チャイナマンスリーレポート

6月号

2012年6月1日 内藤証券中国部

海外情勢は不安定だが、景気対策の本格化で株価も回復へ

本土市場
景気対策の本格化で株価も回復へ

 5月の本土株式市場は月初こそ高値追いの動きが続いたものの、中旬にかけて反落。その後は、一進一退の方向感に欠ける展開となった。

 4月終盤にかけて堅調な動きが続いていた上海総合指数だが、5月に入っても上昇基調を継続、4日には終値で2452.01ポイントと本年高値に接近した。A株の取引手数料引き下げなど株式市場に対する支援策が好感されたほか、1日に発表された4月の製造業購買担当者指数が5カ月連続で前月を上回ったことで国内景気の減速懸念がいったん後退、などが背景だ。

 ただ、その後は中旬にかけて急反落。7日から3日続落のあと1日おいて11日から4営業日連続で下落し、16日には終値で2346.19ポイントまで下げた。ギリシャで再選挙の可能性が浮上し、世界的にリスク回避の動きが進むなかで、この間に公表された4月の主要経済統計が軒並み事前予想を下回るなど、景気減速懸念が急速に高まったためだ。12日には預金準備率の引き下げが発表されたが、地合いを好転させるまでには至らなかった。

 一方、下旬にかけては取り敢えず下げ止まったものの、2300ポイント台半ばで一進一退の動きが続いた。ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びるなど欧州情勢の不透明感が強まるなか、引き続き国内景気の先行き懸念が売り材料となったが、一方で政府の景気支援に対する期待感が下支え要因となった。

 預金準備率の再引下げ発表後も株価下落に歯止めが掛からなかったのは、政策当局と市場の景気認識のギャップを物語るものだろう。ただ、その後の温家宝首相の「予備的調整」実施発言や省エネ製品の購入補助策導入などの動きを見る限り、このギャップも急速に埋まってきたようだ。中国の場合、金融・財政両面での政策対応により景気の底割れを防ぐことは十分可能だ。今後もインフラ投資の再開などを含め景気対策が本格化しよう。つれて株価も戻り局面に入ると考える。(5/25 村上)

香港市場
欧州情勢が頭を抑えるが、下げ過ぎの修正局面へ

 5月の香港株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、その後失速、下旬にかけては下値を模索する動きとなった。

 4月の終盤にかけて戻り歩調にあったハンセン指数だが、労働節休暇明けの5月2日をピークに一転して下落基調に転じた。4日に発表された米雇用統計が市場予想を下回り、米国景気の先行き不透明感が拡大。さらにフランス大統領選挙で現職のサルコジ氏が敗北し、成長路線を重視するオランド氏が当選。一方で支援の対象国であるギリシャの総選挙で緊縮策の反対勢力が台頭したことから、これまで積み上げてきた債務問題の解決スキームに対する不透明感が高まった。これらの悪材料が世界的な株安を誘因。香港市場もこの流れに逆らえなかった。

 中旬以降も下落基調は変わらず11日には20000ポイント割れ、さらに18日には19000ポイントを割り込んだ。中国本土の4月の経済指標が軒並み下振れたことで、本土景気に対する先行き不安が俄かに台頭。さらに海外ではギリシャが再選挙を決めたことでユーロを巡る混乱の長期化が決定的となるなか、ギリシャの無秩序なデフォルト、ユーロ圏離脱が現実味を帯びてきた。これにより、世界的にリスクマネーが一層収縮するとニューヨーク市場をはじめ、先進各国の株式市場が下落。香港市場ではこの流れがさらに強まることとなり、海外投資家による見切り売りが膨らんだ。

 足元で株式市場の最大の重石となっている欧州問題は、6月17日のギリシャ議会の再選挙までは様子見状態が続きそうだ。ただ、既に各国ともギリシャのユーロ離脱、デフォルトを想定した準備行動を進めている模様なだけに、ある程度の折り込みは進んでいると考えられる。また、中国本土の景気についても今後の政策当局の対応本格化で底割れの可能性は小さいものと思われる。欧米発の材料で引き続き不安定な動きが続く可能性大だが、株価の大幅な下落も手伝って割安感が再び強まってきているだけに、押し目は買い場と考える。 ( 5/25 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:景気対策の加速で関連銘柄には底堅さも

