チャイナマンスリーレポート

8月号

2012年8月1日 内藤証券中国部

金融緩和効果や新たな景気支援策で株価も底打ちから反転へ

本土市場
金融緩和効果が徐々に表面化、追加刺激策期待も

 7月の本土株式市場は月初こそ堅調に始まったものの、その後反落。中旬にはいったん反発する場面もあったが、月末にかけて再度、下値模索の動きとなった。

 6月終盤まで下落基調が続いていた上海総合指数だが、7月に入るといったん下げ止まりの様相を呈し、6日まで2200ポイント台前半での小動きが続いた。1日に発表された6月の製造業購買担当者指数が2カ月連続で低下、景気減速に対する警戒感が引き続き高まったものの、欧州債務問題に対する懸念が後退、消費者物価(CPI)上昇率の急低下観測を背景に一段の金融緩和期待が高まる、などのプラス材料が下支えとなった。

 しかし、週明け9日には52ポイント(2.4%)の大幅下落、翌10日も続落となり、再び下値を切り下げる展開に。前週末の米国市場が大幅安となったうえ、9日発表のCPIが予想以上に下振れたことで、国内景気の減速懸念が高まり相場の重しとなった。その後は下旬に至るまで、2100ポイント台後半でのもみ合いに。

 一方、月末にかけては再度、弱含みに転じた。スペイン国債の利回りが7%台に上昇するなど欧州債務不安の再燃で海外環境が悪化。国内でも中央政府が各地方に対して不動産引き締め策の徹底を改めて指示したことで、期待が高まっていた投資の拡大による景気支援に水を差された格好となったため。

 6月の金融機関の新規貸出しが3カ月連続で増加。マネーサプライの伸び率も5月、6月と上向いてきた。預金準備率の引き下げに加え、2カ月連続の利下げ実施など金融緩和の効果が一部に現れ始めたことを物語るものだ。また、政府は5月以降、矢継ぎ早に景気支援策を打ち出してきたが、7月に入り温家宝・首相が「投資の拡大」に言及するなど、いよいよインフラ投資を中心とする本格的な景気刺激策に踏み切る可能性が高まってきた。年後半にかけてこれらの政策が徐々に効果を現し、景気は上向きに転じよう。つれて株価も戻り局面に入ると考える。 (7/26 村上)

香港市場
欧州情勢への懸念は残るが、下げ過ぎの修正局面へ

 7月の香港株式市場は月初こそ堅調なスタートとなったものの中旬にかけて下落。その後、いったんは反発に転じたが、月末にかけては再度、弱含みの動きに。

 6月は堅調な動きが続いていたハンセン指数だが、7月に入っても基調は変わらず、返還記念休日明けの3日には294ポイント(1.5%)高と続伸、1日置いた5日には終値で19809.13ポイントまで上昇した。欧州各国が銀行監督制度の統一などで合意に達したことで欧州債務不安が後退したほか、中国政府が発表した香港経済・資本市場に対する支援策も株価を押し上げた。

 ただ、その後株価は下落基調に転じ、9日には372ポイント(1.9%)安、さらに12日も394ポイント(2.0%)の急落となり、ザラ場で一時19000ポイントを割り込んだ。米雇用統計の悪化やQE3への期待感の低下などから欧米株式市場が下落。国内的にも6月CPIの予想を上回る低下が国内景気の減速懸念を強めたうえ、GDP統計の発表を控え、市場は経済成長率の想定以上の下振れを警戒、などが売り材料となった。

 一方、下旬にかけて株価はいったん反発、20日には終値で19640.80ポイントと19000ポイント台半ばの水準を回復。政府の追加景気浮揚策や預金準備率引き下げへの期待に加え、足元の銀行貸出が急増との観測も相場を押し上げた。しかし、上昇局面も長続きせず、23日には587ポイント(3.0%)安と急反落。以降も下値模索の動きとなった。

