チャイナマンスリーレポート

1月号

2008年1月1日 内藤証券中国部

不動産業界

~不動産抑制策や金融引き締め策は業界の再編を促し、大手企業による寡占状況へ~

不動産市況の上昇トレンドは変わらず

 07年10月の全国70都市の不動産販売価格は前年同月比9.5%の上昇となり、07年前半までの5%台から上昇ピッチを速めている。地域別では北京市が15.1%、深セン市で19.5%、ウルムチ市で14.9%、広西チワン族自治区北海市で15.9%の上昇となった。こうした堅調な不動産価格に加え、不動産会社の積極的な用地取得、人民元高の加速や海外からの資金流入によって、中国の不動産市場は今後も上昇傾向を維持するとの見方が強い。


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株式市場で根強く存在する不動産抑制策への懸念

 不動産市況の上昇トレンドに大きな変化はないが、政府による不動産市場抑制策や金融引き締め策への懸念が根強いため、株式市場では不動産関連株の先行きに対する不透明感を払拭できない。
 現在、中央政府は不動産投機と不動産会社の資金調達の抑制を進めている。投機抑制策の代表的なものとして、9月に発表された2軒目の住宅を購入する際の規制がある。具体的な規制内容は、頭金比率の30%から40%への引き上げや住宅ローン適用金利の引き締めであるが、最近の不動産市場を支えているのは都市部への人口流入や所得水準の向上による中産階級の急増であり、不動産の一次取得が大部分を占める。そのため、2軒目購入に対する規制強化が不動産需要に対して大きな影響を与える可能性は少ない。
 また、開発用地の保有期間は3年を超えないこととする規制が導入されたが、これは過熱化する不動産会社の開発用地の取得競争を沈静化させ、不動産市場の健全な成長を促すだろう。

不動産融資抑制策が大手による寡占化を促す

 さらに、政府は銀行の不動産会社への融資規制を強化しているが、大手不動産会社は増資や債券発行など直接金融による資金調達を行っており、それほどの影響はない。逆に、中小の不動産開発業者は直接金融による資金調達が困難で資金繰りに窮している。そのため、大手不動産会社が豊富な手元流動性をもとに中小を吸収することで業界再編は進み、不動産業界では寡占化が起きると予想する。

利上げは緩やかに

 中国人民銀行(中央銀行)の周小川・行長は資産インフレを回避するため、実質金利がマイナスの状況は避けなければいけないという旨の発言を行っている。預金基準金利(1年物)が3.87%(07年12月17日現在)、貸出基準金利(1年物)が7.29%、11月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.9%の上昇だったことを考えると、預金基準金利を念頭に置いた発言だったのだろう。そのため、預金基準金利を最低でも約3.0%引き上げる必要がある。
 しかし、中国のインフレ率を押し上げている食品価格は、8月以降、上昇速度が横ばいとなっている。ガソリンなどの石油製品価格の上昇に対する懸念はあるが、輸入の拡大等によって食品価格の高騰には歯止めがかかり、CPIは落ち着きを取り戻すだろう。このため、人民銀行による利上げ幅は上記の3.0%を下回る可能性が高く、利上げ速度も今まで同様に緩やかなものとなるだろう。
 さらに、政府は人民元の過剰流動性を抑えるために為替介入の規模を縮小させる可能性もある。その場合、人民元高の加速が本土の不動産株にとってプラスとなるだろう。


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大手不動産会社の業績は好調

 上場不動産会社の業績は好調を維持している。不動産市況が上昇している上に、数量ベースでも不動産販売が増加しているためだ。
 中国海外発展(0688)の07年中間決算は32.2%の増収、60.2%の増益を達成した。直接金融からの資金調達を武器に、開発用地の取得と全国展開を積極的に進めており、中長期的にも高い成長率が期待できる。また、広州富力地産(2777)の07年中間決算も151.8%増収、157.9%の増益となった。
 業界最大手の万科企業(200002)は07年1-9月期決算で66.6%の増収、31.9%の増益であった。不動産引き締め策が強化された後も好調な業績を維持しており、同社は一般大衆向け物件が主力で政府の不動産抑制策による影響は限定的としている。

