チャイナマンスリーレポート

9月号

2012年9月3日 内藤証券中国部

景気指標の好転を確認し株価も回復へ

本土市場
景気指標の改善を待って株価も上向きに

 8月の本土株式市場は上旬こそ堅調な戻り局面となったものの、中旬以降は急反落。その後、いったん下げ止まる場面もあったが、月末にかけて再度、下値模索の動きとなった。

 7月終盤まで下落基調が続いていた上海総合指数だが、8月に入ると反発に転じ、3日から9日まで5営業日連続で上昇。1日に発表された7月の製造業購買担当者指数(PMI)が3カ月連続で低下、景気減速に対する警戒感は続いたものの、中国共産党中央政治局会議で内需拡大を柱に経済成長を安定させる方向性が示されたことで新たな景気対策への期待感が高まったほか、A株の取引手数料引下げも支援材料となった。

 ただ、その後、中旬にかけて急反落。13日には1.5%安、15日には1.1%安と急落し、再び2100ポイントに接近。預金準備率の引下げや景気支援策に対する期待は高まるものの、具体的な動きに繋がらないうえ、中央政府が不動産引き締め策の継続に向けて強い姿勢を示したことなどが嫌気された。一方、月末にかけてはいったん下げ止まるかに見えたが、再度、下値を切る展開に。大型国有企業の1-7月期までの減益決算、主要上場企業が個別に発表する振るわない中間決算などが、悪材料視された。

 金融緩和が進む一方で、政府は5月以降、矢継ぎ早に景気支援策を打ち出してきたが、その効果はまだ表面化していない。株価の下落に歯止めが掛からないのは、景気に対する先行き不安が日増しに高まるなかで、なかなか実現しない「次の一手」に対する苛立ちの現われだろう。株価の明確な反転には、市場の期待に沿うような大型の景気刺激策が具体化するか、あるいは実際の景気指標の改善が必要となろう。とはいえここまで大きく売られただけにそろそろ下値も限界に近いものと考える。08年のような大型の景気刺激策は期待薄だが、これまでの対策の効果浸透に加え、追加の金融緩和や景気対策により秋口以降、次第に景気指標は改善に向かおう。つれて株価も上向きに転じよう。(8/28 村上)

香港市場
欧米情勢の落ち着きで資金流入期待も

 8月の香港株式市場は出足こそもたついたが上旬にかけて急反発。以降は狭いレンジでのもみ合いが続いたが、月末にかけては再度、弱含みの動きに。

 7月終盤には戻り歩調を強めていたハンセン指数だが、8月に入ると1日こそ堅調だったものの2日、3日と続落するなど頭打ちの動きに。欧州中央銀行(ECB)理事会、米連邦公開市場委員会を控え、欧米諸国によるさらなる金融緩和への期待感が高まったが、結局、ともに空振りに終わったことで失望売りが出た。

 ただ、週明け6日には1.7%高と急反発。翌7日も続伸し終値は20072.55ポイントと約3カ月ぶりに大台を回復。さらに9日には20269.47ポイントまで買われた。米国の7月雇用統計が上振れ、さらにドイツ連立与党の幹部がECBによる国債買い入れに支持を表明するなど、米欧発の好材料が続き、世界的にリスクオンの流れとなったことが背景。

 その後は下旬に至るまでもみ合いが続いた。国内では景気減速懸念が強まる一方で、海外ではヨーロッパの債務問題が小康状態にあるなか、米国も雇用統計の上振れで景気に対する楽観ムードが広がる、など好悪材料の綱引きに。一方、月末にかけては再び20000ポイントを割り込み、ジリ安の展開。米国市場が軟調な動きに転じるなど、外部環境が振るわないなか、中国政府の追加景気刺激策がなかなか具体化しないことから、市場の失望感が一層拡大。企業業績の悪化なども売り材料視された。

