チャイナマンスリーレポート

11月号

2007年11月1日 内藤証券中国部

~本土市場から~

 10月、中国本土市場は国慶節の休みがあったため立会い日数は少なく、月半ばに共産党大会を控え、日本であれば、様子見の動きにくい展開となるところであるが、本土株市場は比較的よく動いた。
 特に、月前半は堅調な動きとなり、15日には上海総合指数が6000ポイントを超えた。重要な政治イベントである中国共産党大会期間中に、株価を暴落させるようなことを中央政府はしないという憶測が個人投資家の株式購入を加速させた。根拠のない憶測であるが、本土株市場は何度となく個人投資家の噂に動かされてきており、今回も同様の動きとなった。

 10月12日に、9月末時点での中国本土の外貨準備高が前年同期比45.1%増の1兆4336億米ドルと発表された。依然として高い伸びを示しており、中国本土には豊富な資金が供給されている。また、国家発展改革委員会は9月の消費者物価指数が前年同月比6.2%の上昇(1-9月期で前年同期比4.1%上昇)したことを明らかにしている。食品価格等に落ち着きが見え出したが、昨年同期と比較すると高い水準にあり、消費者物価指数はすぐに低下する状況にはない。このため、実質マイナス金利は続いている。
 個人の思惑や思い込みだけではなく、中国本土株市場に資金が流れ込みやすい状況に変化はなく、この状況が変わらない限り本土株の堅調は続くのではないだろうか。

 一方、中国証券監督管理委員会の尚福林・主席が「株価は上昇するほどリスクが大きいことを投資家に思い出していただきたい」と述べるなど、複数の高官が上昇する株価に対して発言しており、今後、政策に注意が必要かもしれない。


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~香港市場から~

 香港市場も堅調な動きを続けた。ハンセン指数は10月18日にザラ場で30000ポイントを、H株指数は16日にザラ場で20000ポイントを超えた。

 特に、中国証券監督管理委員会(CSRC)の屠光紹・副主席がA株とH株の交換について発言したと報道された17日には、米国市場で中国株のADR(預託証券)が高騰し、翌18日も香港市場はH株を中心に大幅高で始まった。しかし、その後、同報道はCSRCによって否定された。屠副主席の発言は中国本土と香港の証券取引所自体の株式交換について語ったもので、A株とH株の交換に触れたものではない。また、中国本土の取引所は株式会社化されておらず、現段階では中国本土と香港の証券取引所の株式交換は不可能である。

 だが、A株・H株には価格差が存在しており、以前より問題となっている。今年5月のQDII制度による投資範囲拡大や8月の本土個人投資家による香港株への直接投資試験導入発表の際も、A株・H株の価格差に注目した買いが入った。
 A/H株やA/B株の統合や交換は中央政府の人民元政策と大きく関わるため、早急に実現することはないと弊社では見ている。しかし、この問題は今後の中国株にとって大きな問題であり、課題でもあるため、折に触れて、政府高官の発言や市場の憶測が香港市場を動かす要因にはなるだろう。また、本土個人投資家の香港株直接投資が年末までに始まるかもしれないとの観測も出ており、香港市場の堅調は続くと予想する。




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~A・H価格差は是正されるか~

 17日、中国証券監督管理委員会(CSRC)の屠光紹・副主席が中国本土と香港に重複上場する株式について両方で互いに通用するものとするために研究していることを明らかにしたとされる報道があった。これを受けて、A株とH株の交換や統合に対する期待感が強まり、本土A株よりも割安な水準にある香港H株に注目が集まった。同日夜(中国時間)、米国市場では中国本土系企業のADR(預託証券)が高騰し、翌18日の香港市場でもH株などの本土系企業の株が寄り付き段階で急伸した。
 しかし、この報道に対してCSRCは「そうした研究はない」と内容を否定した。屠副主席は中国本土と香港の取引所自体の株式を交換する可能性について語ったものの、A株とH株の交換については触れておらず、メディアが曲解したと指摘している。また、株式交換に対する可能性についても否定的な見解を示している。

市場の統合はあるのか

 この報道の背景として、9月中旬より話題となっている香港政府による香港交易所(0388)株の購入がある。9月に香港政府は為替基金を通じて香港交易所の株式を買い増し、9月7日時点で同交易所の株を5.88%保有している。香港政府財政司の曽俊華・司長は、今回の株式取得が香港政府による「市場介入」ではなく、曽司長自身の判断で行ったものであり、取得した株式は戦略的資産として為替基金が保有し、香港が国際的金融センターの地位を維持することを支援するためのものであると表明した。しかし、その後、9月12日に同氏は株式取得について「政府が香港交易所の株式を保有していなければ、他の証券取引所との株式交換等について考えることが根本的に不可能になる」と語り、証券取引所の提携を念頭にした行動であることを示唆した。それが、上海証券取引所との合併を含めた思惑となって市場に流れた。
 さらに、本土の外貨準備金を運用する中国投資有限責任公司や全国社会保障基金理事会を通じて、中国政府が香港交易所の株を購入していると9月下旬に英紙「タイムズ」が報道し、合併等に対する思惑を強める結果となった。中国投資有限責任公司は香港市場上場の株式に投資したことはないと否定しており、また、全国社会保障基金理事会はコメント自体を拒否しているため、事実関係は不明である。