欧州情勢の緊迫化、景気減速懸念で波乱含みの展開

 ギリシャでは6月17日に再選挙を控え、ユーロ圏離脱という最悪シナリオも浮上するなど、先行きに対する不透明感が高まっている。そのため、海外市場の影響を受けやすい香港株式市場は、欧州情勢の動向に左右される状況が当面続こう。また、これに拍車をかけて中国国内でも景気減速に対する警戒感も強まっている。実際、5月に公表された4月の主要統計は輸出入、工業生産、小売総額など、多くの分野で事前予想を下回り、投資家の心理を冷やした。

 ただ、政策当局も5月12日には預金準備率の引き下げを発表、その後更に、省エネ基準を満たした製品に対する購入補助策を打ち出すなど、景気の“ハードランディング”回避に向けた動きをみせている。中国は、欧米を始めとする先進国とは異なり、金融と財政の両面において比較的余裕があるため、景気の動向次第では一段の刺激策を打ち出してこよう。

景気対策の加速で関連銘柄には底堅さも

 そこで、中国政府が直近で発表済み、あるいは今後見込まれる景気対策をまとめた。まず、金融政策では預金準備率の更なる引き下げに加え、基準金利の引き下げ。特に、基準金利の引き下げ時期は当初の市場予想よりも早まる可能性がある。一方、財政政策は大型の景気刺激策ではなく、特定分野に焦点を絞った内需振興策が中心となろう。中でも、農村・西部地区におけるインフラの整備など、重要性の高いプロジェクトは開始時期が前倒しされる見通し。さらに、昨年の高速鉄道の事故以来、プロジェクトの進行が一時滞っていた鉄道網の整備も急ピッチで進められよう。このほかにも、個人所得税に対する最低課税所得の引き上げや税率の引き下げ、法人への課税軽減など、減税策の強化も期待できよう。欧州情勢が混迷の度合いを深めている現状ではあるが、早晩、中国株市場は落ち着きを取り戻し、こうした銘柄に注目が集まろう。(5/25 畦田)

既に発表済み、あるいは実施が見込まれる中国株の景気対策

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中国通信服務(チャイナコミュニケーションズ)

00552〈N0552〉香港 株価チャート

中国通信支援サービス大手

 国務院傘下の中国電信集団公司を筆頭株主とする電気通信事業のサポートサービス会社。主に通信インフラ建設を行う電気通信インフラ・サービス事業(TIS)、ネットワークメンテナンス等の電気通信事業者向けビジネス・プロセス・アウトソーシング事業(BPO)、インターネット付加価値サービス等のアプリケーション・コンテンツ事業(ACO)、などを手がける。11.12期の売上構成比は、TISが46.9%、BPOが41.7%、ACO・その他が11.4%。

 通信支援サービス業務では全国規模で事業を展開しており、携帯電話首位の中国移動(チャイナモバイル)をはじめとする本土3大通信キャリアを主要顧客に持つ。また、東南アジア、アフリカ、南米等の新興国市場にも進出している。

11.12期は二桁増収増益が続く

 11.12期の業績は、売上高で前年比17.8%増の535.1億元と、はじめて500億元を突破した。純利益は21.1億元、同17.2%増。なお、当期末における現金配当は、1株あたり0.1222元の予定(権利落ち日:7月9日)。

 TIS事業は国内通信キャリアによる建設需要の拡大を受け、売上高が同16.1%増の251.1億元。特に、モバイル通信網のアップグレード、光ファイバー・ネットワークの建設、ブロードバンド通信インフラの投資等が活発であった。また、TIS事業が好調だったことで、3大通信キャリア向けの売上高は、同15.9%増の341.5億元に上り、総売上高の63.8%を占めた。さらに、BPO事業でもネットワークメンテナンス業務の急拡大や3G携帯電話の販売増を受け、売上高が223.2億元、同20.6%増と全体の伸びを牽引した。加えて、ACO事業も政府機関や法人顧客に対する情報化サポートサービスの提供を強化したことなどで、売上高が60.8億元、同15.3%増となった。

