チャイナマンスリーレポート

7月号

2012年7月2日 内藤証券中国部

海外情勢は徐々に好転、景気対策も本格化し株価も回復へ

本土市場
下期にかけて景気対策効果が表面化へ

 6月の本土株式市場は月初から調整色の強い展開。中旬にはいったん下落に歯止めがかかったものの、その後月末にかけて、再び下値模索の動きとなった。

 5月終盤には回復に転じた上海総合指数だが、6月に入ると初日こそ堅調なスタートとなったものの、週明けの4日には前営業日比2.7%安と本年最大の下落率を記録。米雇用統計の悪化で米国市場が大幅続落となったほか、東京市場も急落し、年初来安値を更新するなど、外部環境の悪化が響いた。

 その後、中旬にかけては取り敢えず下げ止まったものの、2300ポイントを挟んで安値圏での一進一退が続いた。7日夜に中国人民銀行(中央銀行)が約3年半ぶりとなる基準金利の引き下げを発表したが、翌8日の上海総合指数は続落。利下げ発表のタイミングが5月の主要統計発表直前だっただけに、投資家は統計数字の大幅な下振れを警戒、逆に買い意欲をそがれる結果となったようだ。ただ、発表された数字は懸念されたほど悪化しておらず、いったんは安心感が広がった。

 一方、月末にかけては再度、弱含みに転じた。世界的な景気悪化への警戒感が払拭されないなか、国内でもHSBC算出の6月の製造業購買担当者指数(速報値)が8カ月連続で50を下回り、中国景気への懸念が一段と高まった、などのためだ。

 5月の預金準備率再引下げに続き、6月8日の基準金利引き下げと金融緩和が進む一方で、株価下落に歯止めがかからない。大型景気対策に対する“催促相場”的な動きになっているようだ。ただ、5月半ば以降、政府は省エネ製品の購入補助策導入などを皮切りに、矢継ぎ早に景気支援策を打ち出している。確かに08年の“4兆元の大型景気対策”に比べれば小出しの印象は否めないが、一定の効果は期待できよう。再利下げを含め追加の景気対策も予想されることから、下期にかけて景気は回復に転じる見通し。つれて株価も戻り局面に入ると考える。(6/26 村上)

香港市場
内外情勢とも徐々に好転へ、押し目は買い場に

 6月の香港株式市場は月初に急落したものの、その後中旬にかけて回復。一方、下旬には再度、弱含みに転じた。

 5月はほぼ月間を通して下落が続いていたハンセン指数だが、6月に入っても基調は変わらず、1日の71ポイント(0.4%)安に続き週明け4日には372ポイント(2.0%)の下げと急落し,18000ポイント台前半まで売られた。1日に発表された米雇用統計が市場予想を下回り、米国景気の先行き不透明感が拡大したことで米国市場は大幅に続落。欧州情勢への警戒感も続くなか、世界的なリスクマネー収縮の動きが、週明けの香港市場にも波及したかたちだ。さらに中国国内でも4日に発表された非製造業景況感指数が弱い内容となったことも響いた。

 ただ、株価は4日を底に回復に転じ、5日から3日連騰、さらに1日おいて11日には前営業日比451ポイント(2.3%)高と急上昇した。米国市場が各国の追加金融緩和への期待から反発に転じたほか、スペインに対する総額1000億ユーロの金融支援が決まったことで、スペインの信用不安が後退、世界的にリスクマネーの動きが活発になった。また、前日までに発表された中国の主要統計が、懸念されたほど悪い内容ではなかったこともプラス材料に。

 その後も上昇基調を継続、20日には19518.85ポイントまで買われた。ただ、月末にかけては米国市場の下落や本土市場の低迷から再度軟調な動きに。

 ギリシャのユーロ離脱という最悪のシナリオは取り敢えず回避、スペインに対しても金融支援が決定され、欧州債務問題は目先の峠を越えたようだ。米国についても弱い経済指標が懸念材料ではあるが、QE3への期待が残るだけに過度な悲観も必要なかろう。一方で中国本土の景気も金融緩和や各種の支援策を支えに、下期には上向きに転じる可能性が高い。株価の割安感も強まっており、押し目は買い場と考える。(6/26 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:上期の総括と下期の展望、政策措置の強化で景気底入れ・株価回復へ