 弊社としては、現時点で、本土と香港の証券取引所の株式持合い等による提携はないと見ている。第一に、本土の証券取引所は株式会社化されておらず、株式の持合は不可能である。また、取引所の株式会社化が行われた後でも、人民元等に制約があり、難しいと見る。もし、株式持合い等による提携があったとしても、人民元の完全変動相場制にめどがついてからだろう。今回の一連の動きは、現在、世界的な動きとなっている証券取引所間での買収や提携の動きに巻き込まれないための予防線だと考えられる。

 実際、中国は他国の影響を嫌う傾向がある。また、今後、中国が世界の中心を目指す上で、金融市場の独自性が問題となる。ある意味で世界における金融市場の中心が世界経済の中心となる現代社会で、自国の証券取引所が海外から影響を受ける状況では世界経済の中心とはなり得ない。海外からの影響を排除するために政府が証券取引所の株を買ったと言えば、政府による市場介入や保護主義的政策として批判を浴びる。そのため、市場に流れている合併等の憶測を利用しただけではないか。将来的にも取引所の合併を行うのではなく、それぞれの取引所に特徴を持たせ、独自に発展させていくと弊社では見ている。

A株とH株の価格差は是正されるのか

 だが、一方でA株とH株の価格差は金融市場が成長していく上で、大きな問題となるだろう。本土市場と香港市場に重複上場している企業のA株とH株は同一権利を有する株であるにも関わらず、価格に大きな差がある(下記表参照)。本土市場と香港市場の間には、資本取引規制や人民元の交換等に問題があるため、市場間での裁定取引が行えず、それぞれの市場で独自に株価が形成されている。そのため、人民元の過剰流動性が問題となりつつある中国本土では同じ企業の株でも高く買われる傾向がある。
 この問題は以前から指摘されており、市場では何度となく同問題をめぐる憶測が相場を動かしてきた。また、今年5月のQDII制度による投資範囲拡大の際や、直近でも本土個人投資家への香港株直接投資の試験導入発表の際、A株とH株の価格差からH株が大きく買われた。
 人民元に対する規制を完全になくせば、すぐにでも解消する問題ではあるが、中国政府はそのようなことをすぐには行わないだろう。中国政府の農業改革など他の改革を見ていても分かるようにビックバン的改革(急激な改革)は行わず、漸進的な改革を行っている。この問題に関しても漸進的な改革により解決していくと考えられ、A株とH株の価格差は時間をかけて縮小していくと予想するが、目先、常に蒸し返される問題となるのではないか。また、本土個人投資家の香港株直接投資試験導入が年内にも始まるかもしれないとの観測も出ており、H株やレッドチップ株を中心とした香港市場の堅調は続くと弊社では見ている。しかし、A株とH株の価格差だけに注目した投資には注意が必要であり、業績等のファンダメンタル分析も大切である。

B株にも注目

 また、A/H株と同様の問題がA/B株の間にも存在する。上海・深センB株市場は他市場に比べると市場規模が小さいため、資金流入が一度起きると大幅な上昇になる。さらに、B株市場にも1-9月期の好決算見通しを発表している飛亜達(200026)、麗珠医薬(200513)や、資源株への変貌を遂げつつあるオルドスカシミア(900936)等の有望な企業が多数上場しており、A株よりも安く放置されている。
 弊社としては、H株だけではなく、上海・深センB株にも注目している。

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~注目すべき各種データー~

 景気動向や企業業績を予想する場合、各種の経済データや商品市況の動向を注意深く見ていく必要がある。例えば、ペトロチャイナ(0857)等の業績は原油価格などの動きに左右され、紫金鉱業(2899)等は金価格の影響を受ける。
 そこで、今回は、最近注目されている海運指数のバルティックドライインデックスと豚肉の中国国内卸売価格のチャートを掲載した。弊社では好調な海運市況を受けて、中海発展(1138)等の海運株に注目している。また、豚肉をはじめとする食品価格は一時のピークを越えたものの依然として前年比で高い水準にあり、本土の物価上昇はすぐには沈静化しないと予想する。今後中国人民銀行(中央銀行)による大幅な利上げがない限り、実質マイナス金利の状況に変わりはなく、株式市場への資金流入は止まらないだろう。
 さらに、今回、米国の住宅販売件数も載せた。米国のサブプライムローン問題が長期化すれば、中国にも悪影響を及ぼすことが懸念される。そのため、米国の住宅事情にも注意をする必要がある。

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11月の主な予定

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