チャイナマンスリーレポート

12月号

2007年12月4日 内藤証券中国部

~本土市場から~

 11月の本土株市場は軟調な展開で推移した。

 10月15日に上海総合指数は初めて6000ポイントを超えたが、その直後から相場は調整に入った。10月31日と11月1日にザラ場で6000ポイントを超え高値更新を試みたが、達成できず、さらに調整色を強めた。11月22日には10月16日の高値と比較してザラ場で18.9%下落の、4969.894ポイントまで下げた。22日終値でも5000ポイントを割込み、4984.161ポイントとなっている。

 今回の調整入りの主な要因としては金融引き締めへの警戒がある。10月後半に各種経済指標が発表され、物価上昇や不動産価格の高騰が指摘されたにも関わらず、10月26日に市場関係者の多くが予想した利上げが行われなかった。そのため、次回の利上げは大幅なものになるとの思惑が市場に出ており、積極的な買いが入り難い状況になっている。
 また、中国石油天然気(0857)のA株上場後の動きも相場にとってマイナスに作用している。11月5日に上海A株市場に上場した同社株は16.70人民元の公募価格に対して191%上昇の48.60人民元で初値が付き、株式時価総額は世界第1位となり、ロシアの06年名目GDPに匹敵すると話題になったが、その後、株価は低迷している。そのため、上場初日に買った投資家は含み損を抱え、市場マインドを冷え込ませた。
 本土株市場は直近の株価上昇が大きかっただけに、今回の調整には時間がかかるのではないか。しかし、本土市場は政府高官等の発言によって急激に相場が反転する可能性も否定できない。


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~香港市場から~

 香港市場も軟調な展開となった。ハンセン指数は11月22日現在、10月30日の終値と比較して17.8%下落の26004.92ポイントまで下げた。また、同期間のH株指数の下落率は23.7%、レッドチップ指数は20.4%と大きな下落になった。

 今回の相場下落の要因として以下の点が挙げられる。

  1. NY ダウ工業株30 種等の軟調な海外株式市場
  2. 本土個人投資家の香港株直接投資の試験導入に対する温家宝首相発言
  3. 深セン市での現金引き出し規制等の“金融引き締め”

 NYダウ工業株30種は11月に入ってから21日までの15営業日で100ドル以上の下げが6回あり、そのたびに翌営業日のハンセン指数は1000ポイント前後の大幅な下落となった(11月20日を除く)。直近で香港市場が大きく上昇していたため、海外市場よりも大きく下げる結果となった。

 では、なぜ最近薄れていた海外市場との連動性が強まったのだろうか。それは下落要因として挙げた2番目と3番目の2点が考えられる。2番目は早急な実施はないと市場が見ていたため、それほど影響はないが、3番目の“金融引き締め”は香港市場に大きな影響を与えた。中国人民銀行(中央銀行)によると10月に本土個人預金残高は5062億人民元減少した。人民銀行はIPO(新規公開)等が影響したと説明しているが、実際には多くの資金が深セン市の地下銀行を通じて香港市場に流れ、香港株の上昇要因になっていた。それが今回の"金融引き締め"や地下銀行の摘発により香港市場への資金流入が止まったことで本土からの影響が低下し、海外株式市場との連動性が相対的に高まった。
 いずれ非公式ルートでの本土からの資金流入は再開されるだろうが、それまでは米国等の海外市場に左右される形が続くだろう。




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~「港股直通車」の行方~

 8月20日に、中国国家外匯管理局は天津市濱海新区をテスト地域として本土個人投資家による香港株への直接投資「港股直通車」を試験的に認めると発表した。しかし、当初の予想では9月にも実施されるのではないかと見られていた香港株への直接投資試験導入ではあるが、いまだに政府は実施時期を明確にせず、現在も開始されていない。さらに、11月5日には温家宝首相が実施時期について、「実施のメドは立っていない」と発言するなど、直近で香港株直接投資の試験導入が開始される可能性は少なくなった。

「港股直通車」の本来の目的

 そもそも本土個人投資家の香港株への直接投資試験導入が発表された時期は、世界的にサブプライムローン問題が表面化し、世界中の株式市場が大きく下落している中であった。NYダウ工業株30種は8月16日のザラ場で8日の終値と比較して1100ドル以上安い12517.94ドルまで下げた。ハンセン指数は8月9日の終値と17日の安値を比較すると13.6%の下落、H株指数も19.1%の下げで、株価は06年末の水準に戻ってしまった。
 その中で発表されたのが、本土個人投資家の香港株への直接投資試験導入の発表であった。実際には、その後、米国株をはじめとする海外株式市場は各国の中央銀行による大規模な資金供給の影響もあって反発したため、香港株式市場も「港股直通車」の発表がなくても反発をしていただろうが、8月時点では、サブプライムローン問題がさらに拡大して世界中の株式相場は大きく下落する懸念があり、それに連動して香港株も大幅に下落する恐れがあった。本土株式市場は資本規制があるため海外株式市場との直接的な連動性は薄いが、香港株式市場は海外株式市場との連動性が高く、海外株式市場への依存度が大きかった。また、本土市場では神華能源(1088)や中国石油天然気(0857)などのH株企業のA株市場上場が計画されており、H株での大幅な下落がA株上場に悪影響を及ぼす心配もあった。
 さらに、中国人民銀行(中央銀行)が11月に発表した07年第3四半期の「中国貨幣政策執行報告書」で、5000社に対するアンケート調査の結果として示すように、1-9月期において企業の本来の業務による利益は前年同期比25.7%増であるのに対して投資による収益が66.5%増と高く、投資収益が増益の大きな要因となっている。本来の事業収益も高いため、投資収益が多少低下しても問題はないが、不動産価格や株価の大幅な下落は企業業績を悪化させる危険性があった。
 そこで、中国政府が香港株式市場の救済として考え出した方法が、今回の「港股直通車」である。いずれ本土の過剰な人民元を外に向けさせる必要があったことも後押ししたのだろう。