 欧州の債務問題は先行き波乱含みである点に変わりはないものの、足元は取り敢えず小康状態。一方、米国では雇用統計をはじめマクロの経済指標に改善の兆しが見えるなど、緩やかながらも景気回復への期待が出てきている。したがって世界的にリスクマネーの動きが活発化する条件は整いつつある。今後、中国本土の景気指標の改善が確認されれば、こうした資金が香港市場へも流入しよう。(8/28 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:重要イベントを前に消費シーズン「金九銀十」が到来、消費関連の大手企業に注目

国内外の景気低迷は続くも、内需には底堅さが

 下期に入っても国内外の景気低迷が続いており、底入れの兆しは出てきていない。先ごろ明らかにされた中国の8月の製造業購買担当者指数(HSBC算出、速報値)は9カ月ぶりの低水準に沈んだ。こうした状況下、投資家は中国当局による一層の金融緩和、景気刺激策に期待し、足元の市場は催促相場の様相。しかし、具体策は中々打ち出されず、神経質な地合いが続いている。一方で、7月までの小売総額は前月比ベースでプラスの伸びを維持。景気減速下でも内需は底堅く、関連企業の一部は堅調な業績を確保している。中国の個人消費は例年、9、10月と増加に転じ、11月に一旦落ち着くが、年末年始にかけて再び盛り上がる傾向が見て取れる。

「金九銀十」の幕開け、消費関連の大手企業には注目

 「中秋節」、「国慶節」という2度の大型連休を挟む9、10月の2カ月間を、中国では「金九銀十」と呼び、各企業は消費シーズンとして重要視している。今年は両連休が重なるが、その結果、連続休暇は8日間(9/30~10/7)と例年よりも長くなる予定。遠出もしやすく、帰省や旅行などで消費の増加が期待される。加えて連休明け後、5年に1度の共産党全国代表大会が開かれる見通し。政権交代という重要イベントを前に、政治・経済の安定化という目的から、当局が内需拡大策に動く可能性も。景気情勢は厳しいが、今年の「金九銀十」も全体的には堅調な結果を残せると考えられる。酒造、外食、秋・冬物衣料などの分野に加え、宝飾品などの贅沢品、自動車、住宅など耐久消費財に関して、大手企業が投資対象として注目される可能性も。( 8/27 畦田)

小売り総額の推移(過去5年、月ベース) 注目される「金九銀十」の消費動向

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長江基建集団(チョンコンインフラ)

01038〈N7430〉香港 株価チャート

香港の大手インフラ企業

 長江グループのインフラ会社。電力、水道、ガス、道路などのインフラ企業に投資している。セメント、コンクリート、石材などの建材事業も手がける。香港島の電力供給を担う持ち分法適用会社の電能実業(00006)は12.6期(中間)で全体のセグメント利益のうち30%以上(16.7億HKドル)を稼ぎ出す。電能実業とともに積極的に海外展開しており、英国、オーストラリア、中国本土の全体に占めるセグメント利益構成比は、それぞれ49.7%、10.6%、4.4%となっている。

 中国本土では発電所や高速道路などに出資。オーストラリアではトンネル経営、送電・配電、天然ガス供給、水道事業などに投資している。英国では都市ガスや水道事業、カナダでは発電事業を展開。トップの李沢鉅(ビクター・リー)主席は香港一の富豪として知られる李嘉誠氏の長男であり、親会社の和記黄埔(00013)の副主席も兼務する。

主力の英国事業が好調で、12.6期は二桁の増収増益

 12.6期(中間)は売上高(合弁会社などの分も加算)が前年同期比17.3%増、純利益は同17.7%増となった。特に、主力の英国事業が好調で、セグメント利益は同44.8%増と大幅な伸び。前年に買収した水道会社ノーザンブリアン・ウォーター(出資比率40%)の貢献に加え、配電事業を手がけるUKパワー・ネットワークスの利益が同21%増、都市ガス会社のノーザンガス・ネットワークスも同16%増益と好調だった。

 一方、オーストラリア事業は同16.3%減益。前年同期はインフラ会社のスパーク・インフラストラクチャーの一部権益を売却したことで一時的に利益がかさ上げされたが、こうした利益が今上期にはなかったため。ただ、オーストラリアでの事業もほぼ予想通りだった。

