡大する中国マネー~

8月上旬から、世界中の株式市場はサブプライムローン問題一色になっている。
英国主要メディアによると、資金難に陥っている英国中堅銀行のノーザンロックは英国中央銀行による30億ポンドの緊急融資を受けて取り付け騒ぎをしのいだが、近く解体に追い込まれる可能性が出てきた。17日、ダーリング英財務相が同行の資産内容は健全で一時的な資金繰りに問題が出ただけであるため必要に応じ政府と中央銀行は同行の預金を全額保証すると緊急発表した。しかし、その後も預金流出は止まらず、株価も9月13日から20日までの一週間で7割以上下落した。深刻な信用収縮の影響から同行の事業継続が予想以上に困難で、買収に名乗りを上げていた金融機関も次々と買収を断念している。
英国だけではなくオーストラリアやスペインなど他の国でも金融不安から、大幅な銀行株の下落が起き、政府高官が地元銀行の資金繰り悪化の噂を否定する騒ぎになっている。
また、国際通貨基金(IMF)はサブプライムローン等の米国住宅金融の焦げ付きに伴う損失が1700億米ドルに達するとの試算を明らかにした。現在、世界経済は堅調な成長を維持しているが、サブプライムローン問題に対する金融市場の調整は長引く可能性があり、信用収縮が実体経済に及ぼす悪影響のため下振れするリスクは大幅に増加したと報告している。

変化する香港市場
このような海外環境の中で、中国政府は天津市濱海新区をテスト地区として個人による海外証券への直接投資を試験的に導入すると発表した。初期段階として投資対象は香港市場のみが認められた。9月から実施されるとの噂も流れたが、現在は技術的な問題から実施時期は未定で口座開設の予約申し込みを行っている状況にとどまる。しかし、計画自体の棚上げはないと政府高官は発言している。
また、国民の関心も高く、9月1日に開いた中国銀行(3988)の説明会には定員300名のところに1000人以上が押し寄せた。今年5月に話題となったQDII制度での投資範囲拡大よりも投資家の関心が高いことが窺える。さらに、QDII制度のときも問題となった本土投資家による先回りをした非公式の香港株購入も活発化しているようで、税関での現金持ち出しが多く摘発されている。

今回の決定は、一つに中国本土で問題となっている過剰流動性を抑える意味がある。07年6月末時点で1兆3326億米ドルまで増加した外貨準備高により、中国本土では過剰流動性が問題になりつつある。この状態が続けば、資産インフレが起き政府や中央銀行によるマクロコントロールが効かなくなる恐れもある。中国人民銀行(中央銀行)の金融引き締めだけでは抑えることの出来ない不動産投資や株式投資を抑制するために、国内に溜まっている資金を海外に向ける必要がある。
もう一つとして、自国である香港の株価が海外市場の影響を受けることを避けたいという狙いもある。現在、香港は観光など経済的に中国の影響を大きく受けるようになった。香港を訪れる観光客の多くは中国本土から来ている。しかし、香港株を見た場合、中国の株や経済からの影響は少なく、香港株の動きは米国株等、海外株式市場の影響を直接的に受けている。
今後、深刻化が予想されるサブプライムローン問題により米国経済や株式市場が悪化したとき、中国政府はその問題が香港株市場に波及することを避けたい。H株やレッドチップ株の下落により将来の資金調達が困難になる事態や中国経済全体に悪影響を及ぼす状況は回避したい。

交渉カードとしての外貨準備高
現在、軍事力や経済力等、総合的な国力で強国と言えるのは米国のみである。多くの場合、米国基準が世界基準、グローバルスタンダードとなっている。そのことに一番反感を持っているのは中国であろう。確かに、中国と米国は経済的パートナーとして友好関係にある。現状の国力を考えた場合、軍事力、経済力、技術力どれを見ても中国に勝ち目はなく、中国には米国との友好関係を築く以外に方法はない。
しかし、中国には豊富な外貨準備金があり、過剰なまでの資金を保有している。8月中旬に異例な早い対応で中国人民銀行は否定したが、米国の人民元切り上げ圧力に対し米国国債の大量売却で対抗すればよい旨の発言が経済学者から出たように外貨準備高は中国の最大のカードである。以前、日本でも米国国債の大量売却を交渉のカードとして使ったことがあるが、実際にそのカードを使うことは非現実的である。
米国国債の大量売却は米国証券市場の混乱を招き、米国景気に悪影響を及ぼす。米国景気の悪化は個人消費に打撃を与え輸入の減少に繋がる。結果として、自国の輸出企業、経済全体にも悪影響を及ぼす。また、売却資金を自国通貨に交換すれば大幅な自国通貨高を招き、さらなる輸出企業への悪影響が懸念される。このように大量保有する米国国債を売却することは世界経済を混乱させるだけで誰の利益にもならない。