 スペイン国債の利回りが、7%を大きく上回るなど欧州債務問題の再燃に加え、LIBOR不正操作疑惑などから再び世界的にリスクオフの動きが拡大。今後も欧州情勢は予断を許さない状況が続きそうだ。ただ、米国ではQE3に対する期待が残るほか、中国本土の景気も金融緩和や各種の支援策を支えに下期に向けて回復に転じる可能性が高い。株価下落により依然割安感が強いだけに、引き続き押し目は買い場と考える。(7/26 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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「フォーチュン・グローバル500社」…世界での存在感を高める中国企業

景気減速下でも世界での存在感を高める中国企業

 昨年減速トレンドに入った世界経済は、今年も欧州情勢の深刻化などに伴い厳しい状況が続いている。どの国の企業にも逆風が吹く中、グローバルな市場で存在感を高めているのが中国企業だ。先ごろ発表された世界的に有名な企業ランキング「フォーチュン・グローバル500社」2012年度版をみると、中国企業は73社がランクイン。他の主要国が伸び悩む中、企業数では前年度に比べ12社も増加した。底堅い内需や、新興国市場への進出加速などを背景に、景気減速下でも躍進した格好だ。世界上位10社はエネルギー関連の企業が多くを占め、中国の石油二大大手と送電最大手も昨年と同様、上位にランクインした。

“上位500社”関連銘柄がいち早く戻りを試す可能性も

 中国企業73社のうち、45社が前年度に比べ順位を上げ、16社が新たに「グローバル500」の仲間入りを果たした。これらの企業をみると、その多くが傘下に香港・B株の上場企業を抱える、あるいは本体自身が上場しており、国内外で存在感を一層高めている。詳細をみると、エネルギー、建設、インフラ関連の政府系企業が多いほか、民営企業もランクイン。これら大手の上場企業は景気減速下でも業界再編を通じてシェアを高める可能性があるほか、親会社からの資産注入も見込める。一方で、足元の株価水準には値ごろ感も。仮に中国経済が政策効果から年後半にかけて持ち直した場合、まず先にこれらの銘柄が戻りを試していくものと考えられる。( 7/24 畦田)

2010年度ランキング(国別企業数) 2012年度世界上位10社 2012年世界上位500社に名を連ねた中国企業(弊社取扱銘柄に関わる企業について抜粋

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莎莎国際(ササインターナショナル)

00178〈N3040〉香港 株価チャート

化粧品小売チェーン大手、12.3期は大幅増収増益

 スキンケア用品や香水等、主に化粧品の販売を手掛ける大手小売チェーン。自社ブランドだけではなく、世界的有名ブランドの商品も取り扱う。販売形態に関しては、「Sasa・ストア」( 莎莎化粧品専門店)を経営するほか、「S u i s s eProgramme」(瑞士葆麗美)などの化粧品ブースを百貨店等に設けている。また、電子商取引サイト「Sasa.com」を運営。香港・マカオを中心に、中国本土、マレーシア、台湾、シンガポールで事業展開。今年6月30日現在、店舗及び販売カウンターは256カ所に達する。その内訳は、香港・マカオ92カ所、本土68カ所、マレーシア47カ所、台湾27カ所、シンガポール22カ所。12.3期の地域別売上比率は、香港・マカオ79.5%、中国本土4.5%、その他(オンライン取引を含む)16.0%。

 12.3期の業績は前期比30.7%増収、純利益で同35.4%増益と大幅な増収益を達成した。世界的な景気後退の影響があったにもかかわらず、主力の香港・マカオ市場では観光客による需要が旺盛だった。同地域の売上高は同29.8%増(前期:19.3%増)、純利益が同41.9%増(同36.8%増)と、いずれも前期を上回る伸びとなった。中国本土での個人所得の増加と人民元高を背景に中国人旅行客の購買力が高まっているためだ。特に、化粧品等は旅行客にとって土産物の定番品となっており、需要の拡大に繋がった。

 一方、本土事業の売上高は同99.8%増と2ケタの増収であったものの、積極的な新規出店等によるコスト急増を受け、純利益ベースで3817万HKドルの赤字(前期:2248万HKドルの赤字)となり全体の足を引っ張った。ただ、改善の兆しも見える。既存店売上高(人民元ベース)が第2四半期(7‐9月期)の前年同期比9.8%減から第4四半期(1‐3月期)には同10.5%増へと転じた。さらに、純損失額も上期の1975万HKドルから下期には1842万HKドルまで縮小している。

