チャイナマンスリーレポート

12月号

2011年12月1日 内藤証券中国部

欧州債務問題が拡大だが、押し目は買いのタイミング

本土市場
引締め緩和期待と景気・企業業績減速懸念との綱引きに

 11月の本土株式市場は中旬にかけて高値圏でのもみ合いが続いたが、月後半にかけて反落、再び下値を探る動きとなった。

 10月終盤にかけて戻り局面が続いていた上海総合指数だが、11月に入っても上昇基調を継続。2日には終値で2504.10ポイントと約1カ月半ぶりに2500ポイント台を回復、4日には2528.29ポイントまで上昇した。1日に発表された10月の製造業購買担当者指数(PMI)は前月から0.8ポイント低下し、景気減速への警戒感が高まったものの、10月下旬に4大国有銀行の新規貸出が急増したとの観測が伝わったことで、金融引き締め緩和への期待感が高まり、買い安心感につながった。

 しかし、上昇局面は長続きせず、その後は中旬に至るまで2500ポイントを挟んだもみ合いが続いた。この間、10日にはイタリア国債の利回りが危険水準といわれる7%台に上昇したことで、世界的に株価が急落。その流れに巻き込まれた形で再度2500ポイント割れとなったが、14日にはイタリア情勢の好転から反発、15日には終値で2529.76ポイントまで上昇した。一方、月末にかけてはフランス国債の格下げ観測や米国の財政赤字削減策の行方に不透明感が広がる、などで世界的に株安が続いたうえ、国内でも国有企業の業績が減速傾向にあることなどを背景に、景気先行きへの不透明感が強まったことで、下落基調が続いた。

 ギリシャ問題の進展でいったんは明るさが見えた欧州債務問題だが、ここに来てイタリア、スペインからフランス、ドイツにまで問題が飛び火、事態は混迷の度を深めており、世界的なリスクオフの動きにつながっている。一方、国内ではインフレにピークアウト感が出てきており、金融引締め緩和期待が高まるなかで、国内景気・企業業績の減速懸念も同時に強まっている。欧州の債務問題がある程度の進展を見るまでは株式市場の本格反転は期待し難いが、基本的に現状株価が底値圏にあるとの認識に変わりは無く、押し目買いのタイミングと考える。(11/25 村上)

香港市場
株価下落で再び割安感が強まる

 11月の香港株式市場は中旬にかけて高値圏での乱高下が続いたが、その後月末にかけて下げ足を早める展開となった。

 10月下旬にかけて戻り基調にあったハンセン指数だが、11月入りとともにアップダウンの激しい展開に。1日は米国の金融先物大手MFグローバルの破綻が伝えられたことで前日比494ポイント安、2日は本土での銀行貸し出しの増加を好感し同363ポイント高、3日はギリシャの国民投票問題で同491ポイント安、さらに4日は欧州中央銀行の予想外の利下げで同600ポイント高といった具合だ。ギリシャを中心とする欧州情勢に大きく振り回される格好となったわけだが、本土市場が堅調な動きを続けていたこともあり、下値は限定的だった。

 その後も中旬に至るまで同様の動きが続いた。特に、10日は前日比1050ポイント、同5.2%の急落となり、19000ポイントを割り込んだ。イタリアの10年物国債利回りが危険水準といわれる7%台に上昇したことで、パニック売りが世界各地に広がり、香港市場もこの混乱に巻き込まれた。中旬にかけては急落からの自律反発的な動きもあり、いったんは19000ポイント台半ばを回復したものの、15日以降は5営業日連続で下落など、下げが止まらず23日には終値で17864.43ポイントと18000ポイントを割り込んだ。