航空業界

~原油高のマイナス要因があるが、旺盛な航空需要と人民元高が追い風、オリンピック関連銘柄としても注目~

急増する航空需要

 中国の航空市場は、中国経済の高い成長率や航空需要の増加に加え、最近の対米ドルでの人民元高を受けて新たな成長局面を迎えている。
 07年1-10月期の航空各社の旅客輸送量(路線区間に旅客数を乗じた数値)は2317億人㎞で前年同期比16.1%増、貨物・郵便輸送量(路線区間に貨物・郵便重量を乗じた数値)も92億トン㎞で21.6%増と好調であった。可処分所得の増加に伴い個人消費の高級化が進んでおり、飛行機は最も高価な移動手段として国民の間で人気化しつつある。そのため、近年、航空輸送量は他の輸送手段を大きく上回る伸びを示している。
 また、最近では、人民元高や観光ビザ取得の規制緩和などにより、海外旅行がブームとなって国外への渡航者数が急速に増加している。中国本土住民の出国者数は98年の842.6万人(延べ人数)から06年には3452.4万人へと4倍以上に増えた。さらに、旅客だけではなく対外貿易の急増やジャストインタイムを中心とする物流の高速化により、航空貨物・郵便輸送に対する需要も大きく、高い伸び率を保っている。
 だが、中国航空業界は米国に次ぐ世界第2位の規模に成長したものの、広大な国土の割に国民1人当りの利用率はまだ低い。08年の北京オリンピックや10年の上海万博に向けて航空業界全体の成長余地は依然として大きい。



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ジェット燃料価格引き上げの影響

 中国政府は、11月1日より、国内のガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料の価格を500人民元/トン引き上げた。国際的な原油価格の高止まりを受け、国内燃料価格の引き上げ観測はあったが、事前予想や過去の実績より引き上げ幅は少し大きかった。航空会社の営業コストに占める燃料費の割合が高いため、今回の値上げは航空各社の燃料コストを上昇させ、航空業界のオフシーズンにあたる07年第4四半期及び08年第1四半期の各社の業績に影を落とす可能性が高い。ただし、燃料費の価格変動は、ある程度燃油サーチャージ(付加運賃・料金)とリンクしているため、業績への影響度を判断する上で、今後の燃油サーチャージの引き上げ幅と時期に注意する必要がある。


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人民元高の恩恵

 07年に入ってから、人民元は対米ドルで上昇幅が拡大している。航空会社は外貨建て債務を抱えており、特に米ドル建て債務を多く持っているため、現在の為替動向は外貨建て債務の圧縮に繋がっている。また、人民元高によって輸入に大きく依存している機材や関連機器のコストが軽減されている。

大幅増益の大手航空会社

 国際線に圧倒的な強さを持つ国際航空(0753)は07年中間決算で242.5%の増益となった。人民元高による為替差益増加の影響が大きいが、座席利用率(有償旅客数/座席数)も前年同期の73.8%から75.8%に上昇した。同社は欧州路線の拡大も計画しており、更なる国際線の強化を目指している。また、第3四半期決算(中国会計基準、未監査)では前年同期比42.6%の減益となっているが、前年同期にドラゴン航空の売却益を計上したためで、その要因を除くと92.8%の増益となっている。
 南方航空(1055)は07年中間決算で黒字に転換した。同社も為替差益の影響が大きいが、座席利用率も71.9%と前年同期比で1.2ポイント上昇した。また、第3四半期決算(中国会計基準、未監査)では前年同期比49%の増益となった。
 東方航空(0670)は07年中間決算で赤字幅を縮小させ、1-9月期決算(中国会計基準、未監査)で黒字に転換した。