本土事業の収益改善が今後の高成長を牽引

 近年、政府は個人消費の拡大を重視し、最低賃金の引き上げ、個人所得税の減税などを進めている。こうした個人所得の底上げ策は、若年消費者層を中心に高品質かつ高付加価値な商品に対する需要増をもたらしている。これを背景に、同社では本土市場における販売網の拡充と物流網の合理化・効率化に力を注ぐ一方、独自ブランドの品揃えを充実させるとともに、海外有名ブランド品の導入も積極的に行っている。

 また大手不動産デベロッパーと協力し、一等商業地に出店する戦略も実を結び始めた。昨年10月、恒基地産(00012)のサポートを得て上海市の新設デパート内に6000平方フィートもある「Sasa」ブランドの旗艦店をオープンさせた。このような一連の経営戦略が功を奏することで、中国本土事業が利益貢献できるまで成長するのには、それほどの時間を要さないだろう。加えて、本土と香港との緊密な経済連携を促す政策の下、建設中の「広深港高速鉄道」と「港珠澳大橋」がそれぞれ15年、16年に完成する予定であり、中核の香港・マカオ市場も本土からの旅行客が増加することで中長期的に高成長を続けよう。 (高)

地区別売上構成比
小売伸び率の推移

瑞安房地産(シュイオンランド)

00272〈N0272〉香港 株価チャート

香港資本の大手不動産デベロッパー

 主に本土で不動産の開発、賃貸等を手掛け、住宅、オフィスや商業施設からなる大型複合施設の開発に強みを持つ。代表的な物件には有名観光スポット「上海新天地」を含む太平橋プロジェクトがある。昨年末の保有用地は1300万㎡。

 11.12期の業績は、売上高が前年比73.9%増、純利益で同22.0%増。特に、不動産開発部門が同83.4%増収、セグメント利益で同110.2%増益と、好調だった。販売面積(総床面積ベース)が同55.2%増となっただけでなく、平均単価も大幅に上昇したためだ。ただ、不動産評価益が前年実績と同程度の水準にとどまったことで、純利益率は低下した。

今後も優良物件を次々と市場に投入する見通し

 現在、本土の不動産市場は中央政府が住宅価格の上昇を抑えるために投機的売買への規制を続けており、厳しい環境にある。このような中、同社では大規模な総合開発を通じて魅力的な物件を常に提供してきた。事実、昨年の不動産販売状況(成約ベース)を見ても平均単価が前年比10.4%上昇しており、開発戦略は顧客の支持を得ている。また、今下期には上海、重慶や武漢などの優良物件が市場に投入される予定であり、同社の今期販売目標(成約ベース)としている120 億元の達成は十分に可能だ。ただ、企業業績に関しては不動産評価益がなくなることで、大幅な減益となる見通し。しかし、年後半には子会社の香港株式市場への上場計画も控え、今後更なる成長を遂げよう。(有井)

新世界百貨中国(ニューワールドデパート)

00825〈N0825〉香港 株価チャート

中国本土を拠点とする香港資本の大手百貨店グループ

 94年に「新世界」百貨店を武漢で開設して以来、本土での事業を積極的に展開。自社で店舗を保有する他、百貨店等の受託管理業務も手掛ける。11.6期における地域別の売上比率は華北32.9%、華中25.2%、華東25.0%、その他16.9%。

 11.12期(中間)の業績は、売上高が前年同期比32.9%増、純利益で同12.1%増。中でもテナントによる販売が同37.2%増と大きく伸び、売上高全体の約7割を占めるコミッション収入は同35.9%増となった。この主因は自社店舗の面積を積極的に拡大させたこと。また、既存店も個性的なブランドを集めた「ファッション館」、百貨店を中心とした大型商業施設の「生活館」など、新しい形態の店舗へと改装を進めたことで既存店売上高は同17.0%増、前年同期に比べ1.9ポイント上昇した。