拡大する中国マネー
現実的な方法として、外貨準備金等の豊富な資金を有効に活用し、世界経済に対する中国経済の影響力を拡大させる政策を中国政府は採っている。
QDII商品の投資範囲の拡大や外貨準備金を運用する「中国投資有限責任公司」の設立はその現れである。中国本土の過剰流動性を抑えるという面はあるが、中国本土マネーの拡大によって発言力の強化を考えていることに間違いはないだろう。また、香港株への直接投資試験導入も、この流れの一つだろう。香港株が比較的海外市場の影響を受けなくなるまで中国本土マネーが香港市場に流入すれば、今度はASEAN諸国、米国、欧州、そして日本へと投資対象は徐々に広がっていくだろう。
今後、中国本土マネーが海外へ流出するにつれて、世界の金融市場での中国の影響は大きくなり、中国の発言力が今まで以上に重要な意味を持つだろう。だが、短期的にはまだまだ中国マネーの世界経済に対する影響力は小さい。今回の試験導入はまだ実施されておらず、QDII商品等に関しても規模が小さく、中国マネーが世界経済や金融市場を動かすほどにはなっていない。

しかし、中国は共産党一党による政権であるため、長期的な視野に立った政権運営が行われている。5カ年計画等の短期的な政策だけではなく、50年100年先の自国の姿を見ている。将来的に、中国基準が世界基準、グローバルスタンダードとなり、中国が世界の中心となっている姿を中国政府は見ている。

中国株に投資する際も短期的視野にとらわれず、長期的な展望を見据えた投資をすることをお勧めする。

~好決算銘柄に注目~

6月に中間決算をおこなった企業の決算発表は大部分が済んだ。今回の決算発表では、不動産、非鉄金属、金融等の企業が比較的良い決算を発表している。金融機関に関しては8月にサブプライムローン問題が表面化したために、07年本決算を見たいが、各金融機関の発表から判断するとそれほど大きな影響はないようだ。

ここでは8月下旬から9月下旬にかけて、好業績を発表した企業からいくつか紹介してみたい。今回紹介する企業以外にも好業績を発表した企業は多数あり、じっくりと探してみるのもいいかもしれない。

李寧(2331)は07年中間決算で39.2%の増収、52.6%の増益、EPSを51.7%増の0.1921人民元と発表した。
「李寧」(LI-NING)ブランドで知られる民営のスポーツ用品メーカー。同社の社名及びブランド名の由来となっている主席の李寧はロサンゼルス五輪で活躍した元体操選手で国民的英雄。同氏の高い知名度により、同社のブランドも高い競争力を誇る。スウェーデンの五輪委員会とスポンサー契約を結ぶなど、北京五輪が大きなビジネスチャンスとなる。オリンピックに向けて国民のスポーツ熱も上昇しており、オリンピック関連銘柄としても注目。
また、9月24日より、売買単位を2000株から500株に変更し、株主層の拡大を狙う。

華潤置地(1109)は07年中間決算で80.8%の増収、62.9%の増益、EPSを45.9%増の0.1676香港ドルと発表した。また、1株につき0.024香港ドルの配当予案を発表している。権利落ち日は10月10日。
同社はケイマン島登記の持ち株会社で、傘下企業の主要事業は不動産の開発・賃貸・管理、建材・設備の取引等。中国本土の不動産価格の上昇を受けて業績は好調。07年8月末時点で保有不動産は1000万平方メートル。今後も住宅物件、複合ビルなどが高水準で完成予定。賃料の上昇など追い風となり、引続き高い成長が見込める。

中信銀行(0998)は07年中間決算で82.4%の増益、EPSを50.0%増の0.09人民元と発表した。
同行は資産規模で国内7位の中堅銀行。07年4月27日に香港、上海A両市場に同時上場。同行は北京市にプライベートバンキングセンターを開設した。対象顧客は100万米ドル以上の金融資産を保有する富裕層。同業務を手がける中国資本の銀行としては中国銀行(3988)、招商銀行(3968)に次いで3行目となる。今後、上海市、深セン市、広州市などでも、プライベートバンキングセンター開設を計画している。また、9月5日時点でサブプライムローン関連商品を保有していないことを明言した。
さらに、9月10日より、同銘柄はH株指数に採用され、今後流動性の高まりが期待できる。

東風汽車集団(0489)は07年中間決算で23.7%の増収、74.6%の増益、EPSで74.6%増の0.2257人民元と発表した。東風汽車集団(0489)は07年中間決算で23.7%の増収、74.6%の増益、EPSで74.6%増の0.2257人民元と発表した。
中国汽車工業協会によると、07年上期の自動車販売台数は前年同期比23.3%増の約437万台に達したと発表している。その中で、同社は07年上期の販売台数で前年同期比28.4%増となり、業界平均を上回る伸びを達成した。今後も中国では個人所得の向上により自動車業界の成長は続くだろう。

10月の主な予定

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