銀行業界

~高い経済成長を背景に拡大を続ける銀行業界、今後の収益の柱は個人・中小企業向け融資~

旺盛な資金調達意欲

 中国は高い経済成長を続けており、企業の資金調達意欲が旺盛で銀行融資へのニーズは根強い。一方、銀行もこれまでの不良債権の切り離し、再編や株式上場などを経て財務内容が改善しているだけではなく、リスク管理に対する自信から融資を積極的に行っている。この結果、銀行貸付は増加傾向にあり、07年10月末時点での全国金融機関による貸付残高(外貨を含む)は27.6兆人民元と前年同月末比18.1%増の高い伸び率を示している。


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経済成長パターンの転換で銀行貸付は低下へ

 中長期的には中国経済は高い成長率が見込まれ、今後も銀行業界の成長性は高いだろう。しかし、第17回中国共産党大会では「科学的発展観」を重要な指導方針と位置付け、質を重視した経済成長が政府目標として打ち出されているため、利上げや売りオペ等による金融引き締めの強化は避けられない。また、07年12月の中央経済工作会議でも金融政策を「穏健」から「引き締め」に転換する方針が示されている。そのため、銀行貸付の伸びは2ケタ台を維持しながらも、徐々に低下していくと予想する。

 だが、金融引き締め政策は融資業務からの利益を低下させる一方で、高リスク資産から低リスク資産へのシフトを促し銀行の財務内容の質と効率を高めるだろう。実際、経済成長への楽観的なムードによって貸出リスクが高まっており、銀行のコーポレートガバナンス(企業統治)にも課題が残っている。このような問題の解決には効果的な金融引き締め策や当局の監督が必要である。


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個人・中小企業向け融資が収益の柱に

 近年、大手企業は増資や債券発行など、直接金融による資金調達を活発化させているため、銀行は個人や中小企業向け融資に力を入れている。現在、消費者ローン市場は年間10%前後の拡大を続けていると見られるが、今後は所得向上による個人消費の高まりとともに更なる市場の拡大が見込まれる。また、中小企業も資金需要は旺盛であるが、直接金融による資金調達は難しく、銀行からの借入に頼っている。今までの大手国有企業への融資とは異なり、個人や中小企業向け融資はリスク管理の徹底など課題も多く存在するが、利ざやが大きく、今後の銀行における収益の柱となるだろう。

業績の好調な各銀行

 銀行業界を取り巻く環境は比較的良好で、H株を上場している各銀行も07年中間決算では好調な業績を挙げている。各行ともに、貸付残高の増加や利ざやの拡大等により金利収入は大幅に伸びており、手数料や仲介手数料等の非金利収入も利益貢献度は小さいが増加傾向にある。また、サブプライムローン問題も、現時点で、ほとんどの銀行が関連商品の保有がないことを表明しており、損失も軽微にとどまっている。
 個別の銀行では招商銀行(3968)の好調が目を引く。07年中間決算で純利益が前年同期比120.4%増の61.2億人民元となった。利ざやが2.85%と32ベーシスポイント拡大したほか、貸付額の増加により純金利収入は55.9%増、さらに各種手数料収入も137.0%増加した。1-9月期決算(中国会計基準、未監査)でも純利益は前年同期比128.1%増となっている。8月には一部メディアでサブプライム問題に関連して多額の損失が出ると報じられたが、06年にサブプライム関連商品は全て売却済みであるとコメントを発表している。また、A株とH株を重複上場している同行のAH価格差は、07年11月末時点で、1.15倍(A/H、1人民元=1.0523香港ドル)とその差は小さい。これは同行が本土投資家だけではなく、海外投資家からも高く評価されていることの表れでもある。
 H株を上場している中国本土系銀行の中で、07年中間決算での増益率が最も低かったのは交通銀行(3328)であったが、同行の純利益は前年同期比41.8%増と高い伸びを示しており、1-9月期決算も60.7%の増益となった。
また、資産規模で最大手の工商銀行(1398)は収益性の高い個人や小規模企業向け融資の開拓に力を入れたことが功を奏し、07年中間決算の純利益は61.6%増の410.4億人民元となった。純金利収入が前年同期比33.4%増となるほか、各種手数料収入も89.0%増加した。また、1-9月期決算でも66.3%の増益と好調を維持している。