 一方、利益面では経営規模の拡大に伴う販管費の増加など、コストアップの傾向が現れたものの、増収効果や低採算業務のアウトソーシング割合を引き上げることでその影響を抑え、前年度に続き二桁の増益を確保した。

高機能通信、スマートフォンの普及が安定成長を支える

 中国政府は高機能通信サービスの利用を普及させるため、10年からの3年間で光ブロードバンド通信ネットワークの建設に総額1500億元以上を投資すると発表している。さらに、第12次五カ年計画(11-15年)期間中に計1.6兆元をブロードバンドネットワーク建設に投じる見込み。光ブロードバンドの普及世帯数を2億戸まで引き上げる方針だ。このため、3大通信サービス会社による高機能通信網への投資は今後も加速する方向にあり、同社の業績拡大を下支えする要因となろう。

 また、足元ではスマートフォンをはじめとする高機能携帯端末の普及がデータ通信の増加をもたらし、大手通信キャリアにモバイル通信網のグレードアップを促している。中国では低価格機種を中心に今後もスマートフォン市場が拡大を続けると予想されるだけに、同社は中長期的に安定した成長を続けよう。(高)

事業別売上高構成比(11.12期)
業績推移

青島ビール(チンタオブルアリー)

00168〈N2060〉香港 株価チャート

山東省に本拠を置く大手ビール会社、増収増益が続く

 老舗ビールメーカー。国内の市場シェアは約14%で第2位。昨年末時点で本土の18の省・直轄市・自治区に56のビール工場を持つ。主力の「青島ビール」は世界70以上の国および地域に輸出されており、高いブランド力を誇る。

 11.12期の業績は売上高が前年比16.4%増、純利益で同14.3%増。ビールの販売量が同12.6%増の715万キロリットルに上った。特に、中核ブランドの「青島ビール」が同15%増となったほか、生ビールなどのハイエンド商品も同23%増加した。また、主原料である大麦の価格が上昇したものの、高付加価値商品の販売比率が拡大したことで、粗利益率は42.1%と、前年に比べ1.5ポイントの低下にとどまった。

積極投資で市場シェアを拡大、海外進出にも注目

 同社は工場の建設・拡張や企業買収などを通じて、市場シェアの向上を目指す方針。ただ短期的には、こうしたシェア拡大戦略は利益率の低下を招く懸念がある。しかし、生産や流通の面で規模の優位性を実現できるほか、価格交渉力も高まる。それゆえ、中長期的には収益力の強化に繋がろう。

 また来年には、初めての海外拠点として東南アジアのタイでビールの生産を開始する予定となっている。現時点ではグローバル化への第一歩を踏み出したばかりだが、海外事業を本格的に展開していく上での一里塚となろう。加えて、国内ビール市場の拡大や業界再編なども追い風となることから、同社は中長期的に安定した成長を続けよう。(佐藤)

江西銅業(ジャンシーコパー)

00358〈N3690〉香港 株価チャート

江西省政府系の大手銅メーカー

 銅の採掘、選鉱、精錬等を行うほか、貴金属、モリブデンや硫酸などの生産も行う。11年末時点の確認埋蔵量は、銅1089万トン、金343トン、銀9669トン、モリブデン26.5万トン。昨年の売上構成比は銅カソード56.9%、銅棒22.7%、銅加工品5.1%、金6.8%、銀3.2%、その他5.3%。

 11.12期の業績は売上高が前年比53.8%増、純利益で同32.1%増。主力商品である銅カソードが設備の増強に伴って販売量を増加させたことに加え、平均販売単価も上昇したことで、売上高が同68.5%増となった。さらに他の商品でも、銅棒が同31.9%増、金が同52.6%増となるなど、いずれも大幅な伸び。ただ、年後半の銅価格の急落や販管費の増加を受けて粗利益率は8.3%と、前期に比べ2.2ポイント低下した。