積極的な企業買収を継続し、更なる成長へ

 同社は今後も積極的に企業買収を進める方針だ。特に英国は、外資の買収に対して開放的なスタンスを採っていることから、香港系企業などによる買収が活発に行われている。こうしたなか同社も英国での買収を一段と推し進める模様。今年7月には、ガス供給事業などを手がけるウェールズ&ウエスト・ユーティリティーズを、電能実業などと共同で買収すると発表。買収費用は総額77.5億HKドルに上り、同社の出資比率は30%(約24.5億HKドル)となる見通し。また、マンチェスター空港の権益のうち50%を取得する方針も明らかにしている。一連の買収が成功すれば、更なる収益源の拡大に繋がろう。

 一方、同社は資金調達能力も高い。今年3月の増資に続き、8月にも売り出しと第三者割当増資を組み合わせた「先旧後新」方式による増資で約23億HKドルを調達した。今上期末時点で約87億HKドルのキャッシュを保有していたことから考えても、当面の資金需要には問題がないだろう。さらに、負債比率も昨年末の14%から12.6期末時点で約7%に低下するなど、財務面での安全性も高い。相次ぐ増資による株式の希薄化は懸念材料だが、新たな買収によって収益力や競争力が一段と向上することで、今後も安定した成長を続けよう。(佐藤)

セグメント利益構成比(12.6期)
業績推移

四環医薬(スーホアンファーマ)

00460〈N0460〉香港 株価チャート

中国最大級の心脳血管疾患の治療薬メーカー

 心血管薬や脳循環改善薬、抗ウイルス薬等の生産販売を手掛ける民営企業。主力製品は血管拡張作用がある注射剤の「克林澳」や「安捷利」、脳組織の新陳代謝を促す「欧迪美」。このほか、漢方薬の製造販売も行う。昨年の売上構成比は心脳血管疾患の治療薬が90.1%、その他薬品が9.9%。

 11.12期の業績は前年比116.2%増収、同57.8%増益。好業績を牽引したのは心脳血管疾患の治療薬。なかでも企業買収によって取得した新薬「欧迪美」の売上高が6.5億元に達し、全体の業績に大きく寄与した。一方、その他薬品事業では当局による抗ウイルス剤の使用制限が一部病院で実施されたものの、製品構成の調整等を図ったことで引き続き好調だ。

医薬品の需要増に伴って安定した成長を続けよう

 中国では、都市化の加速や所得水準の向上に伴い健康への意識が高まるなか、政府による医療保険制度の改革も追い風となり、医薬品に対する需要が年々拡大している。特に、高齢化や所得増加に伴う食生活の多様化などを背景に心脳血管治療薬の需要が増えている。そのため、この分野において強い競争力を誇る同社は研究開発の強化や、製品の安全性並びに多様化を通じて急成長を遂げてきた。加えて近年、製造管理及び品質管理基準(GMP)の改定への対応も着実に進んでいる。実際、昨年末には北京、河北、吉林にある生産ラインで新基準への対応を済ませた。このように同社は業界内での優位性を一段と強め、中期的に高成長を続けよう。(高)

華潤置地(チャイナリソーシズランド)

01109〈N1070〉香港 株価チャート

国務院傘下の華潤グループに属する不動産デベロッパー

 中国本土での不動産販売を中心に、賃貸、ホテル運営等を手掛ける。北京、上海など、沿海地域の都市部を主な地盤とするほか、近年は内陸部への進出も加速させており、今年8月時点において全国39都市で事業を展開。保有開発用地は総床面積換算で2819万㎡に上る。

 12.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比2.9%増、純利益で同2.2%増と、小幅ながら増収増益を確保した。特に、賃貸事業等を手掛ける不動産投資部門が同40.7%増収と好調であった。賃貸物件が増えたことに加え、一部で賃料が上昇したためだ。一方、主力の不動産販売部門は同4.7%減収。しかし、この主因は物件の引き渡しが今下期に偏っているからであり、通期では昨年実績を上回る見通し。