保険業界

~社会保障制度が脆弱なために保険市場は拡大へ、高いブランド力と経営規模から大手に注目~

成長余地が大きい中国保険市場

 中国の保険市場は急成長している。2000-06年に生保全体の収入保険料は年平均で約26.7%伸びた。同期間の名目GDP額が年平均13.4%増であったことと比較すると保険市場の規模が急速に拡大していることが窺える。
 07年1-10月の生損保の収入保険料は5835億人民元で前年同期比24.2%増と高い伸びを示している。そのうち生命保険は20.5%増の4145億人民元、損害保険は1690億人民元で34.3%増加であった。だが、中国の社会保障制度が脆弱であるために保険市場は急速に成長しているものの、その市場規模は先進国から比べて大きく遅れている。中国の06年生命保険浸透度(名目GDP額に対する収入保険料の割合)は1.96%にとどまっており、日本の平成18年度生命保険浸透度5.42%を大きく下回っている。そのため、新商品の開発や農村部への進出等、中国保険業界の成長余地は大きいと判断できる。


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保険業界の発展を促す国家政策

 06年6月、中国政府は保険業界の中長期的な政策要綱として「保険業の改革と発展に関する若干の意見」を交付し、保険の重要性を強調した上で業界発展の目標と方針を明らかにした。その中で、保険市場を整備し、健全で効率的な競争力のある保険会社の育成を目指している。そのために、損害保険、再保険や保険仲介等を発展させ、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の改善、資金運用の強化、リスク管理の徹底や一般市民への保険知識の普及などに取り組む方針が示された。
 この意見書に加え、他の分野での改革動向から判断しても、今後、中国の保険業界は保険業務、保険商品、保険料や運用などの面で多様化と自由化が進むと予想される。中国経済の高成長、都市化、中間所得者層の増加、人口の高齢化など経済・社会面における変容は、医療保険、健康保険や年金保険等に大きなビジネスチャンスをもたらす。また、金利の自由化、資本市場における新商品・新業務の誕生など新しい流れを受け、保険会社の収益源は伝統的保険商品から、個人向け金融商品、資金運用商品へと広がりを見せるだろう。

集約度が高い生保業界

 保険市場の拡大に伴い、保険会社の数は急増しているが、大手のシェアは依然として高い。07年1-10月期における収入保険料で見た生保業界のシェアは、中国人寿保険(2628)で41.8%、平安人寿保険(2318)で16.0%、太平洋人寿保険で9.9%となっており、上位3社で67.7%のシェアを占める。ちなみに、外資系生保のシェアは小さく、合計で7.8%にとどまっている。
 生保業界最大手である中国人寿保険の07年9月末時点での総資産は9252億人民元となり、06年末比で27.3%増加した。また、07年1-9月期決算(中国会計基準、未監査)では、純利益が247.0億人民元となった。生命保険を専業とする同社は中国全土で強いブランド力を有し、収入保険料の約半分は内陸部と町村部から得ている。大都市での競争を避けることで、比較的高い利益率を保っている。さらに、同社は中国民生銀行(上海A株)の第三者割当増資に参加するなど、銀行、証券や信託等の分野への進出にも意欲をみせている。

 平安保険は生損保、投資信託、証券、銀行等の子会社を有する大手保険グループ。生保業界で第2位、損保業界で第3位の地位を誇る。07年9月末時点での同社の総資産は06年末比で34.6%増の6237億人民元となっている。また、07年1-9月期決算(中国会計基準、未監査)では、純利益が前年同期比145.7%増の116.8億人民元となった。グループ全体としての強い競争力をもとに、今後も着実な事業拡大が期待される。


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ブランド力や経営規模が重要となる保険業界では、中小の保険会社が大手に打ち勝つには人材面でも資金面でも難しく、今後も大手保険会社による寡占状態は続く可能性が高い。そのため、大手保険会社の優位性は揺るがないだろう。


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