上期の香港株式市場は“行って来い”の展開

 上期の香港市場を振り返ると、2月までは順調に上昇したが、その後は月ごとに上げ下げを繰り返し、結局は年初からの上げ幅をほぼ帳消しとする“行って来い”の展開となった。1Qに景気が底入れせず、2Qも低迷したため、景気回復を期待して買いを入れてきた投資家が5月から本格的に売りに転じたからだ。欧州債務問題も、売りに拍車をかけた。

 全般的に外需の不振が製造業、ひいては国内の経済全体に波及したようだ。一方、昨年まで大きな問題となってきたインフレは想定以上に鈍化。5月の消費者物価指数は、前年同月比3.0%の上昇にとどまった。これによって景気対策の選択肢が増え、中国政府は徐々に政策措置を強化。6月には基準金利の引き下げに踏み切った。

政権交代を控え、景気対策の加速で底入れへ

 下期を展望する際、10月に予想される中国の政権交代が重要なポイントとなる。この政治的に敏感な時期は、政府にとって何よりも国内経済の安定が必須の条件となる。欧州情勢、国内景気の減速など不安定要因が多いだけに、安定維持に向けて、下期は景気対策が更に加速すると考えられる。その中でも金融政策には大きな期待がかかる。預金準備率の更なる引き下げに加え、状況次第では追加利下げも十分にありえよう。さらに中国は財政に余裕があることから、減税、公共事業の増加などの財政出動も可能だ。上期の政策措置に加え、下期に向けてこれらの対策が実施されれば、景気は底入れから回復に向かう可能性が大きい。つれて株価の回復も期待できよう。(6/25 畦田)

中国経済に関する上期の総括と下期の見通し

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中国民生銀行(チャイナミンションバンク)

01988〈N1988〉香港 株価チャート

北京市に本店を置く大手商業銀行

 民営企業の団体「中華全国工商業聯合会」の主導で1996年に設立された株式制商業銀行。2000年に上海証券取引所でA株を公開し、09年には香港株式市場への上場も果たした。本拠を北京市に置き、全国規模で事業を展開。11年末時点において590カ所の営業拠点を有する。

 主力事業は中国本土企業向けコーポレートバンキング。特に、中小企業向け貸出に強みを持つ。一方、リテール事業では富裕層からの預金受入などを積極的に進める。このほか、ファイナンスリース会社や投資信託会社なども傘下に収めている。昨年のセグメント利益の内訳はコーポレートバンキング47.9%、資金運用29.4%、リテールバンキング19.2%、その他3.4%。

足元では大幅増益が続く

 11.12期の純利益は前年比58.8%増の279.2億元と、大幅な増益を達成した。利ザヤの拡大によって純金利収入が大きく伸びたほか、手数料・仲介料収入の急増も好業績に繋がった。

 昨年の金融引き締めによる利上げで貸出金利が上昇したことを受け、11年の純金利マージン(NIM)は3.14%と、前年の2.94%から0.2ポイント拡大した。さらに、同年末の貸出残高も1兆2052.2億元、前期末に比べ14.0%増と二桁の伸びに。こうした純金利マージンの拡大と貸出の増加によって、純金利収入は648.2億元、前年比41.3%増と、大幅に伸びた。また、銀行カード業務、決済業務や資産管理業務等の好調を受け、手数料・仲介事業の純収入も同82.2%増の151.0億元と急増した。

 財務内容も一段と改善している。自己資本比率は前年末の10.4%から10.9%に上昇。一方で、不良債権比率は0.63%と、同0.06ポイント低下したほか、不良債権に対する引当率も357.3%と、同86.8ポイントの上昇。