堅調な不動産販売を受け、通期目標額は上方修正へ

 足元の不動産販売(成約ベース、以下同じ)は堅調だ。実際、年初から8月12日までの販売額が295億元に上り、通期目標400億元に対する達成率で7割を超える。売り出し物件が多かっただけではなく、小型住宅を中心とするなど、実需に沿った不動産開発が功を奏した。今後も年末に掛けて優良物件の販売開始を控えており、同社では目標額を引き上げる公算が大きい。もっとも、今期の業績に関しては不動産評価益の縮小で減益となる見通し。ただ、好調な不動産販売に加え、賃貸料収入の増加が継続的に見込めるなど、本業自体は中期的に高成長を続けよう。(有井)

長城汽車(グレートウォール・モーター)

02333〈N2330〉香港 株価チャート

民営系の有力自動車メーカー、11.12期は大幅増収増益

 主力車種はセダン「騰翼」、SUV「哈弗」、ピックアップトラック「風駿」等。昨年の自動車販売台数は46.3万台。内訳はセダン40.5%、SUV31.9%、ピックアップトラック26.3%、その他1.3%。また、部品を含め120余りの国・地域への輸出も積極的に取り組む。昨年の売上高に占める輸出比率は16.7%。

 11.12期の業績は前年比30.9%増収、同26.9%増益。マクロ環境の悪化に伴って業界全体の需要が鈍化したものの、新型車投入やアフターケアの充実等に注力した結果、販売台数が40万台を初めて突破、同27.3%増と好調であった。また、採算性の高いセダンの売上構成比が上昇したこと等によって粗利益率は24.9%と、同業他社よりも高い水準を維持。続く今上期も前年同期比28.8%増収、同30.3%増益と好調を持続。また、1-7月の出荷台数も32.9万台、同22.8%増と業界平均の 7.0%増を大きく上回る。

地方都市への販路拡大が今後の成長牽引役に

 昨年末時点、中国の中小都市では千人当りの自動車保有台数が約50~80台程度と見られ、北京や深センでの200台前後に比べ依然として低い水準にとどまっている。そのため、今後2年間は中小都市での新車に対する需要は300万台以上と予想される。このような中、同社は既に国内287都市で営業拠点を設置し、全土をカバーする販売ネットワークを構築している。特に販売網の50%以上が地方都市に分布しており、これら地域での販売増が今後の成長を牽引しよう。(高)

波司登(ボスドン)

03998〈N3998〉香港 株価チャート

国内向け冬物衣料を中心とする大手アパレルメーカー

 ダウンジャケットなど、羽毛衣料の製造販売において国内最大手。中核ブランドである「波司登(BOSIDENG)」は昨年の国内市場シェアで21.2%を占め、17年連続で業界首位を誇る。また近年は、婦人服や紳士服の事業に参入するなど、収益の多様化を図るために冬物衣料以外の事業にも注力。

 12.3期は売上高が前期比19.0%増、純利益で同12.6%増。主力のダウン衣料事業が同7.7%増収、セグメント利益で同4.4%増益と、比較的堅調だった。なかでも秋口に発売した薄手ダウンの「Autumn Down」コレクションなど、新商品が好評であった。また、コスト削減に努めたことで同事業の粗利益率は前期に比べ4.3ポイント上昇して54.7%となった。

非ダウン事業の強化とブランド力の向上で更なる成長へ

 同社は今後、ダウン以外の衣料事業に一段と力を入れる方針だ。実際、昨年傘下に収めた婦人服ブランドの「JESSIE」は買収直前の10月時点で253店舗だった販売網を今年3月末には277店舗まで広げた。さらに、向こう3年間で新規に200店舗を開設する計画だ。今後も紳士服や婦人服の分野において企業買収等を積極的に進めることで、現在のダウン衣料事業に大きく依存した経営を転換していくもよう。

 また今年7月、英ロンドンの繁華街にダウン衣料と紳士服を扱う旗艦店を開設した。ヨーロッパで初めてとなる同店舗は「BOSIDENG」の国際的な知名度を高めるとともに国内でのブランド力の強化に繋がろう。(有井)

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