 欧州債務問題がフランス、ドイツにまで飛び火、米国でも財政赤字問題が再燃、など海外環境は再び混迷の度を増している。こうしたソブリン・リスクの拡大を背景に欧米銀行の資金回収が本格化、いったんは止まっていた香港など新興国市場からの投資資金引き上げが再度、起こりつつあるようだ。リスクマネーの引き上げに伴う機械的な売りにより直近株価は大幅に下落、香港市場の割安感が再び強まってきた。欧米発の材料で引き続き不安定な動きが続く可能性大だが、押し目は買い場と考える。( 11/25 村上)

特集:物価上昇率の鈍化に伴って金融緩和観測が浮上

利下げによって大きな恩恵が期待できる銘柄群

 11月25日、中国人民銀行(中央銀行)は一部の農村部向け金融機関に対して預金準備率を0.5%引き下げ、16.0%とした。これによって市場では金融緩和への期待感が大きく膨らんだ。ただ当局の発表によれば、今回の措置は一年前に実施した上乗せ分を取り除いて「正常化」させただけであり、「引き下げ」ではないとしている。しかし、10月の消費者物価指数が前年同月比5.5%上昇と前月に比べ伸び率が0.6ポイント低下するなど、金融緩和の実施に向けた環境が整いつつある。そのため、来年早々にも大手銀行を含めた預金準備率の引き下げ、更には基準金利の引き下げが行われる可能性が高い。

 そこで今回は、利下げによって大きな恩恵が期待できる企業を下表にまとめてみた。具体的には前期決算で総資産に対して純債務の多い銘柄を選んだ。純債務は長短借入金の合計額から現金および現金同等物を控除したものであり、その企業にとって正味の借入金と言える。それゆえ、借入金利が低下すれば、支払利息の減少に繋がり、純利益を押し上げる可能性がある。もっとも、借入金の多い企業は財務体質が脆弱な場合もあるため、今期および来期予想で二桁の増益が見込まれる企業に絞った。

 海外市場が不安定な動きを続けており、現状では中国株も難しい展開が予想されるが、金融緩和に伴う相場の転換にも備えておきたい。(11/25 へフティ)

予想PER(ハンセン指数)
好業績かつ総資産に対して借入金が多い銘柄

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東方電気(ドンファンエレクトリック)

01072〈N1360〉香港 株価チャート

四川省に本拠を置く、大手発電設備メーカー

 高効率・クリーンエネルギー設備(火力発電、原子力・ガスタービン)、新エネルギー設備(原子炉、風力発電)、水力発電・環境保護設備、エンジニアリングサービスの4事業が収益の柱。特に、近年は新エネルギー事業の強化に注力。

 11.1-9月期の業績(中国会計基準)は売上高が前年同期比15.9%増、純利益が同33.5%増。風力発電の製品単価が落ち込んだことで新エネルギー事業の業績が悪化したものの、他の部門が好調だったことで二桁の増収を維持した。また、高付加価値製品の割合を引き上げるなど、製品構成を見直したことやコスト削減に努めたことが功を奏し、全体の粗利益率は前年同期に比べ1.9ポイント上昇して20.5%となった。

環境保護政策が追い風に

 日本の原発事故をきっかけに、現在、中国では新規の原発建設計画が凍結されている。ただ、国内での慢性的な電力不足を背景に来年初めにも原子力発電所建設に対する政府の許認可作業が再開されるもよう。一方で、火力発電所が放出する大気汚染物質の排出基準が来年から厳格化される。そのため、火力発電設備の改修や脱硫脱硝装置の設置など、発電関連設備の需要は高水準を続ける見通し。

 このような中、同社は今1-9月期に365億元の新規受注を獲得するなど、豊富な受注残高(9月末、1500億元以上)を保有している。環境保護を重視する中国政府の方針を追い風に、今後も高成長を続けよう。

神華能源(シェンホア・エナジー)

01088〈N1080〉香港 株価チャート

中国最大級の石炭会社

 内モンゴル自治区と陝西省に複数の炭鉱を持ち、10年末時点の可採埋蔵量は115億トンに上る。また、石炭輸送用として鉄道網や港湾設備を保有するほか、北京市、天津市や河北省等で発電事業も手掛ける。今上期の売上構成比は石炭69.9%、発電27.4%、輸送およびその他2.7%。

