チャイナマンスリーレポート

10月号

2012年10月1日 内藤証券中国部

欧米の金融緩和が本格化、香港市場への資金流入に期待

本土市場
景気指標の改善を待って株価も回復へ

 9月の本土株式市場は出足こそもたついたものの上旬にかけて急反発。ただ、その後はもみ合いから弱含みに転じ、月末に向けては再度、下値を模索する動きとなった。

 8月終盤まで下落基調が続いていた上海総合指数だが、9月に入っても下げ止まらず、5日の終値は2037.68ポイントと2000ポイントに接近。8月の製造業購買担当者指数(PMI)が4カ月連続の低下かつ景気判断の分かれ目である50を下回ったことで、景気減速に対する警戒感が強まったことが背景。

 ただ、その後はいったん反転、7日には前日比3.7%の急騰となり、2100ポイント台を回復した。欧州中央銀行(ECB)の理事会で南欧国債の無制限買入れが合意されたほか、米国の雇用情勢や景況感を示す指標が改善、などで世界的な株高となったうえ、国内でも政府によるインフラ投資の加速、輸出還付税・証券税制の改革期待などの好材料が重なったためだ。

 もっとも上昇局面は長続きせず、中旬にはもみ合いから再び下落に転じた。17日には2.1%安、20日も2.1%安と急落し、再び年初来安値を更新した。8月の主要経済統計が引き続き低調で景気減速への懸念が続いたうえ、尖閣諸島問題の緊迫化による日中関係の悪化も嫌気された。米国のQE3実施に伴う世界的な株高も本土市場の株価押し上げ要因とはならなかった。その後、月末にかけても引き続き下値模索の動きとなった。

 政府が総額1兆元のインフラ投資プロジェクトを承認とのニュースが伝わったが、株価の反応は限定的。前月号で「株価の反転には、市場の期待に沿うような大型の景気刺激策の具体化が必要」と指摘したが、今回の対策では不十分との評価なのだろう。やはり、実際の景気指標に改善の兆しが現われるまで株価の本格反転は難しそうだ。ただ、ここまで大きく売られたこともあり、そろそろ下値も限界に近いものと考える。景気指標の改善を待って、株価も上向きに転じよう。(9/25 村上)

香港市場
世界的な金融緩和で資金流入期待が高まる

 9月の香港株式市場は出足こそ弱含みの動きとなったが、中旬にかけて急反発。その後は月末に至るまで高値圏でのもみ合いが続いた。

 8月終盤まで下げが続いていたハンセン指数だが、9月に入っても基調は変わらず初日の3日こそ小幅に反発したものの、4日、5日と続落。8月の米国ISM製造業景況感指数が市場予想を下回り、しかも3年1カ月ぶりの低水準など、世界的な景況感指数の悪化が相場の重石となった。

 しかし、翌6日には64ポイント高と反発、さらに7日には592ポイント、3.1%高と急騰。ECB理事会での南欧国債の無制限買入れ合意、米国の景気指標改善などを背景に海外資金が流入。国内でも多数のインフラ投資プロジェクトが一気に承認されたことなどが好感され、本土市場が大幅上昇。これを追い風に、このところ下げがきつかった本土系銘柄に買い戻しの動きが広がった。

 その後も上昇基調は続き、12日には20000ポイントの大台を回復、さらに14日には582ポイント、2.9%高と再び大幅高。ドイツ連邦裁判所が欧州安定メカニズム(ESM)に合憲の判断を下したこと、米国FOMCでQE3の実施が決まったこと、などを背景にリスクマネーが株式・商品相場に流入。香港市場への資金流入も期待されて大きく買われた。一方、月末にかけては尖閣諸島問題の深刻化等もありもみ合いに転じた。

 ECBによる南欧国債の無制限買入れ合意、ドイツでのESM合憲判決、さらに米国のQE3実施、などを背景に世界的にリスクオンの動きが活発化、海外環境は好転の方向に。つれて香港市場にもリスクマネーが一部流入、本土市場の下げが足を引っ張る形とはいえ、比較的堅調な株価推移となっている。本土の景気減速は続いているが、本土市場の下落ペースもさすがに鈍ってきており、今後の香港市場への悪影響も限られたものとなろう。海外資金の流入が株価を押し上げる展開が期待される。(9/25 村上)

ハンセン指数(日足)上海総合指数(日足)