今後もフロア面積の拡張を続ける見通し

 同社では向こう5年間、新規出店によって自社店舗の床面積を年平均10-20%増加させる方針だ。さらに、主要都市を中心とした現在の店舗展開を続けるだけではなく、地方中核都市への出店も行っていく構え。具体的には今期中に江蘇省、陝西省、山東省で、それぞれ5-6万平米規模の店舗を開設する予定。一方、浙江省では大型店舗の受託管理を開始する見込み。加えて来期、湖南省や遼寧省での新規出店等も計画されている。足元、中国には景気減速に対する懸念も漂ってはいるが、個人所得の向上や生活様式の変化に伴い消費が伸びており、同社は今後も成長を続けよう。(有井)

中海油田服務(チャイナオイルフィールド)

02883〈N2870〉香港 株価チャート

中国最大の油田掘削サービス会社、二桁の増収増益

 中国海洋石油総公司の子会社で油田掘削サービスを手掛ける。掘削リグ、石油タンカー、探査船などを保有し、主として中国近海における油田の掘削・改修、資材等の海上輸送、地質データの収集・処理などのサービスを提供。特に中国近海の油田サービス市場では圧倒的なシェアを誇り、掘削・探査サービスで約8割、油田技術サービスで約6割、近海作業船サービスで約5割の市場シェアを占める。

 12.1-3月期の業績(中国会計基準)は売上高が前年同期比25.9%増、純利益で同23.5%増。人件費の上昇などコストが増加したものの、リグの作業日数増加や稼働率改善を背景に、主力の掘削サービス事業が堅調だった。

生産能力の拡大によって更なる成長へ

 今年5月にセミサブリグ「海洋石油981」が南シナ海で操業を開始。今後もサービス料金の比較的高いセミサブリグが相次いで運転を開始する予定。これによって同社全体でのリグの平均デイレート(日割作業料率)は上昇する見通し。

 また、中国の原油輸入依存度の上昇などを背景に、中国近海における原油の開発は引き続き拡大が予想される。特に南シナ海や東シナ海などの水深300mを超える深海は資源埋蔵量が豊富で、今後本格的な開発が見込まれる。開発には高い技術力などが必要だが、同社では既に南シナ海やノルウェー(北海)の深海で掘削作業を行っており、実績を充分に積んでいることから、今後の発展が期待できよう。  (佐藤)

中国建築国際(チャイナステート)

03311〈N3310〉香港 株価チャート

香港を拠点とする大手総合建設会社、好業績が続く

 国務院管理下の中国建築工程総公司を実質筆頭株主とする大手建設会社。香港と中国本土を中心に、建設や土木工事などを手掛ける。また最近では中国本土の低所得者向け住宅建設プロジェクトにも注力。

 11.12期の業績は売上高が前年比36.7%増、純利益が同45.5%増。人件費の高騰など、コスト上昇圧力が高まったものの、本土の低所得者向け住宅を含むインフラ事業の売上高が同56.4%増、セグメント利益が同34.8%増と好調だった。また、香港でも公共施設の建設など、政府によるインフラ整備推進を追い風に、売上高が同39.6%増、セグメント利益が同78.5%増と堅調であった。

香港のインフラ需要や本土の保障性住宅が成長を牽引

 今上期の新規受注額は前年同期比42.3%増、通期目標に対する達成率で83.4%と好調だ。5月には香港と広東省珠海市、マカオを結ぶ海上橋「港珠澳大橋」プロジェクトを獲得。この工事は受注額で88.8億HKドルと同社単独の受注案件としては過去最大規模になる。一方、本土の新規受注は足元で鈍化。ただ、低所得者向け住宅建設では、今後も受注の増加が見込まれる。また、その利益率は比較的高い。実際、香港でのプロジェクトに対する粗利益率は7%台だが、低所得者向け住宅プロジェクトは10%前後に達する。同社は今後も、香港のインフラ需要や本土の住宅政策などを背景に、高成長を維持しよう。(佐藤)

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