生産能力の拡大によって成長を維持

 同社では今後も設備増強を加速させる構え。実際、今年前半には年産能力40万トンの銅棒工場が稼働する予定など、着々と新プロジェクトが進行中だ。さらに、採掘事業でも設備拡張を計画しており、銅精鉱の自給率も引き上げていく模様。

 また、銅鉱石の生産能力拡大に伴い、副産物である貴金属の生産量も増加する見込み。足元で金や銀の価格は一時期に比べ多少下落しているものの、欧州問題の再燃で価格が上昇へと転じる可能性もあり、同社の収益を嵩上げする要因となろう。銅価格の世界的な下落など、リスク要素もあるが、生産能力の拡大によって今後も安定した成長を続けよう。(有井)

中国交通建設(CCグループ)

01800〈N1810〉香港 株価チャート

港湾インフラ建設・設計の最大手、11.12期は二桁増益

 筆頭株主は国務院管理下の中国交通建設集団。主に港湾、道路等の交通インフラ建設、河川等の浚渫、港湾機械等の産業設備製造を手掛ける。昨年の売上構成比は交通インフラ建設・設計80.4%、浚渫10.7%、産業設備・その他8.9%。

 11.12期の業績は前年比7.9%増収、同22.6%増益。中核の交通インフラ建設・設計事業が同8.0%増収、営業利益で同19.6%増益と、好調だった。特に内陸部における河川網の充実を図る政府方針の下、港湾建設や橋梁整備の需要が増加した。また、産業設備事業も経営環境の改善を機に黒字転換を遂げた。一方で、12.1-3月期決算(中国会計基準)は純利益で前年同期比3.6%減と、若干の減益であった。

受注状況は堅調を持続、海外市場の開拓等も追い風に

 昨年、同社では新規受注額が前年比11.2%増の4578億元に達し、期末の受注残高が6000億元を超すなど、受注状況は好調だ。なかでも、「西部大開発」戦略の影響で内陸部におけるインフラ投資が活発化している。加えて、海外でも中国政府の「走出去(企業の海外進出を促す)」策を後ろ盾として新興国市場を中心にインフラ工事の獲得で成果を上げている。

 また、今年3月には上海A株市場への上場も果たした。これによって、同社は潤沢な資金を活かして財務体質強化や設備増強を図る予定。足元で中国政府が景気刺激策の一環としてインフラ投資の前倒し計画を発表しており、同社は今後も高成長を続けよう。(高)

安徽古井貢酒(アンホイグージン)

200596〈N2190〉深セン 株価チャート

安徽省に本拠を置く大手白酒会社、好業績が続く

 中国八大名酒の一つに挙げられる「古井貢酒」等の製造販売を手掛ける。主力商品である「古井貢酒」は三国志時代の名将曹操が漢の皇帝に献上した「九ウン春酒」をルーツとするとも言われ、1800年以上の歴史を持つ。

 11.12期の業績は売上高が前年比76.0%増、純利益が同80.5%増。主因は白酒の販売量増加。特に高級白酒の売上高が同2.1倍と急拡大したことで、全体の粗利益率は前年に比べて2.2ポイント上昇した。また、積極的な市場開拓によって売上高に対する販売費の比率が同2.6ポイント上昇したものの、増収効果で吸収した。さらに、今1‐3月期も前年同期比40.1%増収、純利益で同53.2%増と、引き続き好調だ。

白酒の生産・販売量が一段と拡大する見込み

 同社は昨年の増資によって調達した12.3億元の資金を投じ、生産拠点や販売網の拡大を今後図る模様。具体的には、醸造技術の改良に約1.2億元、生産関連の施設建設などに約6.6億元、販売網の拡張に約2.8億元、ブランド力の強化等に約1.7億元を投資する予定。また足元では販売員の拡充やマスメディアを活用した販売促進も積極的に実施している。

 近年、国内での経済成長に伴って個人所得が向上しているほか、活発なビジネス活動等を背景に、宴席や贈答品として白酒需要は拡大傾向にある。実際、過去5年間で国内の白酒生産量は倍増しており、今後も続く見通し。同社も需要の拡大から中長期的に高い成長力を維持しよう。(佐藤)

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