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特集:日米欧が金融緩和で揃い踏み、その中でもQE3の効果に注目

景気下支えに向け日米欧が金融緩和で揃い踏み

 9月に入っても世界経済の減速感は続いている。8月の米国雇用統計は市場予想を下回る水準。中国経済も、9月の製造業購買担当者指数(HSBC算出、速報値)が引き続き景気後退を示した。欧州債務問題の先行きも楽観できない。こうした状況下、各国の中央銀行は積極的な金融政策を通じて世界経済を支える姿勢を鮮明化。月前半までに欧州中央銀行(ECB)理事会による南欧諸国の国債買い入れ、米連邦公開市場委員会(FOMC)によるQE3(第三弾の金融緩和)の実施などが決まった。そして19日に日銀が追加金融緩和を発表。日米欧が金融緩和で足並みを揃えた。

 一方の中国はこれとはやや一線を画しており、7月初旬の利下げ以降、市場が期待する基準金利・預金準備率の更なる引き下げには踏み切っていない。それでも買いオペを通じて、緩和スタンスは示している。

QE3効果に注目、中国も続けば幅広い銘柄に恩恵も

 こうしたなか、QE3の影響が注目される。これまでのQE1、QE2を振り返ると、長期・大規模に行われたQE1では中国株も大幅に上昇。一方、QE2では逆にやや軟調な展開となった。ただ、共通点としてどちらも米ドル安の傾向となり、供給されたドル資金は商品相場の上昇、米国の株高の一因となった。今回のQE3は長期にわたる可能性がある。この資金が一部でも中国株に向かえば、特に香港市場の相場を支える効果が期待できよう。金融緩和がまず、金利に敏感な金融・不動産株、商品相場の影響を受けやすい資源株などに追い風となることが考えられる。また、米ドル安に伴う人民元高が輸入インフレの抑制に繋がれば、年末にかけて中国が一層の金融緩和に踏み切り、これにより国内景気が底入れする期待も。そうなれば、金融緩和の効果が幅広いセクターに及ぶことが考えられる。(9/24 畦田)

QE1(08/11/25~10/3/31) QE2(10/11/3~11/6/30)

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これまでにFOMCが決定した金融緩和の概要

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ダイナムジャパン(ダイナムジャパン)

06889〈N6889〉香港 株価チャート

世界初の上場パチンコホール経営企業

 パチンコホール経営大手。現在の日本では困難な株式公開を香港で実現。12年8月6日に香港株式市場に上場した。矢野経済研究所によると、市場シェアは店舗数で国内首位、貸玉料で国内2位(10年)。12年3月末の店舗数は355店に上り、沖縄県を除く全国に出店している。4円パチンコ・20円スロットの従来型パチンコホール「ダイナム」のほか、低価格パチンコ(1円パチンコ・5円スロット)の「ダイナムゆったり館」と「ダイナム信頼の森」も経営。「信頼の森」は充実した景品と分煙・防音を特色とする新スタイルのパチンコホールとして知られる。

出店費用増と震災の中、12.3期は小幅な減収減益

 パチンコ市場は長引く景気低迷や貸玉料の低価格化などを背景に、規模の縮小が続いている。業界全体の貸玉料は96年まで30兆円を超えていたが、10年には19.4兆円に落ち込んでいる。店舗数や遊技参加人口も同様の傾向にある。

 こうしたなか同社は低価格パチンコの出店攻勢を強めている。「ダイナム」の店舗数はここ数年にわたり変化がないものの、「信頼の森」は10年3月末の25店から、12年3月末には44店に拡大している。

 低価格パチンコの出店効果で、12.3期の貸玉料は前年比5.6%増の9083億円に上ったが、激しい競争とシェア拡大策を背景に景品の払出しを増やしたため、売上高(営業収益)は2.7%減の1651億円となった。ただ、10.3期と同水準を維持しており、東日本大震災や節電の影響等を考えれば、収益は概ね安定していると言えよう。

 純利益は11.3期が19.9%減の162億円、12.3期が1.8%減の159億円。減益が続いたのは、「信頼の森」の出店強化で、費用の大部分を占める店舗経営費が増加したためだ。だが、12.3期は「ダイナム」で使用した遊技機を低価格パチンコホールで二次使用し、仕入れコストが削減できたことなどで、減益率が縮小。「信頼の森」の黒字化に向け弾みがついた。