 11.1-9月期の業績は売上高が前年同期比35.7%増、純利益で同19.0%増。特に、主力の国内石炭事業が堅調だった。なかでも、スポット市場での販売量が同68.8%増の高い伸びを示した。さらに、販売単価に関しても長期契約では前年同期に比べ8.3%低下したものの、スポット販売で同11.7%上昇し、国内全体として同6.7%の上昇となった。一方、発電事業も電力販売量が同26.6%増と、好調であった。

積極的な企業買収を通じて事業規模を拡大

 同社は石炭の生産量を年平均15%ずつ増加させる計画を立てている。この方針によれば、15年には年間生産量が4億トンを上回り、昨年の生産量2.2億トンに比べて倍増する見通し。そのため、足元では石炭関連企業の買収を積極的に行っている。実際、今年8月末には親会社からの新たな資産買収計画が始まった。買収完了には6-9カ月の期間が掛かる見込みだが、総額で190億元に達する模様。

 また、発電事業に対しても買収による事業規模の拡大に意欲を見せている。石炭の生産から発電まで行う一貫した事業モデルを構築することで経営基盤は更に強固なものとなろう。

華潤燃気(チャイナリソーシズガス)

01193〈N1110〉香港 株価チャート

政府系コングロマリットに属する都市ガス会社

 中央政府系の大型コングロマリット「華潤集団」に属する。11.6月末時点で東部沿海部、西南部を中心に15省で計57件の都市ガスプロジェクトを展開。

 11.6期(中間)の業績は、売上高が前年同期比68.4%増、純利益で同57.5%増と、引き続き大幅な増収増益となった。新たに9つの都市に進出したことで、ガス販売量が同44.6%増の33.6億立方メートル、供給戸数も同44.1%増の927万世帯と、事業規模が大きく拡大したためだ。さらに販売単価の上昇も加わり、ガス販売部門は同74.5%増収、売上高全体の約8割を占めた。また、利益率の高いガス管敷設部門もセグメント利益で同60%以上の増益と、好調であった。

積極的な事業戦略に注目

 都市ガス市場は政府による規制が厳しく、ガス料金が低く抑えられているものの、事業ライセンスは1都市に対して1社に限られ、長期的に安定した収入が保証される。このため、事業地域の拡大が収益の増加に直結する。こうしたなかで、同社は中央政府系のコングロマリットに属する優位性を存分に発揮し、親会社からの資産買収、地方政府との提携強化や地域ガス会社の買収などを進めてきた。足元でも11月に天津市の政府系企業と合弁で同市のガス事業への進出を発表するなど、積極的に事業規模を拡大させている。特に、天津市は向こう5年でガス供給量を現在の6倍以上まで引き上げる目標を掲げており、将来的には収益の大きな柱となろう。

中国工商銀行(ICBC)

01398〈N1398〉香港 株価チャート

国内最大規模の商業銀行

 四大国有銀行の一角。全国規模で商業銀行業務を展開している。総資産、貸出・預金残高などで業界トップの座を維持しており、11年9月末時点の総資産は15.1兆元、貸出残高は7.6兆元、預金残高は12.1兆元。

 11.1-9月期も引き続き二桁の増益を記録した。融資の伸びが他行を上回り、純金利収入は前年同期比20.5%増。利上げで全体の金利水準が上昇するなか、金利スプレッドも順調に拡大したためだ。さらに、高い物価上昇を背景に預金金利が実質的にマイナス状態を続けたことで資金運用商品等への人気が高まり、全体の手数料収入も同43.5%増と、膨らんだ。