 なお、12.1-3月期の業績(中国会計基準)は純利益で前年同期比47.7%増と、引き続き好調だ。貸出の増加や純金利マージンの拡大を受け、純金利収入は同41.5%増、手数料等の純収入に関しても同74.1%増と、大幅に伸びている。不良債権に対する引当率も360.4%と引き続き上昇。

中小企業向け貸出増加により更なる成長へ

 同行は中小企業向けの金融サービス「商貸通」の取り扱いを戦略的事業に位置付け、更に強化する方針だ。13年末には「商貸通」による貸出残高を5000億元まで積み増し、全貸出残高の3分の1まで引き上げる計画を立てている。実際、11年末の「商貸通」の貸出残高は前年比46.2%増の2325.0億元と急拡大しており、今期末には3000億元を上回る見通し。

 足元では中国政府が中小企業への貸出を奨励するなど、悪化する資金繰りの解決に向けた「中小企業支援策」を推進していることから、今後も中小企業向け事業の高成長を支えに同行の中長期的な発展が期待できよう。(佐藤)

「商貸通」の貸出残高の推移
不良債権比率の推移

吉利汽車(ジーリーオート)

00175〈N0175〉香港 株価チャート

大手自動車メーカー、11.12期も二桁の増益が続く

 民営企業系の有力自動車メーカー。「吉利(GEELY)」ブランドで知られ、主力車種は中・小型の「全球鷹(GLEagle)」、「英倫汽車(Englon)」、中・大型の「帝豪(Emgrand)」という3シリーズのセダン車。昨年の売上構成比は自動車および関連部品96.2%、トランスミッション3.8%。

 11.12期の業績は前年比4.3%増収、純利益で同12.8%増益。昨年、金融引き締めや自動車購入支援策の終了に伴ってセダン車の販売台数は同1.4%の微増にとどまった。ただ、小型車は落ち込んだものの、比較的高級な「帝豪」シリーズが販売台数で同47%増と好調。これによって利益率が向上し、二桁の増益を確保した。

経営環境の好転が安定成長を後押しする

 今年に入り、政策当局は国内産業育成策の一環として12年度に購入予定の一般公用車を国産ブランドに限定する方針を明らかにした。特に、同社では公用車の採用リスト412車種のうち80車種が選ばれた。これは同業他社と比べ最も多く、今後のブランド力の向上に繋がろう。

 また、ボルボ社とのシナジー効果も期待できる。親会社は今3月、傘下のボルボ社と技術移転で合意した。早ければ2年以内にボルボの技術を生かした新ブランド車を市場に投入する計画だ。さらに、エコカー等に関する共同研究も強化する方針を立てている。商品ラインナップの充実やブランド力の向上を図ることで同社は今後一段と高い成長を遂げよう。(高)

中国糧油控股(チャイナアグリ)

00606〈N0606〉香港 株価チャート

政府系の大手農産物加工メーカー

 大豆や菜種等から植物油、油粕を作るオイルシード事業を中心に、バイオ燃料の製造、小麦や米の加工ならびにビール原料の生産も手掛け、各分野で国内トップクラスの市場シェアを誇る。11年末時点における年間生産能力は、オイルシードの圧搾1038万トン、植物油の精製417万トン、バイオ燃料の製造180万トン。昨年の売上構成比はオイルシード67.4%、バイオ関連15.7%、米7.9%、小麦6.6%。

 11.12期の業績は、売上高が前年比53.9%増、純利益で同39.2%増と、二桁の増収増益。特に、主力のオイルシード事業では新設備の稼働が生産量の拡大に繋がり、植物油と油粕の販売量はそれぞれ同35.0%、38.8%増加した。これによって、同事業は同68.3%の増収。さらに他の事業の売上高も、バイオ関連が同27.3%増、米で同50.1%増となるなど、ほとんどの事業で二桁の伸び。