パチンコ業界の集約化が好機に

 パチンコが日本独特の産業であり、その規模は縮小傾向にあるが、香港市場の投資家にとって比較対象としやすいマカオのカジノ産業は、国際的にも認知され、成長も著しい。カジノが完全に合法である一方、パチンコは特殊景品の換金をめぐる議論があり、同社を取り巻く日本独特の諸制度も、香港の投資家には馴染みが薄い。こうした要因が、上場後の株価と出来高の低迷につながっているようだ。

 しかし、マカオのカジノ市場はわずか6社で競争し、許認可制や狭隘な土地という制約の下でシェア争いが厳しい。一方、パチンコ経営企業は4000社を超え、その大部分が零細型だ。貸玉料で業界トップの企業でもシェアはわずか10.5%で、2位の同社でも4.4%に過ぎない(10年)。パチンコ市場は縮小傾向にあるが、業界の集約化が進むなかで、企業単位での成長余地は十分にあるといえよう。

シェア拡大と株主還元に期待

 同社のような数少ない大手は、新規出店や買収を通じたシェア拡大の面で有利であり、これが業績を後押ししよう。香港上場で約150億円を調達した同社だが、うち75%をパチンコホール75店の建設に投じる計画。うち60店が「ゆったり館」で、低価格パチンコを中心に店舗網を広げる戦略を採っている。また、10%をパチンコホールの買収に充てる方針。シェア拡大に積極的な姿勢を示しており、中長期的な安定成長が見込めよう。

 12.9期(中間)と13.3期の配当性向は45~50%の方針で、現在の株価水準(9月中旬)に基づけば、配当利回りは税引き後でも高水準が見込まれる。実際に配当額が発表されれば、海外投資家の関心も再び集まり、株価も織り込ん でいこう。(千原)

店舗形態別売上高

統一企業中国(ユニプレジデント・チャイナ)

00220〈N0221〉香港 株価チャート

台湾系の大手食品企業、12.6期は大幅増益を達成

 「統一」ブランドで知られる台湾系の食品・飲料メーカー。即席めん事業では、カップめんと袋めんを製造。飲料事業は果汁飲料と茶飲料が中心。11年末時点の茶飲料と即席めんの市場シェアはそれぞれ19.6%、13.5%、康師傅(00322)に次いで国内2位。1992年に中国本土に進出した。

 12.6期(中間)は売上高が前年同期比21.0%増、純利益が同185.9%増と大幅増益を達成。パーム油・砂糖などの原材料価格が前年同期に比べて大幅に下落。加えて製品構成の改善によって高付加価値製品の割合が高まった。これ等によって全体の粗利益率は前年同期から6.4ポイント上昇し、34.6%と、ライバルの康師傅の29.8%を上回った。

ブランド力の強化や新製品投入により更なる成長へ

 同社は今後も広告宣伝の推進、新製品の投入などを通じてブランド力の強化や市場シェアの拡大を図る方針。少なくとも売上高の6%程度を広告宣伝に投じる計画だ。

 一方、即席めん事業では新製品「滷肉麺」の全国展開を今年からスタート。セールスプロモーション等が奏功し、1-6月累計で、すでに同社の即席めん部門の中で2番目に多い売上を記録するなど、出だしは好調。また飲料事業でも、新製品を今下期から全国主要都市で販売開始の予定。広告宣伝費が嵩み利益率を押し下げる懸念もあるが、新製品の相次ぐ投入は更なる市場シェアの拡大や製品の高付加価値化に繋がることから、今後も高成長が期待できよう。(佐藤)

華潤電力控股(チャイナリソーシズ・パワー)

00836〈N0830〉香港 株価チャート

中央政府系の発電大手、12.6(中間)期は大幅な増益

 実質筆頭株主は中央政府系の有力コングロマリット「中国華潤総公司」。主に華東、華中、華南、華北地域で発電事業を行う。また火力発電の燃料となる石炭の採掘事業も手掛ける。

 12.6期(中間)の業績は前年同期比6.6%増収、20.8%増益。中核の発電事業では、経済成長の鈍化を受け電力需要が減少したが、セグメント利益で同31.7%増と大幅な増益を達成。燃料コストの上昇圧力が軽減されたことや、卸電力価格の引き上げ及び、燃費効率の改善等が主因。一方、石炭事業は景気減速から大幅減益。ただ、同事業は売上構成比で1割弱のため、業績全体に与える影響は限定的であった。