安定的な貸出、利息収入の増加が見込める

 9月末の不良債権比率は0.9%と四大銀行のなかで一番低く、逆に不良債権に対する引当率は273%と最も高かった。また、自己資本比率も12.5%と比較的に高水準を維持しており、融資焦げ付きに伴う増資リスクは限定的と言えよう。

 さらに、足元では物価上昇の鈍化を受けて金融緩和観測も浮上している。これは銀行にとって貸出環境の改善を意味し、同行にとっても追い風となろう。特に、預貸率が当局の定める上限を大きく下回っている同行では貸出余力が大きい。また、要求払い預金の比率も相対的に低く抑えられており、安定的に預金を優良企業への融資にまわせる。加えて、国内最大手として預金獲得競争を引き続き優位に進めていくとみられ、安定的な貸出や利息収入の増加が見込めよう。

瑞声科技(AACテクノロジーズ)

02018〈N2018〉香港 株価チャート

好業績が続く小型音響部品メーカー

 マイクロフォンやスピーカー等、小型音響部品の製造を主力とする民営企業。同社の製品は携帯電話端末、ノート型PC、デジカメなど、多くの電子機器に組み込まれており、高い競争力を誇る。さらに、最近ではアンテナやバッテリー等、音響部品以外の分野にも進出。今上期の売上構成比は音声部品79.3%、マイクロフォン10.4%、ヘッドセット他10.3%。

 11.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比41.1%増、純利益で同39.6%増。モバイル向け部品市場が好調で主力製品の音声部品とマイクロフォンは、それぞれ同58.3%、43.3%の大幅な増収となった。さらに利益面でも両事業は粗利益ベースで、それぞれ同49.9%増、61.6%増と、高い伸びを示した。また、今1-9月期も同27.8%増収、純利益で同16.0%増益と、引き続き好業績を維持している。

「iPhone」など、スマートフォン需要の拡大が追い風に

 現在、同社ではスマートフォン(多機能携帯電話)向け部品の売上が全体の6割程度を占める。特に米アップルを最大の顧客としており、最新型「iPhone」向け部品の供給会社の一社となっている。そのため、世界的な「iPhone」の普及に伴って売上が大きく伸びる見通し。また、タブレット型PCの「iPad」にも部品が採用されているもようだ。ノキア、モトローラーといった欧米の大手通信機器メーカーにも部品を供給しており、スマートフォンやタブレット型PCに対する需要の拡大が同社に大きな恩恵をもたらそう。

蒙牛乳業(チャイナモンニュウデアリー)

02319〈N2319〉香港 株価チャート

中国本土の大手乳製品メーカー

 内モンゴル自治区を主な生産拠点として乳製品の製造販売を手掛ける。かつては民営企業であったが、09年に国務院直属の中糧集団(COFCO)が資本参加したことで同グループに加わった。今上期の売上構成比は牛乳・乳飲料・ヨーグルト87.7%、アイスクリーム11.2%、その他乳製品1.1%。

 11.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比28.7%増、純利益で同27.6%増。主力である超高温殺菌(UHT)牛乳の販売が堅調だったほか、ヨーグルトも前年に行った企業買収の影響で同73.9%増収と、急拡大を遂げた。また、原材料となる生乳価格が高騰したものの、販売管理費の抑制や高付加価値製品の販売比率増加等によって吸収した。

生産能力を更に増強する方針

 同社は今後も生産能力の増強を図る見通し。実際、今年7月には中国西北部の寧夏回族自治区に新しい生産拠点を建設し、操業を開始させた。同工場は最新鋭の生産ラインを9本も備え、生産能力が年間で24万トンに上ると見込まれている。また、企業買収についても積極的な姿勢を示す。さらに一方で、品質管理に関しても一段と強化する方針。生乳の仕入先に対する支援や自社調達比率引き上げ等を通じて、品質管理体制の充実を図っている。

 原材料価格の上昇といった懸念材料もあるが、牛乳やヨーグルトなど、乳製品の需要が足元で回復していることから、今後も安定した成長を続けよう。

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