予想外に大きかったアナウンスメント効果

 今回の「港股直通車」のアナウンスメント効果は予想以上に大きなものとなった。実際には「港股直通車」が実施されていないにも関わらず、先回りした中国本土からの資金流入によって香港株は大きく上昇した。8月16日から10月9日までのNYダウ工業株30種の上昇率が10.3%にとどまったのに対して、ハンセン指数は8月17日から10月30日までに55.2%上昇、H株指数では85.4%の大幅な上昇となり、本土市場だけではなく、香港市場にも株式バブルの懸念が出てきた。

 そのために「港股直通車」の開始を先送りした。2001年に本土B株市場を中国本土個人投資家に開放したときのように開放直後の数ヶ月だけ大幅に上昇し、その後、長期間にわたり市場が低迷するような事態を避けたかったのだろう。上海B株指数は01年に付けた高値を抜くまでに6年間もの時間を必要とした。
 さらに、今回、実際に香港株式市場を上昇させた非公式ルート(地下銀行や現金持込み等)を通じた中国本土市場からの資金流入を断つことで香港株の急騰を終わらせ、「港股直通車」という香港株に対する切り札を今後に残した。今、市場には来年の全国政治協商会議、全国人民代表大会後の3~4月頃に「港股直通車」は開始されるとの思惑が出ているが、香港株式市場が大きく下落するまで実施されないのではないかと弊社では予想する。逆に、香港株式市場が大きく下落することがあれば、今年8月の水準まで下げるようなことがあれば、意外と早い段階で実施されるのではないか。

中長期的な上昇へ

 10月末時点で、H株とレッドチップ株の時価総額は12兆6000億香港ドル、上海・深セン株は28兆人民元となった。上海・深セン株の流通株だけを見ても時価総額は8兆9000億人民元になる。また、11月5日に中国石油天然気が上海A株市場に上場したことで、さらに中国株の時価総額は増加している。
 中国の06年名目GDP額が21兆871億人民元、07年名目GDP額でも約25兆人民元(弊社予想)と考えられる中で、中国株の上昇速度は速すぎた。直近の上昇が大きかったことで調整には一定の日柄・値幅が必要となるだろうが、今後、数年間は10%以上の実質GDP成長率が見込まれている中国の株式市場は今回の調整を乗り越えて、中長期的に成長していくと期待される。

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~1-9 月期決算発表から好業績銘柄を~

 中国本土上場企業は四半期ごとに決算発表を行う。第3四半期の決算日は9月末で、決算発表は10月末までに行う必要がある。また、香港メインボード市場の場合は、四半期ベースの決算発表を行う義務はないが、本土市場でA株を上場しているH株企業は四半期ベースの決算発表を行っている。それ以外でも独自に四半期ベースの決算発表を行っている企業もある。
 四半期の決算内容はほとんどの企業が中国会計基準で行っているため、H株の四半期決算を見る場合、会計基準の違いに注意する必要はあるが、前年同期と比較するなど直近の業績推移を判断する材料となる。

今回は、第3四半期を発表した企業の中から業績の好調な企業をいくつか紹介する。

オルドスカシミア(900936)は07年1-9月期決算で87.7%増収、68.8%増益、EPS0.18人民元となった。
同社は世界最大級のカシミヤメーカー。主力のカシミヤ事業以外に、中央政府の西部大開発政策を背景に石炭生産、発電、冶金事業も手掛ける。非カシミヤ事業においても三井物産と提携。
同社が生産するフェロシリコンやシリコンマンガンは、鉄鋼生産の添加物として使用される。中国の旺盛な鉄鋼需要や商品価格の高騰により、フェロシリコン等の価格は上昇しており、今後も世界的な資源獲得競争の中で鉱物資源等は価格を維持すると見られる。その中で、同社はカシミヤメーカーから資源関連企業へと変化していくと弊社では予想する。また、同社は10月29日に07年通期で50%以上の増益見通しを発表しており、第4四半期も好調を維持している模様。

華新セメント(900933)は07年1-9月期決算で32.5%の増収、117.9%の増益、EPS0.59人民元となった。
大手セメントメーカー。主に湖北省や江蘇省を中心に高品質セメントの生産を行う。06年末の生産能力はクリンカー(中間製品)で1550万トン、セメントで2850万トン。07年上期のセメントおよびクリンカーの販売量は985万トンで前年同期比200万トン増加した。
中国では固定投資の高い伸びに伴いセメント需要は拡大しており、同社も新規生産ラインを順次追加することにより業績を急拡大させている。一方で、環境問題を配慮して老朽化施設の閉鎖も行っている。
また、政府は環境問題等から業界再編を進めており、同社は業界大手として再編の中心的な存在になるだろう。

中興通訊(0763)は07年1-9月期で47.0%の増収、45.9%の増益、EPS0.63人民元を達成した。
同社は主に通信事業者向けに通信設備の研究開発から製造販売まで行う。今年9月にエチオピア電気通信公社から総額4億7800万米ドルのGSMネットワーク2期工事を受注するなど、近年は海外での事業展開も積極的に推し進めている。
中国では第3世代(3G)携帯電話サービスに関してTD-SCDMA方式の試験サービスが行われているだけで、正式なサービスは開始されていない。今後、本格的に3Gサービスが開始されれば、同社にとって大きなビジネスチャンスとなるだろ。

なお、各企業の1-9月期の決算内容は中国会計基準による。

12月の主な予定

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