発電効率の向上と風力発電の強化で更なる成長へ

 今年6月末時点で建設中の火力発電容量は7.5GW。そのうち6.0GW分の施設が燃焼効率の高い超々臨界石炭焚きユニット(USGU)。さらに、今下期には3.0GW分のUSGUが稼働を始める予定。USGUは1MWh当りの石炭消費量で約295kgと、同社の今上期実績(320kg)に比べ7.8%少ない。こうした新鋭設備の導入によって発電効率を一層高めていく意向。

 また、風力発電事業の強化も図る方針。現在、政府はクリーンエネルギー推進のため、風力発電等による卸売価格を火力よりも高く設定している。それゆえ発電事業者にとって新エネルギー開発は大きなメリットをもたらす。特に同社の場合、電力需要が旺盛で送電網の整備も比較的進んだ沿海部に大半の風力発電施設を持っており、多くの恩恵を享受しよう。(高)

中国生物製薬(サイノバイオファーマスティカル)

01177〈N9270〉香港 株価チャート

医薬品の製造販売を手掛ける民営企業

 心臓・脳血管薬や肝炎治療薬を中心に、抗がん剤、鎮痛剤、更には糖尿病、呼吸器系疾患等に対する治療薬の研究開発および生産を行う。また近年、湖南省の病院を買収するなど、医療サービス事業にも参入。

 12.6期(中間)の業績は売上高が前年同期比44.8%増、純利益で同56.1%増。主力の肝疾患治療薬では、注射液の「天晴甘美」が同54.7%増となったほか、一昨年3月に市場に投入したB 型肝炎治療薬「潤衆」も同115.4%増と、それぞれ販売額が大幅に増加した。また心臓・脳血管薬に関しても「凱時」が同24.3%増、「依倫平」で同47.9%増。さらに、抗がん剤で同35.2%増、鎮痛剤で同55.9%増など、大半の製品において売上が大きく伸びた。

研究開発の強化で今後も新薬を次々と市場に投入

 今後も新薬の研究開発に一段と力を注ぐ構え。実際、今上期の研究開発費が前年同期比48.7%増、対売上比で7.3%と、その比率は近年上昇している。こうした結果、足元での開発中の新薬は合計63件(心臓・脳血管薬12件、肝疾患治療薬10件、抗がん剤22件、呼吸器系疾患治療薬他19件)に上る。今上期に限っても、新薬承認2件、臨床認可8件、生産認可3件を当局から取得した。国内医薬品市場が生活水準の向上や高齢化の進展に伴って拡大傾向にある中、同社は新薬を市場に順次投入することで、中長期的に高い成長を続けよう。(有井)

高キン零售(サンアートリテール)

06808〈N6808〉香港 株価チャート

中国のハイパーマーケット最大手、12.6期は大幅増益

 中国本土で小売り事業を展開する仏台合弁の投資持ち株会社。ハイパーマーケットの「欧尚(Auchan)」と「大潤発(RTMart)」を経営。競合他社の米ウォルマートなどが足元で伸び悩むなか、昨年の市場シェアは前年から0.8ポイント拡大し、12.8%で国内トップ。12.6期末時点で27の省・自治区・直轄市に進出しており、240店舗を運営。

 12.6期(中間)は売上高が前年同期比14.4%増、純利益が同75.1%増。既存店売上高が安定した伸び。また、人件費の上昇などコスト圧力が高まったものの、全体の粗利益率は20.5%と、前年同期から0.6ポイント上昇した。店舗網拡大によるスケールメリットが奏功した。

地方都市への出店強化などにより、更なる成長へ

 同社は今後も新規出店を強化する方針だ。今上期の出店数は10店舗にとどまったものの、通期では約50億~60億元を投じて42~49店舗が新規オープンする予定。出店費用の増加など、懸念材料もあるが、出店地域は経済発展が急速に進む地方都市を中心としており、市場シェアの獲得、更にはスケールメリットを生かしたコストの削減に繋がろう。

 また、生鮮食品における農産地からの直接調達を積極的に拡充する構え。これによって物流コストの抑制を図る。所得水準の向上に伴い有機野菜などの高付加価値製品への需要が一段と増加するなか、同社は今後も高成長を続けよう。(佐藤)

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