生産能力の拡大によって成長を維持

 同社では、昨年稼働を始めた設備が一年を通してフルに寄与することで生産量が今期も拡大する見通し。なかでも、米の加工については、新工場が本格的に動き出すことで、生産量は約200万トンに達する見込み。また、小麦についても加工能力が前期末比7割増の約350万トン、乾麺の生産能力で同7割増の17万トンとなるもようだ。近年、中国では生活水準の向上に伴って食料に対する需要が急速に高まっており、このような生産量の拡大は販売量の増加へと繋がろう。足元では人件費の上昇や原材料価格の高騰など、不安定要素もあるが、今後も同社は高成長を続けよう。(有井)

恒安国際(ヘンアンインターナショナル)

01044〈N1440〉香港 株価チャート

大手衛生用品メーカー、11.12期は増収増益を確保

 中国の家庭用衛生用品のリーディングカンパニー。主力製品はティッシュ、生理用ナプキン、紙おむつなど。また、スナック菓子の製造・販売も手掛ける。昨年の売上構成比はティッシュ47.0%、生理用ナプキン24.1%、紙おむつ16.0%、食品9.1%、スキンケア用品・その他3.8%。

 11.12期の業績は前年比26.9%増収、8.6%増益。主力のティッシュ事業は需要増加と製品構成の改善を受け、同29.8%増収、セグメント利益で同28.0%増と大幅な増収増益を達成。一方、スキンケア用品・その他事業を除く生理用ナプキン事業や紙おむつ事業と食品事業は、いずれも原材料価格の高騰に晒されて減益と、全体の足を引っ張った。

パルプ価格の下落と高級品の充実で業績改善へ

 原材料コストの約4割を占めるパルプの価格下落が利益率の改善をもたらす見通し。パルプ価格は昨年半ば頃に高値を付けた後、今年春先に掛けて2割程度下落した。また、欧米経済の回復の遅れから当面はパルプ価格の急上昇も 考えにくい。それゆえ、原材料価格の高騰圧力は当面和らごう。一方、同社では高付加価値製品の需要増に応えるため、年産6万トンのティッシュ生産工場を今年1月に稼働させた。さらに、高級ナプキンの「公主」シリーズや、鉄腕アトムをキャラクターに用いた紙おむつ「奇莫」を下期には全国規模で本格的に販売する予定だ。これらの高級品の品揃え充実によって今期、同社の利益率は大幅に向上する見通し。(高)

国薬控股(サイノファーム・グループ)

01099〈N1099〉香港 株価チャート

医薬品販売の国内最大手

 国有企業を実質的な親会社とする医薬品販売会社。流通センターを本土全域(チベットを除く)に持ち、処方薬や一般用医薬品の販売を行う。11年末時点で国内病院の約7割にあたる9421カ所と直接取引している他、診療所や薬局等の取引業者数は10万以上。さらに、医薬品の小売事業も手掛け、1773店舗の販売網を有する。昨年の売上構成比は、医薬品卸93.4%、小売り3.0%、その他3.6%。

 11.12期は、売上高が前年比47.7%増、純利益で同29.1%増。事業別では、主力の卸売事業が同47.4%増収、営業利益で同54.0%増益と好調だった。この主因は企業買収などを通じ、販売網が大幅に広がったため。実際、営業拠点は前年 末の133都市から174都市に増えた。また他の事業も、小売りが同77.5%増収、同67.0%増益、製薬等を含むその他事業で同35.8%増収、同31.0%増益と、それぞれ二桁の伸び。

医薬市場の拡大に伴って今後も成長を維持

 現在、中国では医療制度の大幅な改革が進んでおり、医療関連需要が急速に増加している。特に近年、医薬品に関しては高齢化の進展や個人所得の増大も重なり、市場規模が年率二桁の伸びを続けている。このような環境の下、同社はここ数年、積極的な企業買収を行うことで販売網の拡大を図ってきた。また今後も、グループ内での競合を避けるため、親会社が医薬品流通事業を同社へと集約する公算が大きく、グループ再編による事業規模の拡大が期待される。短期的には薬価引き下げ等の懸念材料もあるが、中長期的には医薬品販売量の増加を背景に高成長を続けよう。(有井)

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